時間からも忘れられた国
おっまったっせっいったっしっまっしったっ!!!!!!
◇
舞い降りたマシロリバウドは地に足が触れるのと同時に手を正面、ヨロイオオカミの群れへと翳す。瞬間、黒い波動のようなものが放たれて気付けばヨロイオオカミの群れは消し炭と化していた。
「――全く、どれ程待たせれば気が済むんだ貴様は」
「マシロちゃんが…!」
「喋った!?」
「テキストから聞いているんじゃないのか…私は元々喋れるんだ」
言われてみればそうだった。
「何か前に見た時と随分違うわね」
「当然だろう。属性によって私の容姿は変化するんだからな。言えばこの闇属性を司る姿こそが私の真の姿だ」
取り敢えずは納得したんだろう。ユリカは属性の変化で容姿が変わると言う部分には触れなかった。
「初めて会うな。俺はアキラだ、よろしく!」
「全て見えていた。お前がアエスティーを助けてくれた奴だな、感謝するぞ」
「当然の事をしたまでだよ」
アキラの言葉に感心したように頷いたマシロはアエスティーへと向き直る。
「マシロ…様」
「アエスティー、よくぞ戻ってきてくれた。無事で何よりだぞ」
アエスティーを歓迎するマシロ。少しして、背を向けると先導して歩き始めた。
「まあこんなとこで立ち話もなんだ。我が居城に招待しようではないか」
目指すは高く聳える城。アレチェスカ王国の城よりも大きいそれは十分栄えていたと主張している。
城下町はとても賑わいに溢れていて皆、楽しそうに生活をしているのだが、ここが疑問だ。
「ネイムロスト…エレストフェレスって、確か滅びたんじゃなかったのか?」
皆同じ事を思っていたらしく、俺の問いに首を揃えて頷く。マシロは振り返る事も立ち止まる事もなく言う。
「今お前達が見ているのは幻影だ。名を失った国はこうして幻影に苛まれ続ける」
「これが、幻影…」
到底幻には見えない。全て、今を生きているように見える。
名を失った国の末路を目の当たりにして俺達は暗く表情を沈めた。
「ただ、建物だけは実物だ。ネイムロストは人々の記憶からだけではなく時間の流れからさえも忘れ去られる。住人は皆、とうの昔に息絶えてしまっているがこの街並みだけはこうして止まった時間の中で朽ちる事なく存在し続けているんだ」
「悲しいな」
「ああ、悲しいよ」
その後に会話は続かない。それぞれが、失われてしまった変哲もない日常の幻影に目を奪われている。
気付くと、俺達は城の中へと案内されていて人生2度目の謁見の間に足を踏み入れていた。
「早速本題に入りたいところなんだが…今日は疲れただろう。幻影を頼りに食堂で飯を食らうもよし、この玉座の後ろにある王室で睡眠を取るもよし。ゆっくり休むといい」
とても亡世の支配者とは思えない気遣いにマシロも俺達人間と変わらない事を再認識し、言葉に甘えて休む事にした俺は食堂に向かうシュラ、ユリカ、アエスティー、アキラと別れて王室で睡眠を取りに行った。
結果的に広すぎる王室で皆が来るまで1人で寝た俺はベッドに小さな染みを作るのであった。
「悪魔」
魔物上位種に当たる存在。数はそこまで多くはなく、遭遇するのも稀。
悪魔は戦闘に特化していて凶暴な上とんでもなく強い為、遭遇したら逃げるよう言われている。




