再会
この手抜き満載の話がお待たせ致しました最新話です。もうしわけ!!
◇
茂みが動いたのは分かったがどの茂みが動いたのかまでは分からない俺は周囲をまんべんなく見渡し何時何処から来ても迎撃出来るよう警戒を続ける。
しかし、そうしていたのは俺だけで他の皆はただ一点の茂みをジッと睨み付けていた。1人だけキョロキョロしていたのが恥ずかしくなった俺も何事もなかった体で皆が見る茂みを睨んだ。
少しして、ゆっくりと茂みからそれは出てくる。
「ヨロイ…オオカミ……!」
ユリカの呟きを聞き逃さない。俺達の目の前に姿を見せたのはその名の通り、全身鎧に身を包んだ1匹の狼だった。
「なんだそれ」
「刃も通さない頑丈な鎧による防御だけでなく、風のような速さとそこから繰り出される攻撃も全てトップクラスを誇る狼種最強の魔物です!」
テキストの解説で大体は分かった。後は勝てるかどうかだ。
「俺達で勝てるか…?」
「無理ですね!シュラちゃんならとにかく他の皆さんは間違いなく胃袋直行コースです!」
「じゃ、じゃあさ聞くけど…それが複数だった場合どうなる?」
そんな洒落にならない事を聞いてくるアキラを不審に思いながら俺は隣のテキストに向けていた視線をヨロイオオカミへと戻す。
何か数が増えてた。
「増えてる!?」
「に、ににに…」
「に?」
「逃げるわよー!!」
真っ先に逃げ出したのは意外にもユリカだ。続いてアキラもちゃっかりアエスティーも抱えて走り出す。
当然、俺も逃げるわけで。1人だけ挑もうとするシュラの手を引いて。
「うおおおおおおお!?このまま一気に下るぞぉぉぉぉ!!」
地響きが起こる程の大群の大進行から逃れるべく全速力で山を下る。途中明らかにやばそうな魔物とも遭遇したが相手してられる余裕はなく、ついでにと言わんばかりにそのやばい魔物も俺達の追跡を開始してもうトレイン状態になってしまっていた。
線路は続くよ、どこまでも。
「何時まで続くんだ!?」
「もう、見え始めてるぞっ」
「本当に?何処よ!?」
「アキラさん、幻覚……」
「アエスティーまで!?いや!あそこよく見てみろって!」
皆に疑われてもめげないアキラが指し示した場所には確かに麓だった。軽口を叩きながらも何とか止まりそうになる足に叱咤を入れて駆け抜ける。
しかし麓についてもまだ問題はある。この連れて来てしまった大量の魔物をどう対処するか、だ。
使役するにもヨロイオオカミ以外の魔物は何も情報がないわけで情報収集しようにも気が立った魔物達の前ではそれをする暇もない。
最終手段でシュラに制圧してもらおう、そう思い始めた時だ。
――空から黒一色の女性が舞い降りてきた。
「お前は…!」
忘れるわけない。黒い漆のような髪を靡かせる彼女の正体は。
「マシロ!!」
夢の中で散々急かしてきた亡世の支配者、マシロリバウドだった。
「砂漠王ゴブリオン」
砂漠王ゴブリオン。元々は砂漠を好むはぐれゴブリンが好奇心で砂漠での生活を試み、そして生活難に陥りそこから死ぬ思いをして生き残る術を身に着けた砂漠に生きる特殊なゴブリンに付けられた名称。砂漠ゴブリンはその派生でしかなく、砂漠王ゴブリオンが砂漠で行き倒れた女を拾って苗床にした末に生まれた砂漠環境に特化したゴブリンである。初代砂漠王ゴブリオンは既に寿命を迎えており、後の砂漠王ゴブリオンは砂漠ゴブリンの中で最も優れた者に与えられる名となっている。初代が砂漠で得物を捕らえるべく習得した人の欲望、もしくは生物の欲望を現実として具現化してしまう力は今では世代毎に衰えているものの、それでも現実に限りなく近い幻覚を生み出してしまう為、注意が必要。




