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14話 新たな戦い

 翌々日の反省会。

 通常ならその日、若しくは翌日に行われるのが普通なのだが、今回は当てはまらなかった。

 と、いうより委員会の誰もが一週間後でいいのではないかと思っていたのだ。

 それはさすがに拙いので俺は滝山に直訴し、開催となった。

「時宮はマメだねえ」

「マメにもなるさ、滝山」

 滝山の苦笑半分の言葉に俺は肩を竦める。

 凡人と何も考えず、思いついたように突飛な行動を取ってくるのに、何か不手際があるとこちらのせいにしてくる。

「後で責められたら堪らない」

 滝山や立花はともかく他の三人は凡人だ。

 次のテストで大火傷を負った時、その責を俺に転嫁してくるだろう。

 どうして予測しなかったのか? や、分かっていて黙っていたんだろう! と弾劾してくる。

 まあ、彼ら凡人の言い分はただ一点--自分は悪くない、ということ。

 凡人は誰だって自分は何のケチもついていない真っ新な状態であることを望むものだからね。

 そういうのは政治の世界だけにしてくれ。


 そうして集まってもらったクラスの委員会五人。

 場所はいつぞやのカラオケ店。

「はい、優秀な成績を残した一組の生徒はさらに割り引かれます」

 凄まじいな。

 中間テストを頑張れば凡人にも分かる形で還元される。

 皆が頑張るわけだよ。

 俺はこのシステムの開発者の天才ぶりを讃嘆しながら料金を支払った。

 ちなみに俺は学年首席だったので九割引きである。

「さて、皆に集まってもらったのは俺の提案によるものだ」

 第一声、滝山がそう口火を切る。

 そうやってすべてを引き受けてくれるリーダーの存在はありがたい。

 クラスメイトの軋轢も生まずに済むし、何より凡人に注目されないというのが大変魅力的だ。

 勝手に持ち上げ、そして勝手に失望するのが凡人であり、そしてそれに左右されると立場はご免だよ。

「今回の二位という結果をありがとう。皆のおかげだ」

 滝山はそう頭を下げて感謝を示す。

 クラスで一度行っているとはいえ、このような少人数の場で行われるのとでは優越感が違ってくる。

 ほら、三人が満更でもない表情をしている。

「しかし、問題がある。現状では高確率で三位に転落するからだ」

 滝山のその言葉に皆の表情が引き締まる。

「これを見てくれ」

 滝山が鞄から取り出したのはノートの束。

 開いてみると、今回の中間テストの要約点がびっしりと書き込まれていた。

「頭の良い生徒がノートの要約を配って全体の成績を引き上げる戦術を使用していたのは俺達だけではない」

 専売特許とは思わない、他のクラスも使用しているのが至極当然である。

「しかし、滝山。この要約は俺達のより粗いぜ」

 ナンバーツーの関が誰よりも早く読み終え、そう指摘する。

 関の言う通り、この要約は粗が多少目立つ。

「学年トップの時宮と同等の要約を作られたらたまらんよ」

 苦笑気味に滝山はそう述べる。

「しかし、これの要約は元締めはC組の雲道さんのノートだ。しかもこの要約を使用したのは雲道のことを認めている半数の生徒のみ。半分の数で三位--その事実を関はどう思う?」

 頭の回転が早い関に考える時間など休む時間に等しい。

「もし事実ならヤバいな」

 すでに雲道はクラスを統一している。

 ほぼ確定的に二位争いに加わってくる。

「なら次の仮想敵はC組か」

 関はそう結論付けてきた。

 関よ、頭が良いのは結構だが早とちりしすぎではないか?

「いや、関。敵はC組ではない」

 滝山は首を振る。

「次の敵は俺達だ。具体的には中間テスト二位を取ったA組に勝たなければならない」

 これは滝山の意見に賛成。

 もしC組を敵認定してしまえば勝敗がハッキリと出てしまう。

 凡人は白黒をつけるのを好まない。

 だから自分の敵は自分という曖昧な目標にしておいた方が凡人は頑張る。

 さすが滝山、凡人の扱いについて心得ている。

「で、その方法とは?」

「それを皆で考えようというわけだ」

 何とも意味のない提案。

 だが、俺の目論見は達成されている以上、これで良い。

 形が欲しかった。

 自分は精一杯手を尽くしたというポーズ。

 それがあれば俺に対する風当たりが軽減する。

 なので俺は置物になろうと思っていたのだが。

「と、いうことで時宮。何か良い策はないか?」

 滝山が素敵な笑顔で俺に振ってきた。

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