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わたしたちの落神様  作者: サカシタテツオ
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003 つじ風相撲

□つじ風相撲


スッパァアアアアン!!!

「痛ッぅううううううう!!」

やっちまった!きっとやらかしたのだ。

そうに違いない。でなければ俺の後頭部からこんなイイ音が響くはずなんてないのだから。

-- これはアレだね。サナさんのお説教タイム。崩していいと言われるまでずっと正座のプチ拷問。

-- 俺って神様なんだよね?もっとやさしく。ね?お願い。プリーズ!!!




正座はしていない。

サナさんは横にいるけどお説教タイムでもない。


ヨシオの秘密基地本部である俺の住処。

秘密基地本部の大広間に俺、サナさん、スイとリア。

そして男衆4人。こちらは里の青年部と剣合会の面々。

青年部は里の運営・管理を任されている。

剣合会は自警団。里の者に護身術の道場を開放したりしている。



俺は質問攻め大爆撃に敗北し、ことの顛末をあらいざらい自供した。

そうすべて終わった。すべてしゃべったのだ。

だから開放してほしい。

ムリっぽい雰囲気なのはわかってるさ。

言ってみただけ、言ってないけど。




直接俺がやったわけじゃない。

でも油断してたのは間違いない。


ちびっ子達に付き合って”つじ風相撲”の審判をしていた。

仙術を使って手と手の間に風を起こし育てた小さな竜巻を作ってぶつけあう。

術者の手を離れたミニ竜巻は1分ほどで消滅する。

そのミニ竜巻”つじ風”をぶつけ合い相手のつじ風を蹴散らしたら勝ち。

感覚的には喧嘩ゴマっぽい遊び。


仙術は複数人で1つの術を起こすことはできないと聞いていた。実際そのようだった。

つじ風同士がぶつかれば勢いの弱い方は弾けて消えるし残った方もすぐに消滅してしまう。


だからこんなことになるとは思いもしなかった。

里の人の慌てぶりからすると誰もそうなるとは知らなかったようだ。



勝負に勝ったつじ風はすぐに消滅するけれど、早く勝負がつくと消滅まで1分ほど手持ち無沙汰な時間ができる。

根がせっかちな俺には消滅するまでの1分が長かった。だから魔が差した。

ちびっこ達に頼んで生き残ったつじ風に光玉を乗せてもらった。サナさんがライターのように使っていた光の玉だ。

光玉はつじ風に乗ってぐるぐると回りながら上昇。長い長い光の尾を作って上昇する。その様子がちびっこ達の好奇心に火をつけた。

三人一組。つじ風係と光玉係。

つじ風を育て手放す瞬間に光玉を2個つじ風に載せる。

2本の光る蛇が上昇していく様子はちびっこ達だけでなく俺も見とれてしまうほど綺麗だった。


だけど問題はこのあと。


2個の光玉を乗せたつじ風はなかなか消滅しなかった。

ちびっこ達が作ったつじ風は3本。

3本の間で小さな稲妻が走り、つじ風はくねくねと波打つ。

それでもつじ風同士がぶつかれば消滅すると思っていた。

だけど結果は違ったのだ。

3本のつじ風は糸のように撚れて1本の大きな竜巻に成長。その中で長く引き伸ばされた光玉がバチバチと音を立てている。


これはまずい。非常にまずい。

ちびっこ達に避難するよう声をかけ走り始めた瞬間。

轟音とともに光の洪水。


手足はビリビリとしている。

耳鳴りはヒドイけど風はやんだ、眼も見える。

俺に見えたのは里の入り口ある大きな1本松。まっくろ焦げになっている。

-- あぁ、これヤバイよね。ダメなやつだよねきっと・・・。

とつぶやいたところにサナさんがご登場。冒頭へ戻ると言うわけだ。



今回の出来事は今更秘密という訳にもいかない。

術を練ったのはちびっこ達だし。周囲に目撃者も多数いたからだ。


「はぁああああ・・・」

とサナさんが大きな大きなため息をつく。

そしてサナさんは立ち上がる。

周囲のおしゃべりが消え視線が1点に。

「とにかくアレは方術ではない。落神様がやったものでもない。仙術の使い方にはまだまだ工夫の余地があると言う事だ。」

「仙術を練る工夫・調査は青年部と剣合会に任せる。」

「子供だけでなく里の者すべてに仙術の使い方を注意するよう伝える事。」

「落神様はわかる範囲でいいから青年部や剣合会に協力する事。」

「スイとリアは落神様に危ない事をさせないように監視を命じる。」

「以上、解散!!」


なんて男らしい立ち振舞い。ほれぼれしちゃう。

だけど監視って何よ!俺って神様なんだよね? もっと優しく。ね?お願い・・・







□雷撃の再現検証実験 リポーターは落神様。その1



青年部と剣合会合同の雷撃再現検証実験。


場所は里の南の湿地帯。というかただの原っぱ。

雷の性質を踏まえて避雷針を用意。

大きめの櫓を組んでその上に大きなヤリを設置。

落神様の宝物庫と呼ばれるガラクタ倉庫から金属製の物体を掘り出してきたので準備は万端。だと思う。




青年部からは8人。


キラキラ組と呼ばれる女の子3人。

代表さんと書記。

それとインテリ風の細マッチョが3人。実験大好きそうな風貌だ。



剣合会からは5人。


代表と直属の部下4人。1人は書記をするそうだ。



俺はあの日のつじ風相撲を再現するためのアドバイザー的立場。もちろんスイとリアの監視付き。


キラキラ組の目がキラキラしてる。

そりゃそうだよね。

こんなイケメンと一緒だもの。君達だってイケメン大好きだよねえ。当然だよね。

神様よりイケメン。気持ちはわかるよー


凹むよなあ。



ん?まずは指導しろって?

わかりました。


キラキラ組の女の子達ですね。

おぉ、ほんとにキラキラしてる!!まぶしい!!



まず1人がつじ風を育てて。うん。そんな感じ。

んでそいつを手放すときに光玉をって、あぁ。

うんうん、大丈夫。

難しいよね。タイミング。


ちびっこ達は一発で決めたけど、それは黙っておこう。


お、さっきより大きめに育てたね。

いや大きくても大丈夫。一本だけなら。

でタイミングを合わせて。そう!うまい!!



うひょー。すごい綺麗だよねー。

花火を見てるみたい。

花火。知らない?

うんまあその。ね。

そうそう方術みたいなもん。



あぁ消えちゃった。


ちょっと残念な気分でしょ?

ちびっこ達がはしゃぐ気持ちもわかるでしょ?



んじゃ、こんな感じで。みなさんも。ハイ。

そう。全部で三本出すんだ。

三本が絡んで大きくなるんだよー



ちょ、そんな大きなつじ風でやるの?

ヤバくない??


うっひょー

光玉の大きさもちびっこ達より大きめだから、より綺麗に登るねえ。



ほらキタキタ。バチバチってなってる。

んでクネクネして、うん。ほら。一本に。



え?なに?なんて???

風がうるさくて聞こえなーい!



ピカッ!!

ドッ、ズゥウウウウウウウウン-- -- !!!



うおおおお!ビックリしたー

わかっててもビックリしたー

耳がキーンってなってる。

手足もビリビリしてるよ。これって軽く感電してない? してない。してたら死んでる?


そうか。そうだよね。


こうなる理由?

わかるわけないじゃん。俺って仙術使えないし。

方術?それも使えないよ。




「…この無能がッ…」

リアさん? 今のつぶやき聞こえましたよ。

無能なのはわかってるから。知ってるから。心の中で思っててもいいから。口に出さないで。めちゃくちゃ凹むのよ。



あぁスイ。慰めの言葉なんていいよ。いらない。

このタイミングで慰められても余計惨めになるから。

そのうえキラキラ組の女の子達に嫉妬されたりしたら目も当てられないよ?



ん?キラキラ組の女の子達?

リアの周りでキャッキャしてるけど。

おお、リアの照れ笑いとか初めて見た!

笑えるんだー。そんな機能あったんだー。



おお。スイ・リアの2人でつじ風花火やるんだね。

うん、大丈夫。一本だけなら。

光玉も一個だしね。



それじゃあ…って

何!そのつじ風!!

いきなりマジもんの竜巻レベル!!

いや!やめて!リア!!

ストップ!ストップ!!!

こんな竜巻にそんなに大きな光玉放り込んだら





サナさんが飛んできた。


いい音するよね。俺の後頭部。





❏実験結果の報告 リポーターは落神様。その2


俺の言う通り光玉を二つのせたつじ風を三つ作って寄せてやると一本になって雷が落ちる。

雷が落ちる方向をコントロール出来そうにない。

避雷針に吸い寄せられるだけみたい。


光玉を載せないつじ風を三つだと、つじ風相撲と同じ。二つが消し飛ばされて残ったひとつがゆっくり消滅。


光玉ひとつのつじ風三つでも同じ。

バチバチ火花を散らして綺麗に見えるだけ。



問題はスイとリア。

2人の仙術で練ったつじ風と光玉が他の人達とは桁違いだった。

雷も落ちた。条件違うのに。

櫓は残ってなかった。



2人の実力はよくわかりました。

里一番の使い手兄妹。


怒らせたらダメ。絶対。



あとは青年部と剣合会の人達に任せよう。

なんせ俺にはサッパリだもの。

仙術だって使えないしね。



だから、その、リアさん?

怒らせる気は全くないんだけど、ゴミとかカスとか言われるとちょっとは反論したくなりますってば。



スイ。お願い。助けて。やっぱり慰めて。

俺もうズタボロっす・・・。




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