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6/7

霊亀

止められた男が吹き飛ばされるのとほぼ同時に、扉が開く。

出てきた何かが何であるかは分からない。

2本足でしっかり立ち、手もついている。

しかし、四霊のうちの1匹であるなら、霊亀であると思う。

霊亀の資料はあまり無く、どんなものか想像がつかなかった。

甲殻類のように固い殻や甲羅を持つ甲虫であり、吉凶を予知するとされる。

今出てきた霊亀(?)は漢字の通り『亀』、ではなく、どちらかと言うとトカゲに亀の甲羅をくっつけた、と言った感じだった。

「ウフフwいいこと教えてあげましょウ♪」

出てきたものに気をとられ、神がまだすぐそばにいることを忘れていた。

「この男が『覚醒』したように、みんなこうなれるのですヨww」

(覚醒?)

聞きなれない言葉(と言うより、普通に使われる覚醒という意味を理解している彩斗にとっては)に疑問が涌く。

「まだレベル1ですケドねwwともかく死にたくなければ頑張っテ☆」

「キュルルルルル」

神が言い終わるか、言い終わらないかのタイミングで奇妙な音がした。

その奇妙な音は、霊亀(か、どうかは分からないが、とりあえず霊亀)からした。

右手、右足をを後ろにするような、不格好な構えを取り、変な声、もしくは音を発している。

攻撃の溜めでもするかのように。

とはいえ、あいつはまだ、開いた扉から出ようとはしない。

(ここまではさすがに攻撃は届かないだろう)

「キュルル…………」

音が、止まった。

ッシュ

目の前に、熱気を感じた。

その感覚に追いつくように、覚醒した男と霊亀が見えた。

どうやら彼が霊亀の攻撃を防いでくれたらしい。

俺に向けられたパンチを、灼熱の腕を交差させて止めている。

「おい、逃げろ」

そういうと彼は腕をはじき、霊亀を吹っ飛ばした。

悔しいが、最善の行動としては逃げるのが一番。

今までの戦闘で、ほとんど無くなってしまった岩の影に入る。

そこには十数人の人がいた。

(隠れる場所も少ないし、当たり前か)

あまり深く考えず、出来るだけ離れた場所に腰を下ろした。

後ろからは戦闘の音が絶えず聞こえる。

(こんなとき、何も出来ないなんて……)

悔しさが込み上げ、冷静を取り戻す。

(今は仕方ないんだ)

「お前、無事だったのか?」

突然話しかけてきたのは、麒麟との戦闘で助けてくれた男だった。

「俺、啓作(けいさく)

「彩斗」

簡潔に名前だけ言って、そっぽを向く。

ここへ来て、もっとも恐れていたことが始まりそうだった。

「なぁ、覚醒って何だと思う?」

冷たくあしらった俺を気にすることなく、皆が気になっていることを聞いてきた。

「何かを原因に、ああやってなることだろ」

戦っている最中の男を指差す。

しかし依然として態度は変えない。

「やっ……ぅ……」

彼は急に立ち上がろうとしてうずくまった。

どうしたのかと思い、全身を見渡すと、足が血だらけだった。

彼だけではない。

その向こうにいる男女共々、命にかかわると言った傷ではないが、軽傷を負っている。

(さっき、神は俺達を回復させなかったのか)

自分のことは気に留めるのに、他人のことは気にもしていなかった。

「俺も覚醒、しねえかな……」

男はボソっと呟き、岩陰から飛び出した。

「っ……、何考えてんだよ!」

一緒になって俺も飛び出す。

何か考えがあるわけでも、霊亀に対抗する術があるわけでもない。

ただ、あいつを連れ戻さないと、という感情で動いていた。

「だぁ!!」

闘技場のど真ん中で戦っている。

目で追うことのできないスピードでパンチやらキックを繰り出している。

そこに向かって、何も考えずに飛び込もうとしている啓作がいた。

「戻れ――!!!」

そう叫んだときには、すでに霊亀をぶん殴っていた。

「危ないぞ」

「百も承知だ」

2人は息を合わせ、戦おうとしている。

(俺は、何をしているんだ)

足の振るえが止まらない。

やっぱり、恐い。

その感情を振り払うことが出来ずに、立ち尽くしていた。

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