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最後の平凡

彩斗の普通の日常を過ごす最後の日。

今日は平日だったため、学校へと向かった。

その途中に見える中央公園。

5時になったら何かつまらない毎日を変えることが待っているのか?


やはり、学校はあっけなく終わった。

特に何かあったか、と聞かれても何も答えることは出来ない。

学校へ着いて、授業を受け、学食食って、昼休みは寝て、授業を受けて、部活も入部して無いため帰路につく。

ただいまの時刻4時。

あまりにも『誰か』との集合時間は早すぎる時間だが、ゆっくり歩けば公園まで30分くらいかかる。

遅すぎていけないことはあるが、早すぎていけないことはない。

歩いていると、書店が目に留まった。

いつもなら早く家に帰りたいので通り過ぎるが、今日は時間もあるし寄ることにした。

それに、ここに来るのは最後になるかもしれない。

そう思った自分が非常におかしくてクスクス笑っていると、近くにいた小学生に笑われた。

恥ずかしくて書店を飛び出し、走っていくとあと少しで公園というところまで来ていた。

予定よりも大分早い。

4時20分に公園についてベンチに座った。

早すぎていけないことは無いかもしれないが、早すぎて暇なのは自分にとっていいことではない。

公園をぐるっと見渡した。

小学生は滑り台で遊び、中学生のカップルは噴水の前でこそこそ話している。

見ているこっちがむず痒くなりそうなほどうまく話せていない。

誰でも一度はあった年頃。

あの頃、俺も同じような感じだった。

まず彼女がいるってこと自体、恥ずかしくて誰にもばれたくなかったなぁ。

でも女の子はそういうこと言いたがるから、付き合って2,3日するとすぐにばれてた。

そんなことを思っていると自然と笑みがこぼれる。

今、普通のことを考えてるだけなのにすごく楽しい……

なぜだかまったく分からないが。

空を見上げ、ボーっとする。

時間だけが流れていく。

(こんな時間は、大ッ嫌いだ)

彩斗の一番嫌いなもの、それは退屈だった。

それを乗り越えてまでしてここにいるということは、相当平凡から抜け出したかったんだろう。

時計の針が11を指していた。

あと5分で平凡から抜け出せるかも(・・)しれない。

(ったく……手紙出してきたのそっちなんだからもっと早くこいよ)

正直、イライラさえしてきていた。

が、それを押さえつけるようとする本能。

(5時になったら絶対帰ってやる)

心に硬く誓い、イライラを沈める。

空を見ていたら普通、腹立ちなどまったくしないはずなのに。

携帯を取り出し、メールを確認すると友人からきていた。


Re:

何の話かまったくわかんないんだけど…

熱でもあるか?


これは、俺にもしものことがあったら線香の1本でも立ててくれ、といったことに対しての返事だ。

これから会うのは誘拐犯の可能性だってある。

画面右上にある時計が自然と目に入った。

携帯に表示されている時刻は、4時59分だった。

俺の腕時計は電波だから、1秒の狂いも無い。

見ると、残り10秒だった。

あと10秒で……

9……8……7……6……

明日が楽しくなるかもしれない。

5……4……

こんなに1秒1秒が長く感じられるのは初めてだ。

3……2……1

カチ

5時ジャスト

突然、静かになった。

何かがおかしい。

車の音がしない。

さっきまでいた滑り台の近くの少年がいない。

さっきまでいた中学生のカップルがいない。

人が、いなくなった気分だ。

「こんにちわ」

後ろからかけられた声に、ホッと安心して振りかえった途端、ギョッとした。

真っ白のハットをかぶり、真っ白のコートを纏い、薄笑いを浮かべている若い男性。

確かに服装は変ではある。

しかしギョッとすることはないのでは、と疑問に思った。

なんでそんな感情が表れたのか、不思議だった。

「ここに来た、ということは世界の命運をかけて戦ってくださる、と解釈してよろしいですね?」

首を傾け、にっこりと笑いかけてくるのだが、どこか不気味さを漂わせている。

「世界の命運って何ですか?」

取り合えず首を縦に振る前に、聞くことを聞いた。

あからさまに他人行儀な口調で。

「神と戦っていただくのです」

何を言われたか頭がついていけなかった。

言葉がでない。

「あぁ……すいません。直接戦うわけではないので安心してください」

俺の心を読んだかのように答えた謎の男。

「これ、なんですか?」

辺り一帯を見渡して問う。

どう考えたっておかしい世界。

「ただ世界を切り離しただけです。先ほどの答えを聞いてませんが、戦ってくださいますか?」

ただ世界を切り離しただけ……

わけが分からないが、仕方無しに首を縦に振る。

ここに来た理由はあの手紙のためなんだから、ここまできて引き下がるのは名が廃る。

「ご了承致しました。ありがとうございます」

そういうと、ふわっと体が浮いた。

体が持ち上げられるというよりは、地上が足から離れていく、そんな気がした。

あの手紙は子供の悪ふざけと思っていたんだが、そんなことではないようだ。

むしろ、そんなことのほうが良かったとまでに思っている。

楽しいことが待っている

そう望んで来たはずなのに、『神と戦え』とは……

「どこへ行くのですか?」

その質問には笑顔で返され、それ以上聞くことはなかった。

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