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わたしたちの落神様  作者: サカシタテツオ
19/112

007 森人会談

森人(もりびと)会談



トントントントン

ザクッ、ザクッ

ゴリゴリゴリゴリ


-- あんまりしゃべりかけないで。

-- 今油使ってんの!

-- よく聞こえないし、覚えらんない。

-- あぁ、もう、うるせぇ。

-- メモしろ!メモ!


今の俺は料理長だ。

スイーツまで出しちゃうイカした料理長。


どうしてこうなった?

が正直な感想。


ちょっと小腹が空いたので、簡単なモノを用意するだけのはずだった。


なのに、なんだこのハラペコリーノたちは。

ほんとうるさい。マジうざい。

早く帰ってくんねーかなぁ、コイツら。





立ち話もなんだからっと森人達をヨシオの秘密基地本部まで案内した。

当然のような顔をして雷撃検証メンバーも座っている。



-- まぁいいか。

ちょっと迷ったけど俺は開き直って一番聞きたい事を聞いてみた。

森人。森の賢人達に。

-- 俺の元いた世界に帰る方法知らないか?


大広間に居たメンバー達の反応はあえて無視。

と言っても誰も声を出したりしなかったけど。


森人達の答えはNOだ。しかも即答。

分かっていた。

これでスッキリした。


とりあえず一番聞きたいと思っていた事を聞いたら力が抜けた。

力が抜けると体が空腹を訴えたので、

「サクッとカンタンなモノでも作るか」

と席を離れた、すぐに戻るつもりで。






湿原に現れたたぬき達。

あの時、俺以外の人にはたぬき達が消えて森人が湧いたように見えたらしい。



ずいぶん驚いただろう。

突然たぬきが見えなくなったと思えばすぐに人影が現れる。

赤黒くて裾の長いローブをまとい、いかにも悪魔を呼び出しそうな中坊が。

五人もだ。


中坊と言ったのは、本当に中坊だから。

年齢じゃなくて見た目。

男の子はより男らしく、女の子はより女らしく変貌する直前。

いかにも悪魔とか呼び出したい年頃。そんな見た目。


五人とも男子なのか女子なのか分からない。

デリケートな事なので間違えたら怖い。

なのでノータッチ。未確認。進行形で。



その場で俺から確認したのはひとつ。年齢だけ。

『年齢?わからん。気がついたのは陸地が見えた頃。』


意味がわかりません。

生まれる前はどこにいたの?って赤ちゃんに聞いてしまったようなフンワリとした感覚。


その回答を信じるならば、好意的に前向きに解釈するならば、この世界、この星に、海と陸が出来た頃には居たんだろうな・・・。




んで。今だ。今。この状況。


席を離れて調理道具を用意する。

-- 甘いものがほしいな。


サナさんが怒るかもしれないけど、卵を多目にもらい、糖蜜と小麦粉、それと独自の隠し味に酒粕を少々。

ダマが減るまで混ぜ混ぜ。

そして生地が落ち着くまでの間に油の準備。


そうそう。

自己流のサーターアンダギーだ。


生地を匙ですくい取って油の中へと。

流れるように手際よく。

-- おぉ。いい感じに色がついてきた。


すくい上げて油を切る。

-- 良い香りだ。



ふと横を見ると、顔があった。五つ。すぐ横に。

広間を見ると、雷撃チームの皆さんのポカーンとした顔。


森人達。中坊五人組。

コイツらは雷撃メンバーとの話を放って調理場に駆け込んできていたのだ。



「なにそれ、うまそー。」

「いいにおい。」

「食べていいよね。よね。今すぐ、ね。」

「俺たちお客様だもんね。」

「当然だよね。」

と一斉に騒ぎだす元たぬき達。



-- 待て待て待て。

-- ちゃんとあるから!全員分あるから!

-- あ、こら、つまみ食いすんじゃねえ!!

-- 熱いのは当たり前だッつーの!!

-- ソレ揚げたて!危ないって!!

-- 《゜Д゜》ゴラァァァァァァァァァァァァア!!


こいつら本当に伝説の森人さんなの?

しつけのなってないガキんちょじゃねーか!!


「「「お・や・つ! お・や・つ! お・や・つ!」」」

と大合唱。


サナさんがため息をつきながら立ち上がる。

ゆっくりと。怖い顔しながら。


-- え?あれ?俺が悪いの?

-- いや俺悪くないよ?まったく全然悪くない。

-- こいつらが勝手な事してるだけだから。ね?





賑やかな夜だった。

サーターアンダギー騒ぎで収拾がつかなくなったので、あの後森人様歓迎会に突入したからだ。


サナさんと料理長の俺が腕を振るい、リアとキラキラ組が配膳係。

-- このスタイルで固定されてきちゃってるな。

-- 別に悪くはないか・・・。

-- 広間の方では話が盛り上がって・・・ないな。



森人達はみんな素直だった。。

こちらの質問に対して素直に答えてくれる。

知っている事は知っている知らない事は知らない。

はっきり、まっすぐ、わかりやく。 YES or NO


1足す1は?

2!!

っとカンタン、完結、シンプルに答えてくれる。


だけどそこからが本番なのだ。

その後、何が2つなのかな?その2つは何色なのかな?それは何処からきたのかな?

と、こちらが質問内容を広げていくしかない。


ハッキリ言えばとっても面倒くさい。


まだある。

森人達は目に映ったモノに興味を惹かれると、サッサと話を切り上げてしまう。

とにかく落ち着きがない、集中力が足りない。

ほんとにガキんちょそのままなのだ。

-- 学校の先生って大変なんだね!

-- 先生の気持ちわかったよ!今わかった!



なので俺は考え直さなければならない。

最初にした質問。

元居た場所へ戻る方向があるかどうか。


俺の質問に対する森人達の答えはNO。それは間違いではないんだろうけど。

-- 俺の元いた世界に帰る方法知らないか?

『『『知らなーい。』』』


うん。これは俺の聞き方が悪かったわ。

ダメな聞き方。

俺が元居た場所へ戻る方法は知らない。

だけどその方法があるかどうか、その可能性については言及していない。俺も森人達も。



でだ。

改めて聞き直したいんだけど、食べ物だけじゃなく調理具、調理法など彼らの興味の対象が尽きない今の状況ではムリ。


というかうるさい。

質問とかどうでもいいから早く帰ってもらいたい。


-- お前らソレ食ったら森へ帰れよ。

-- マジで本気でGETOUT!





2018/12/31 奥様の指摘が入ったので微修正。

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