表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Delete  作者: rouge
7/7

覚醒

『覚醒、しねぇかな』

啓作の言葉が自分に跳ね返った。

自分自身、その言葉を願っていた。

覚醒、しねぇかな。

覚醒、しろ。

俺も、覚醒、しろ。

覚醒したい、覚醒、覚醒、覚醒。

頭の中を何度も回る覚醒と言う言葉。

血がにじむほど、拳を強く握り締め、それに負けないほど、強い思いをめぐらす。

生きるためじゃない。

自分の居場所を作るためじゃない。

あいつらを助けたいのじゃない。

みんなを守りたいんだ。

神をぶっ飛ばして、元の世界へ戻りたいんだ。

覚醒、しろ――!!!

その想いを打ち砕くかのように、何も起こらなかった。

(なんて非力なんだ……俺は)

気持ちが足りない。

違う。

頭で理解してなるものではない。

体が反応するんだ。

自然と。

「おい、戻れ!!」

覚醒した男が叫んだ。

その言葉に我を取り戻し、もといた場所へ走る。

結局、啓作は戦いに加わった。

勝ち目のない戦いだと分かっていても、自分が役に立てないと分かっていても。

「が……はっ……」

俺が岩陰へ入ろうと思ったとき、嫌な声が聞こえた。

それは啓作のものだと、自分で勝手に決めつけて、また、戦いの最中に飛び込もうとする。

(啓作を連れ戻さないと)

そう、思っていた。

しかし予想を反した光景が、そこにはあった。

倒れているのは、覚醒した男のほう。

ともかく、彼の元へと走る。

「力は使えば減るものデス♪」

神の言葉にいちいちかまっている暇などない。

彼は限界を知らずに力を使いすぎた、ということくらい、倒れたときから彩斗は察していた。

「大丈夫か!?」

戦闘の真っ只中で、倒れたやつをたたき起こす。

「わ……るい……」

かろうじで息はしている。

腹に大きなアザがあるから、攻撃を防ぐ時にちょうど力が切れたのだろう。

(ここから移動しなければ……)

「啓作!そいつ頼めるか!?」

「無理だ!」

だろうな。

覚醒したやつが負けてるんだ、生身の人間が戦えるはずない。

うだうだとした考えをすべて取っ払い、倒れた男を抱え、岩まで走る。

相変わらず霊亀の攻撃は続く。

何発かかすったが、致命傷ではない。

「ぐわっ……」

あと数歩でたどり着く、と言ったところで、今度は啓作が嫌な声を出した。

パンチを受け、それこそまさに漫画のように吹っ飛び、闘技場の壁を破壊した。

人間なら確実に死んだ。

しかし、啓作は人間だが、驚異的な生命力で死んでいなかった。

動いている。

ただ、今追い討ちをかけられたら、まず生きていられないだろう。

抱えた男を下ろし、啓作のもとへと駆け寄ろうとしたとき、

「や、……めとけ」

とめられた。

「なんで?」

「死ぬぞ……」

「瀕死状態のやつに心配されたくねーよ。俺しか無傷なやついないし仕方ないだろ」

そういって走ろうとしたとき、また止められた。

「名前、は?」

「彩斗」

「そうか……悠二、だ……」

(早く啓作のもとへ……)

その気持ちが先走り、悠二との会話を途中で切り上げた。

啓作は壁を背に、立ち上がることが出来ずにいる。

やっと、彼の元に着いたとき、忘れていた音が響いた。

「キュルルルル」

近くに霊亀がいることを忘れていたわけじゃない。

ただ、現実逃避したかっただけだ。

「情けない……」

「いいから、喋るな」

今、啓作を背負ったところで、不意を疲れて2人ともお陀仏だろう。

それは1番よくない。

(かといって俺だけ逃げるわけにはいかないよな)

立ち上がり、啓作の前に。

こちらをずっと見て、攻撃の構えをしているあいつをにらむ。

守りたい。啓作を。

誰にも死んで欲しくない。

もし、自分が死んでも――

消えた。

ガシャンッ

霊亀の動きが見えた。

右からの攻撃、そう分かった。

しかし、それ以上のことが起こった。

腕でガードしたはずだったのだが、いつの間にか手にはトンファーが握られていた。

「オメデトーございマス♪」

(俺は、覚醒したようだ)

神の言葉で、そう確信する。

「キュルル」

まだ霊亀は攻撃をやめようとしない。

いや、きっと消えるまでしないだろう。

左前方から右後ろへ即座の動き、蹴り上げ――!

「キュゥ……」

「見える」

相手の動くタイミングに攻撃を合わせれば、当てることも出来る。

「お前、……覚……」

「あぁ、多分」

啓作が言い終わらないうちに、3回目の攻撃。

次はこちらからの攻め。

俺の勢いを殺さないようにして、俺の腹へもぐり、パンチを繰り出す。

そのカウンターを左のトンファーで叩き落とし、すぐさま右のトンファーで顔面を殴る。

「勝てる」

はるか前方へ吹き飛んだ、吹っ飛ばした霊亀を見て、少なからず希望が湧いた。

そのとき、霊亀がすぅ、と消えてしまった。

「10分経過デスww頭のいいコなら次何来るか分かりマスネ★フィナーレを飾ってくれるのはこのコ!!頑張っテ♪」

頑張れなどと微塵も思っていない神は、何の抵抗もなく、指をはじいた。

彩斗は勝てる、と思った希望を打ち砕くように現れた神が憎かった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ