ロイゼシュタインカースグラビテッドウォンリハイドゼクスヴォルライン
どうしてこうなったの一言に尽きますね。
◇
それぞれ不安を抱きつつも、一か八かで空間の裂け目を通る。
どこもかしこも真っ暗で何も見えないが、ひたすらに前へ突き進んでいるとやがて終点と思われし裂け目に辿り着く。抜けてみると壁にどでかい穴の空いた広間が眼前に広がった。
結果は、成功だった。
「うんうん!間違いない、ここだよ!」
「これ、シュラがやったんだよな…」
「目からビーム…恐ろしいですねぇ…」
俺とテキストが遠い目で穴を見つめているうちにシュラは卵を取りに行ったらしく、ユリカ達も穴から外へ出てしまっていた。
取り敢えずシュラの様子でも、と階段へ向かおうとした時、アキラが急に俺の名を叫んだ。
「ツヨシ!なんかやばいのいるぞ!」
「マジ…?」
呼ばれたから穴から出てやばい奴の正体を確認する。
そして絶句した。
「何だよあいつ!?」
「俺にも分かんねえよ!」
「なんだか、とても邪悪な力を感じます…!」
アエスティーが何かを感じ取ったらしく苦しげな表情を浮かべる。
確かに、あれが邪悪でない筈がない。俺にでも理解出来た。
3メートルはあるだろう背の高さで漆黒の肌。頭部から禍々しく生えた2本の角。背中から生えた蝙蝠のような両翼に細長い尾。筋骨隆々としていて紅い瞳と鋭く生え揃った牙と言った化物要素を固めたような存在。
勝てる気がしない。
「まさか、悪魔っ…!」
ユリカは心当たりがあるらしい。悪魔のような奴は色々見てきたけど、本物の悪魔は初めて見た。
「悪魔種で間違いないですが、全くの新種みたいです!どの記録にも載ってません!」
テキストですら分からないとは驚いた。使役の選択肢はここで潰えた。残るはここの戦力でどうにか対処する選択のみ。
皆が戦闘態勢に入り始めた頃、卵を取りに行っていたシュラも戻ってきた。
しかし様子は慌ただしい。
「ツヨシ様!大変だよ!卵が、卵が…!」
「卵がどうした!?」
「もう、生まれちゃってたんだよ!」
「何っ…!?ってそうか、3ヶ月も立ちゃ卵も孵るか…!」
そこで嫌な予感が過ぎる。ただただ俺達の事を見据えている悪魔が、その卵から孵った存在なのだとしたら…そんな、予感が。
「まさか、な」
「――そのまさかだよ」
ドクン、と心臓が跳ね上がる。忘れる筈もない、この声は。
「お前は、あの時の」
「覚えていてくれたんだ?また会えるとは思っていなかったよ、ツヨシ君」
俺を瀕死に追い込み、挙げ句にはシュラを攫った俺達を分断させた張本人――!
「まだ生きてやがったのか…!!」
「死んでてほしかったかい?でも、残念ながら僕は死ねない身でね。あ、勿論痛みは感じるよ?――大嫌いだけどね」
身も凍るような殺気に当てられて動けなくなるどころか声すら出せなくなる。
皆も俺程ではないが影響を受けているらしく膝を突いて息を上がらせていた。その中で平然としてられるのは、殺気を放った男と筋骨隆々悪魔と、シュラだけだ。
それに気付くと男は温厚さを装った不気味な目を冷酷なものへと変え、シュラを睨み付けた。
「……君か」
「生きてたんだ」
「言っただろう。僕は不死身だ」
「可哀想」
「何…?」
「痛いのに、楽になれないんでしょ?だから可哀想って」
「なめるのも大概にしろよ、ガキ…」
シュラの言葉でだんだん本性を露にし始める男。シュラとの相性は最悪みたいだ。
だが途中で我に返ったようで咳払いすると不敵な笑みを浮かべだした。
「丁度いいや。そろそろこいつのテストがしたかったところなんだ」
「その黒いのは何?」
「僕にも悪魔と言う事しか分からないよ。だってこいつは君が持っていた卵から孵った奴だからね、正体なんて知った事じゃない」
やっぱりそうか。俺もそんな気がしていたんだ。
「ロイゼシュタインカースグラビテッドウォンリハイドゼクスヴォルライン!?」
「ロイゼっ…何だって?」
まだ引き摺ってたのかその名前!皆も困惑してるからその名前は止めなさい!
「許せない…ロイゼシュタインカースグラビテッドウォンリハイドゼクスヴォルラインをこんなゴリラに変えちゃうなんて!やっぱりあなたは私が倒す!!」
雲行きが悪くなってきました。
「魔王の力」
可能性に満ちた力。元々は邪悪な力で破壊専門であったが、魔王となったシュララの魔王の種による侵食を逆に食い潰す精神力によって性質が変異してしまっている。ぶっちゃけチート。




