表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
RETURN ~少女好きの俺が悪者を倒す~  作者: 半裸紳士
悪討疾走編
8/81

微睡みの盗賊団

更新のペースだんだん落ちてきてるので明日から頑張ります。


8/20

大変間があいてててててて。すみません本当の本当に明日から頑張ります!


9/11

土下座が自然体になってしまいそうです。このページはこの日完成されました。

ふと意識が戻った俺はぼやけた視界を何度も開け閉めしているうちに仲間の安否が気になり周囲を見渡した。隣にセインが縛られて転がされている様だが、他の少女達の姿が見当たらない。


「シュラ…?テキスト…?」


呼んでみるが返事の一つも返ってこない。途端に皆が心配になってきた俺は立ち上がろうとして、初めて自分が縛られている事に気が付いた。


「何だ?何が起こって…!」


そう言ったところで、俺は部屋に充満する霧を見た。確かこの霧は、あの草原で…。

再び、俺の意識は暗闇に沈む。


「―――ター!」

「ん…んん?」

「マスター!お目覚めですか!?全く、お探ししましたよ?突然霧が深まったかと思えば皆さんいなくなるんですから!」


何度も何かにぶつかられる痛みに起きてみると視界いっぱいに映ったのはテキストだった。騒がしいけど強制的に眠らされる現状には持って来いの奴だな。


「ここは…?」

「あの草原からそう離れていない洞窟で、どうやらここは微睡みの盗賊団のアジトっぽいですよ!」

「微睡みの盗賊団?」

「はい!《睡魔》の加護を持った荒くれ者のみで構成された少々厄介な集団なんです!」


なるほど。つまりあの霧の正体はその《睡魔》の加護によるもので、俺達をここに捕まえているのがその微睡みの盗賊団と言うわけか。同じ加護を持った集団って事は《睡魔》の加護は中級以下って事になるな。

そんな話をしている間にも、どうやってかテキストが俺の手首を縛っていたロープを解いた。どうやら既にセインもテキストに助けられたようだ。マスターを差し置いて他の奴らを優先するとは誠に遺憾ではあるが、この際どうでもいいので忘れる事にした。


「それで、シュラ達は何処だ?」

「皆さんなら既に盗賊団長のところへ殴り込みに行きましたよ?」

「はやっ!!」

「特にシュラちゃんの殺意が物凄かったですねぇ」

「言ってる場合か!!早く案内してくれ!」


あの草原での見張りの際にテキストと色々話し合った結果、シュラの殺意と言うか敵意は一度牙を向けられると過激に反応してしまって歯止めが効かなくなると言う事が分かった。傷付けられるのがトラウマになってそう言う体質になる前例が他にもあるらしい。

確かにシュラは魔王によって精神的に大きな傷を負っているから筋は通っている。


「ええっと、確かこっちでした!」

「不安になる様な言い方するなよ」

「複数の魔力を感じるのでテキストさんの言ってる事はあってると思うよ」

「よし、行くぞ!」

「私そんなに頼りないですかマスター!?」


うるさいテキストは無視し、セインと共に淡く光る洞窟を駆ける。少しすると曲がり角が見えてきて、そこを曲がろうとした途端に人が飛び出してきた。


「へへっ!ここから先は行かせねぇぜ!死ねええええ!!」

「小物臭ぷんぷんし過ぎだろこいつ!?」

「任せて!」


短剣で切り掛かってきた盗賊下っ端から俺を守る様に前に踏み出したセインは上手く盗賊下っ端から短剣を取り上げると、後頭部に手刀を入れて意識を奪った。もしかするとセインは剣を扱うより素手の方が強いのではないか。そんな疑問を浮かべる程、スムーズな動きだった。

声を上げる事もなく崩れ落ちる盗賊下っ端を尻目に再びシュラ達を探すべく迷路の様な洞窟を駆け始める。何となく、何となくだが魔力が集まった場所がある事に気が付いた俺は既に位置を確把握済みのセインとアイコンタクトを交わして走る速度を上げた。


「シュラ!…シュラ?」


大きな空間に出たところでまずシュラの姿を発見する。何故か中央で仁王立ちしたまま動かなくなっていた。


「どうやら寝てるみたいだね」

「殺意に突き動かされてここまで来たはいいけど加護の力に屈したって感じだな…」


回り込み顔を覗き込んでみると見事に風船を作ってシュラは寝息を立てていた。仁王立ちで寝ているところを見るとどれほどまでに執念深いのかが分かる。

俺は苦笑しつつシュラを背負い、他の仲間の下へと急いだ。異世界に来てからは体を鍛えたりしていたお陰か重さなどは気にならなかった。これなら体力の続く限り走り続ける事が出来るぞ。


「シュラでこれならセインの仲間もやられてるかもしれないぞ!」

「その可能性は考えたくないけど、確かにあの睡魔の力は強力だ!油断ならないよ!」

「他の皆の位置は分かってるのか!?」

「それに関しては安心していいよ。レキシアとヒウラの魔力反応を同じ場所で感じる!もう少しだよ!」


どこを曲がっても同じに見える道をセイン先頭に駆け回ること数分。とうとうレキシアとヒウラを見つける事が出来た。レキシアは膝を突く寸前の体勢を保ったまま意識を失っていて、ヒウラは膝を突いてはいるものの倒れてはいなかった。

残るはマシロとメシア。マシロに関しては何の心配もしていないのだがメシアはどうなのか分からない。正直唯一シュラに攻撃を加える事の出来たメシアの潜在能力は計り知れない。あれでまだ全力でなかったのだとしたらメシアは相当の実力者だ。勇者一行でセインを抜けばダントツかもしれない。


「――つーかお前重くないのか、それ?」

「ん?何が?」


背中にヒウラを背負い、そのまた上にレキシアを背負わせたセインが平然として俺の返事に首を傾げる。訊いた俺が馬鹿だった。


「いや、それより…そろそろだよ」

「みたい、だな」


俺でもはっきりと分かる高濃度な魔力が先の道より漂っているのを感じる。肌に張り付く様なそんな気持ちの悪い嫌な魔力だ。俺は警戒の色をさらに濃くし、恐らく最深部であろう広間に足を踏み入れる。

加護の力は働いていない。睡魔が襲って来ないのが何よりもの証拠だ。

それより俺は長身の男と対峙しているメシアとマシロに気を回した。幸い、二人はまだ眠ってはいなかった。メシアが満身創痍で無ければ安心出来ただろう。


「メシア!」

「セイン!それにツヨシも!」


セインの呼び声にバッと振り向くメシア。その表情は勝利の確信を物語っていた。それ程までにセインの力を認め、信頼しているに違いない。俺は近くの壁にもたれ掛からせる様にシュラを寝かせると、何もしていなかったのか二人とは少し離れたところで棒立ちしているマシロの隣に歩み寄った。


「現状は?」

「………」


やはり何も喋らず、ただ首を横に振るマシロを見てメシアが押されている事を把握する。メシアを見れば一目瞭然なんだが。


「おやおぉや?これはこれはこれは、皆様揃いに揃ってよくぞここまで辿り着きましたね?お褒め、したいところですが…どうやらそうもやってる場合ではない様ですねぇ!」


長身の男が金髪の髪を靡かせ両腕を盛大に広げ、そして嘆きを声に乗せて叫んだ。なんだこいつ、と言う気持ちでいっぱいになるがこんな事を気にしていたらこの先持たないに違いないと判断し、その気持ちを抑え込んだ。


「お前が、ここの親玉か!」

「そうだとも。そして、ここが僕の!安らぎと微睡みと静寂に守られた聖域さ!」

「意味不明な御託はいい。何で俺達を眠らせてここへ連れてきた?」

「僕は、いや。僕達はねぇ、寝ている人の変化を見るのが好きなんだ」


口角を吊り上げて背筋に寒気が走る笑みを貼り付ける長身の男。俺はそれを不愉快と感じ、少し表情を歪ませた。


「理由になってねえぞ!」

「人の話は最後まで聞きたまえ」


何とも腹立たしい態度で言われて怒りに震える俺を鼻で笑った長身の男は不意に恍惚とした表情を浮かべて口を開いた。


「ああ、それでね?僕達は人を眠らせるとこうして君達馬鹿みたいにこの聖域へと運び込むんだよねぇ。そして、寝ている人に様々な行為を仕掛ける」

「何…?」

「そう、そうそうそう、そう!寝ている人!寝ている人は良いよねぇ、最高だよねぇ!?君達は知っているかなぁ?寝ている女の人は犯されると最初は反応が薄いんだけどだんだん色んな表情色んな声色んな動き色んな色んな色んな色んな!色んな、反応を見せてくれるんだよぉ!でね、起きると決まって涙で顔をぐしゃぐしゃにして泣き喚くの。酷い、助けて、嫌、止めて、どうして、怖い、死にたい、殺して、殺せ、殺せ、殺せえええええ!!起きている人はうるさいし聖域には不要なんだよねぇ?だから、君達はここで死んでもらう。いいね?」


言葉を失う。馬鹿げてる。会話が成り立たないし情緒不安定極まりない。おまけに破綻している。こいつは、救いようがない程の下劣なクズで外道で最低な悪だ。

だから、俺は。


「断る」


否定した。正義は悪の言葉を受け入れてはいけない。故に俺はこの男を認めるわけにはいかない。

表情が完全に消えた長身の男が俺を標的に定めると腰を深く降ろす。そして一言。


「死ね」


刹那、長身の男が姿を眩ませ俺の眼前に現れた。鼻柱に叩き込まれそうになった拳が、突然横から伸びされた小さな手によって受け止められてしまう。

誰だ、と確認するまでもなく隣にいたマシロの手だと理解する。今まで何の反応も示さなかったマシロが俺へ危害を加えさせない為に手を出したのだ。


「不快だよ。君は僕の加護が効かないし何より僕の拳を止めた止めた止めた止めた!!ああ!極刑だよ!死んでしまえ」


第二ラウンド、微睡みの盗賊団長バーサス亡世の支配者の戦いの幕が切って降ろされた。

『召還』の加護

女神アルテシアより与えられる上級の加護。

その名の通り、召喚を行う加護。『使役』の様に絶対的な関係は築けず、

召喚された側が『召喚』の加護を持つ者を認めない限り契約を交わす事は出来ない。

さらに必ず召喚出来ると言うわけでもなく、失敗する事もある。

魔法陣を描いて召喚すると成功率が上がり、より強力な者を召喚出来る。

国が持つ特殊な技法と併せて使えば異界からの召喚も可能となる為、国に重宝される加護でもある。

異世界の勇者が召喚されるのは大体この加護を持った者の力で、『召喚』の加護は王族が所持している場合が多い。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ