見学
神社へ向かう足はとても重くて、体力がとても衰えているのがわかる。
最近、睡眠をとり過ぎているせいだろうか。
神社の長い階段を登り社務所に向かう。
するとまだ巫女はいた。
「おい!あの御神酒は一体なんなんだ!仲江さんがおかしくなってしまった!」
と社務所に足を進めながら巫女に話しかける。
「なんのことでしょうか。」
冷静な態度で私の話を聞く巫女。
しかし目つきはとても冷酷に感じた。
「あの御神酒の中身を教えてくれ。」
「米を発酵させたお酒です。少し果物も入っています。」
「それだけじゃないだろ?」
「いえ、材料はこれだけです。」
「嘘つくな!」
とても静かに話す巫女と、苛立ちを隠せずに大きな声で問い詰める私。
しかし誰も出てくる様子がない。
何十人も人がここにいるなら、誰かしら出てきてもおかしくないのに。
「少々お待ちください。」
と言って襖の奥へ行き、なにかをしに行ったようだ。
私も一応本部の方へ連絡を入れる。
これから真相を突き止めてきますと。
少しして、巫女は神主の快夜さんを連れてきた。
相変わらず快夜さんはニコニコしている。
巫女に話を聞いていないのだろうか?
「金武さん、こんばんは。御神酒の中身知りたいんですか?」
「はい、出来れば。」
「良いですよ。あちらから上がってください。」
と中へ案内される。
靴を脱ぎ、中に上がり長い廊下を歩かされる。
「御神酒はとても神聖で特別なものなので、なるべく人目がつかない場所で作っているんです。金武さんはとてもよくして頂いたので、特別に見学してもらっても良いかなと思っていたのでちょうど良かったです。」
「そうなんですか、ありがとうございます。」
突然の訪問、巫女に怒鳴り散らしたのに起こりも困りもせずにずっと笑顔だ。
しかもさっきより上機嫌なのか、鼻歌も歌い出した。
なぜそんなに機嫌がいいんだ?
と考えていると、後ろから細く白い腕が私の首を締め上げてきた。
まさかのことでなにも反応できない。
習ったはずなのに、型が出てこない。
必死に抵抗するが全く緩むことがなかった。
声もかすれ声しか出ず、神主に届かないのかどんどん先に進んでいく。
神主の鼻歌と細腕の荒い息が耳に残りながら、
私は意識をなくしてしまった。




