003b 多々良ノ里 剣合会代表 ダイダラの証言
❏多々良ノ里 剣合会代表 ダイダラの証言
やっと着いた。
この里まで歩いて2日の道のり。
途中にある古代の遺跡で一晩過ごし、夜明け前に出発すれば昼ごろには到着なのだ。
ごくまれにだが遺跡に賊が潜んでいる事もあるけれど、なぁに、日頃の鍛錬の成果を見せつけてやるまでのこと。
それにこうして我々剣合会の者が通る道であると知られれば知られるほど賊も近寄らなくなるというものだ。
そういった狙いもあってお互いの里の剣合会では年に数回、報告会と練習試合を行っているのだ。
今回は我らがおもむく。
タイミングもいいのだ。
新しい落神様が落ちてきたという話もあったし、前の落神様、ヨシオ様から注文されていたモノの納期について話合わねばならなかったのだ。
ちょっと気が重い。
ヨシオ様から発注されて既に2年半過ぎている。
最初の約束では半年後に納品予定だったのだ。
それが伸びに伸び2年半。
なのにさらに半年待ってくれと頼めと言うのだ。
こんな馬鹿な話があるか。
そういう商談関係の話は青年部の仕事だろうに。
え?向こうの青年部女子組にオッカナイのがいる??
武闘派?
ああ、わかった。あいつだ。リアという女。
あのクソ生意気な奴だ。
いやしかし奴の兄は話せる奴だぞ?
ん?その女に蹴っ飛ばされる?
ヨシオ様のこと舐めてんのって怒鳴られる?
いや、それは仕方ないだろ。
2年も遅れてんだぞ、納品。
え?うん。そうか、そんなに難しいモノなのか。
ああ、わかった。引き受けよう。
そうだな。ここまで待たせてしまったのだ。半端なモノを納品する訳にもいかんしな。
任せておけ。うまく交渉してやろう。
はぁ、着いたけど納期の話をするの面倒だよなあ。
2年半も待ってもらって更に半年待ってくれって言いにくいし、何より頭を下げにゃならん。
おお。ご無沙汰。元気だったか?
ははっ。午後の試合楽しみにしてる。
よろしく頼む!!
昼食会?おお。もちろんだ。ありがたい。
是非とも頼む。
ん、今日はキラキラ組はいないのか。ちょっと残念。いや!なんでもない。
あぁそろそろ報告会だ。
どのタイミングで切り出せばいいだろう。
どう言っても受け入れてくれるだろうが気が重い。
おや、強い風だな。
ピカッ!!
ッパァアアアン!!!
なんだなんだ?
煙が出てるぞ?
賊の襲撃か?!
ならば我らも力を貸すぞ!
なに遠慮はいらない。
うまくいけば貸しにもなるし・・・。
ゴホンッ。ん。なんでもない。
「ご報告!落神様だそうです!!」
え?なんて言った?
落神様?
雷撃?方術??
そんなの聞いてないよ?
このあたりで方術使うのなんて北の森人くらいじゃないの?
なにそれヤバくね?
方術使って雷撃を気軽にぶっ放すようなオッカナイ神様なの?
それって荒神様じゃん。もうそれ厄災レベル。というか歩く自然災害。
そんなオッカナイ神様を前に納期伸ばしてとか言えない。
ちょ、まじこわいって。
優しい神様が里の玄関口を真っ黒焦げになんてしないって!!
急いでうちの青年部に報告しないと!!
早くしないと荒神様の逆鱗に触れるって!
死ぬ気で作れ!と蹴飛ばしてやらねば!
いやいや、挨拶とかとんでもない。
今度改めて青年部を寄越すから。
俺たちは帰るよ。
うん。早く知らせないと!
いや、いいから。
賊は出てないし、報告はいつもの定型文だし!
試合?酒?
それも今度でいいよ。ってかウチの里でやろ?
な。うん。
いやいやいいよ。見送りなんていらないから。
ああ、そう。
うん、そうだな。被害状況は確認しないとな。
うへえ。これヤベー。
根元まで真っ二つ。
しかも完全に炭になってる。
こんな方術聞いたことねーよ。
帰ったら青年部の奴らぶっ飛ばしてやる!