表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
83/87

別れ

「離婚しましょう。私はもう、あなたの妻ではありません」

 覚悟を決めたようにロネリ姫が言う。

 その顔はりんとしていて、王族の気高さ、ほこり、のようなものが感じられた。

 幼くても、やっぱりロネリ姫はプリンセスなのだ。


「冬樹様が、私を置いて出て行くというなら、私はもう、止めはしません。離婚しましょう。だけど、冬樹様はそれでいいんですか?」

 姫が真っ直ぐに俺を見て訊く。


 水色のドレスの上に、白いエプロンをしたロネリ姫。

 窓からの光で金色の髪が縁取ふちどられて、神々しいオーラに包まれているように見える。


「冬樹様は、本当にそれでいいんですか? ロリコンで、妹君にいつもスクール水着を着せてる上に、時々、体操着とブルマをはかせたり、セーラー服を国中に流行らせたりする冬樹様が、ロネリを逃がしてもいいんですか? この、ちっぱいでロリロリしいお姫様を置いていくなんて、もったいなくはありませんか?」

 姫が、そんなふうに訊く。


 いや待て、俺はロリコンじゃない。

 まりなにスクール水着を着せたのは俺じゃないし、戦闘服をブルマの形にデザインしたのも、バックパックをランドセル型にしたのも俺じゃない。


「こんなに可愛くて、愛らしくて、そしてそして、この世の中で誰よりも冬樹様のことが好きなロネリを、置いていってもいいんですか? もう、こんなふうに一途いちずに冬樹様を愛する幼女は、二度と現れないかもしれませんよ」

 姫の目尻に、じわっと涙が浮かぶ。


「昨晩、ロネリはなんと言いましたか? 世界が敵になっても、ロネリだけは冬樹様の味方だと、言ったではないですか。それを忘れたのですか? あの言葉は嘘ではありませんよ。私は、真剣に言いました」

 確かに昨晩、姫はそう言った。

 でも、あのときは、まさか俺が本当に全世界を敵に回すことになるとは思わなかった。

 すべての悪を引き受ける、大悪党になるなんて思いもしなかったのだ。


「私は、なにがあっても絶対に冬樹様の味方です。父王様と敵対することになっても、冬樹様が極悪人になっても、ロネリは冬樹様を支持します」

 姫がこぶしを握りしめて力強く言う。


「だから、冬樹様は、ただ、ロネリに『ついてこい』って言うだけでいいのです。そうすれば冬樹様のことが大好きなロネリは、黙って冬樹様についていくのです。父王様も、プリンセスとしての立場もポイって捨てて、迷わずついていきます!」

 姫の目尻から、一筋の涙が伝った。


「だから冬樹様は、ロネリに『ついてこい』って、言うのです!」



「本当によろしいんですか?」

 俺は訊いた。

 俺に、この姫を受け止める甲斐性かいしょうはあるんだろうか。

 姫に訊いていながら、俺は自分にも問いかけていた。


「はい」

 姫がきっぱりと言い切る。


「分かりました」

 俺は、覚悟を決めた。


「それではロネリ姫、どうか、私についてきてください」

 姫の前にひざまずいて、頭を下げる。

「全世界を敵に回した大悪党の妻として、一緒に世界を騒がせましょう」


「はい。喜んで」

 姫がとびきりの笑顔で答えてくれた。

 泣いた後で目がうるんでいて、瑠璃るり色の宝石のような目が、俺を優しく見詰めてくれる。

 俺は、膝を着いたままロネリ姫を抱きしめた。

 姫が俺の頭を胸に抱くようにする。

 姫の胸はまだちっぱいだけど、この胸の中は、どこよりも安心できる場所だった。



「姫様が冬樹様についていかれるなら、私ももちろん、ご一緒致します」

 俺と姫の様子を見ていたリタさんが言う。

 リタさんも少し涙ぐんでいた。


「ならば私も、お供しなくてはなりませんね」

 ルシアネさんが言う。

「ルシアネさんまで、そんな……」

 俺は驚いてルシアネさんを見た。


「私は、以前、冬樹殿から、ロネリ姫をお守り申し上げるよう、頼まれたではないですか。私はその時、一生をかけて姫をお守り申し上げると固く誓ったのです。ですから、姫が行くところ、私も参ります。それに、全世界を敵に回す。それは腕が鳴るではないですか。騎士として、これ以上の大きな敵はありません。これ以上、自分の力が試される場所はない。騎士きし冥利みょうりに尽きるというものです」

 ルシアネさんが、そんなふうに言ってくれる。


「本当にいいんですか?」

 俺が訊くと、ルシアネさんは無言で深く頷いた。




 俺達がそんなふうに部屋で話していると、中庭に停めてあった一八式が移動してきて、部屋の窓から顔を覗かせる。


「お兄ちゃん、国王とその軍勢が追いついて来たよ」

 一八式を操作していたまりなが、コックピットから顔を出して言った。


 どうやら、国境にいた国王達が、このレオネス城に戻って来たようだ。

 河原に残っていた馬を捕まえて、少しの軍勢を整え、どうにかここまで飛ばしてきたらしい。



「父王様には、やっぱり、ご挨拶したほうがいいんでしょうか? ここを出ていくって、冬樹様と行動を共にするって言った方が」

 ロネリ姫が訊く。


 確かに、このまま黙って去るより、一言残したほうがいいのかもしれない。

 国王はロネリ姫の父親なんだし。

 唯一の肉親だし。


 だけど、幼い姫にそれを言わせるのはこくな気がした。



「そうだ、私に、考えがあります」

 頭を回転させたら、俺に、良い方法が思い付く。


「ロネリ姫、リタさん、ルシアネさん、みんなをしばってもいいですか?」

 俺が訊くと、ルシアネさんとリタさんが顔を赤らめた。

 ロネリ姫だけ、わけも分からずぽかんとしている。


「冬樹殿、普通のプレイもまだなのに、縛ったりするのはどうかと思いますぞ」

 ルシアネさんが言う。


 いや、プレイとか言わないでください!


「そうです。姫にはまだ早すぎます。それに、こんな立て込んだときに……」

 いやだから、リタさん、縛るって言っても、そういうプレイではありません(ってゆうか、姫には早いってことは、リタさんやルシアネさんにはそういうプレイしていいのか?)。



「少しだけ、縛られてください。それで、姫が国王様を裏切らずに、ここから立ち去ることが出来ます」

 咄嗟とっさに思い付いたけど、これからすることは、我ながら良いアイディアだと思う。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ