砂漠王にロックオン!
明けてしまいました!おめでたい事ですね!
早速ですが新年早々、最新話をお届けしたいと思います!貴重な時間はここで潰していってください!
◇
目が覚める。一撃で気絶してしまうとは何とも情けない。
幸い、砂漠ゴブリンは俺を殺さずに捕獲する選択を取ったんだろう。開いた視界に映ったのは広間らしき空間だった。
何か前にもこんな事があったような気がする。
「やっとお目覚めか、ツヨシ」
「その声…アキラか?」
「正解」
背中合わせで縛られているらしい。背中から感じる体温に失礼ながら不快さを少々抱いてしまう。
「どうやら俺達捕まったみたいだぜ」
「見りゃ分かるけどよ、アキラまで何で捕まってんだよ?」
「アエスティーを守ろうとしたら罠に引っ掛かってこの様さ」
「アエスティーは無事なのか?」
「無事だが…今はちょっと危ないと思う。アレを見てみろ」
アキラが言うアレ。それはきっとうじゃうじゃといる砂漠ゴブリン共を見下ろす巨体ゴブリンの事だ。
さしずめ、ゴブリンキングと言ったところか。
「おいおい…?まさか、生贄にしようってんじゃないだろな…?」
数匹の砂漠ゴブリンに抱えられてゴブリンキングの前に差し出されるアエスティーを見て俺は冷や汗を流す。
このままではアエスティーがやられてしまう。色々な意味で!
しかし助けに行こうにも俺に縄を引き裂いてあの砂漠ゴブリン共に突っ込む程の力はない。どうしたものかと悩もうとした瞬間に背後にいるアキラなら可能な事に気付く。
転生してチート能力も授かったアキラならこんな状況なんて事ないはず。
「アキラ」
「分かってる」
静かに、引き裂かれる縄。どうやったのか問い質したいところだが今はそんな場合ではない。
解放された俺は真っ先に砂漠ゴブリンの群れに突っ込んでいくアキラとは別に、近くで死んだフリをしているっぽいテキストを拾い上げた。
「テキスト!」
「……ハッ!?な、何でしょうか!」
「今すぐあのでっかいゴブリンの情報を洗いざらい教えてくれ!」
「でっかいゴブリン……ああ!砂漠王ゴブリオンの事ですね!?」
「急に世界観ぶっ飛んだ名前になったな!?」
名前の雰囲気的には巨大なロボットのイメージだ。喋ったりもしそうだなーとくだらない思考に集中しそうなところでテキストが砂漠王ゴブリオンのページを開いてくれた。
「情報オープン!ですよ!」
砂漠王ゴブリオン。元々は砂漠を好むはぐれゴブリンが好奇心で砂漠での生活を試み、そして生活難に陥りそこから死ぬ思いをして生き残る術を身に着けた砂漠に生きる特殊なゴブリンに付けられた名称。砂漠ゴブリンはその派生でしかなく、砂漠王ゴブリオンが砂漠で行き倒れた女を拾って苗床にした末に生まれた砂漠環境に特化したゴブリンである。初代砂漠王ゴブリオンは既に寿命を迎えており、後の砂漠王ゴブリオンは砂漠ゴブリンの中で最も優れた者に与えられる名となっている。初代が砂漠で得物を捕らえるべく習得した人の欲望、もしくは生物の欲望を現実として具現化してしまう力は今では世代毎に衰えているものの、それでも現実に限りなく近い幻覚を生み出してしまう為、注意が必要。あとその力がなければ余裕で倒せると思われがちだが砂漠で生きてきたゴブリンは他のゴブリン種とは違い戦闘面でも引けを取らないので油断は禁物である。ちなみに砂漠ゴブリンの中にも砂漠魔法ゴブリン、砂漠弓ゴブリン、砂漠剣ゴブリン、砂漠盾ゴブリンとそれぞれのジョブがある。砂漠王ゴブリオンは全てのジョブを難なく熟せるオールラウンダー。
「馬鹿強い」
「ゴブリン舐めんなごらああ!ですね!」
「だがしかーし!俺には最強の切り札がある…」
「速いですね」
「うるさい燃やすぞ」
「そんな酷いですぅ!」
隣でショッキング!と叫びながらくるくる回って躍るテキストを視界から除外して手を伸ばす。その先には砂漠ゴブリン相手に無双するアキラを何コイツやばいみたいな顔で見下ろしている砂漠王ゴブリオンが。
これからする事はお馴染み、使用回数は少ないけど素晴らしい効能を持つ加護、使役のだ。俺の本気を見せてやるぜ。
「さあ、抗ってみせろよ!!」
続く。
「幸福障壁」
アキラが転生の特典してもらったチート能力。この能力を発動している間、前方に放たれる謎の幸福オーラでアキラを含めて自分より後ろにいる者は皆不幸、もしくは傷付くような事がなくなる。なんかこう、オーラに害となるものが触れるとふわぁっと受け流してしまったりしゅぴっと消し飛ばしてしまったりする。
実際はアキラの思うがままにプラスになる事であれば何でも出来ると言う能力です。例えば事象をねじ曲げて起こる筈だった結末とは違う結末にすり替えたり?




