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わたしたちの落神様  作者: サカシタテツオ
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006 たぬき

❏たぬき


「ジョン。とうとう頭が壊れたのね」

リアのお言葉。そうそういつものトゲトゲ。


「いやいや、今そういうのいいからっ! お願いなんでそのたぬき達を〆ないで。皮を剥いじゃう前に確認させて!」

と涙目で訴えてみる。

-- スイならこれでいけるんだけどな・・・。



「たぬきの声が聞こえるとか・・・気持ちわるッ!」

ごもっとも、ごもっとも。だけど聞こえるのは仕方ない。

頭おかしいとか言われても聞こえている以上確認したい。

本当に俺の頭が壊れたのか、それとも・・・


「ジョン様はたぬきに化かされているようですわ。」

「ジョン様は毛玉に転がされてますわ。」

「ジョン様はチョロいヤツですわ。」

-- キラキラちゃんズも容赦ないよね?

-- 知ってる?俺の心は粉々ヨ。

-- 今砕けたの。ほやほや。



お約束のやり取りが終わり、ようやく俺の願いは叶った。


-- リア。

と一言。

かなり強めに言ったからだ。 スイが。


-- ありがとうスイ、ほんとに頼りになるね!

-- これからもずっと俺の味方でいてね?

と口に出してみる。

すんごく嬉しそうに耳まで真っ赤にしてモジモジしている。

やだ!なにこれ、超かわいい。男だけど。



しっぽを掴まれプラプラと宙で揺れていた惨めなたぬき達が解放される。


解放されたたぬきは五匹。

そんな五匹が俺の前に整列し始めた。

-- ほら、なんか分かっていそうでしょ?

-- 賢そうにみ見えるでしょ?

とリアに訴えてみる。


届かなかったけど。




『解放に協力してくれてありがとう。』

先程聞こえた声が響く。


-- おお、やっぱりたぬき達の声だったのか。

-- 喋れるんだよこのたぬき!

-- な!やっぱ空耳じゃなかったの!

-- 俺の頭も大丈夫だよ!!きっと!

今度はリアじゃなくキラキラ組の方に訴えてみる。


訴えは届いた。届いたけど。

キラキラ組はやや困った表情を浮かべながら

-- ジョン様マジやばくね?

-- ジョン様たぬきと喋るとかマジありえない!

-- ジョン様マジけだもの。



俺の心、もう折れないよ。折れなくなったんだ!

だってもう砕けちゃってるからッ!!!






キラキラ組の反応からわかる事。

たぬき達の声は俺にしか聞こえてない。

-- うう、俺の頭壊れたのか?

-- なにそれうける。マジやばい。

スイの心配そうな顔が見えた。

お前、ほんといい奴!!これからもずっと側にいてね。

座敷牢に閉じ込められる事になっても仲良くしてよね!




『待て待て、待ってって。忙しい奴。』

『思考が早くて浅くてオモロイな。』

『お前は自分を卑下しすぎ。まず落ち着くべき。』

『しゃべりかけるタイミング難しいから一度黙れば?』

『お前は正気。保証する。』

というたぬき達の声がバラバラに聞こえる。

たぬき達に保証された俺の精神。

でもね、でも。


-- その保証、なんの解決にもなんないからね!

-- 俺だけ聞こえるって再確認しただけじゃん?

-- 今のこのやり取りも周りの皆さん引いてるから!!




『わかった。』

と声は言った。


どのたぬきが言ったかは分からない。


『ちょっと待って。』

と別の声。



すると目の前のたぬき達が一斉に伸び。

ニャンコのような伸び。

-- おお。かわいい。シンクロ伸び伸び。

しっぽの毛が膨らみ、モニョモニョ動く。

しっぽの動きが止まる。

止まったしっぽの周囲がボヤけ始めて、あっという間に赤黒い大きな頭巾が並ぶ。

並んだ赤黒デカ頭巾の周囲は陽炎を纏ったみたいにユラユラしてる。


少し怖い雰囲気だけど、これでみんなも分かってくれたはず。ただのたぬき達じゃないって事を。


「いなくなった!」

「ジョン様たぬきを逃した!!」

「私のたぬき鍋!?」

あれれ?

皆さん、さっきのたぬき達居ますよ、ここに。

ほら返り血を浴びた赤ずきんちゃんが五人ほど目の前に立ってますよ??

見えません?見えてません?



『お前が新しい落神なんだな。』

『うちの言ったとおりやん!』

『正解だった。』

『臭いと思った。神人(かみびと)臭い。』

『お前が正しいの証明するよ。』

あのさ。同時に語るのやめてくんない?

俺聞き取れない。

日本史で習うあの人みたいに耳も頭も良くないの。

目はいいよ。目はね、裸眼で左右2.0!



2.0という脅威の視力で俺は見た!見ていた。

陽炎がなくなった。突然。

特殊効果や音響効果もなく。サクッと。


周りでどよめきが起こる。

-- ふふん。ほらね。ただのたぬきじゃなかったでしょ?

-- 鍋にしなくて正解だったでしょ?

と胸を張り周囲を見る。


-- あれ?どしたの?

-- お腹いたい?

-- みんなひざまずいちゃって。

-- 何これ、ドッキリ?

-- カメラとか仕込んでるの?






たぬき達は森人(もりびと)だった。

森の賢人。

会いたくても会えない伝説の人々。


-- だからってひざまづいて敬う事ないじゃん。

-- さっきまでたぬきだったんだよ?

-- 今夜の鍋の具になる予定だったのよ?

-- なんで俺より畏れられるの?

-- 俺って神様なんだよね?

-- 里のアイドル落神様。

-- え?違う?違うんだー



2019/01/07 「」の修正。

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