本当の心
お久し振りです。この一言に尽きますね!
◇
二振りで一つの魔剣。それは間違いなく氷結の魔剣ラセリアと水神の魔剣フォドゥムだ。この二本さえ手に入れればこの旅が完遂される頃には私の手元に全ての魔剣が揃う事になる。
ああ、なんて素敵な事か。あれだけ探すのに苦労していた魔剣がこうも容易く見つけられるとは思いもしていなかった。
これも全てツヨシのお陰に違いない。感謝してもしきれない程に私は恩を感じていた。
そして、その恩の裏側で私の図々しさがおぞましい笑みを浮かべていた。魔剣への近道であるツヨシを利用させてもらおうと言う図々しさが。
でもそれは仕方のない事。魔剣使いを名乗る限り己を貫き続けなければならないのだから。つくづく、面倒な試練だ。
私はニヤけた顔を隠す事なく自我を乗っ取られて力任せに両の魔剣を振り回す男に斬り掛かった。
反転。
魔剣なんて捨てて自由になりたい、変わりたいと思った事はないわけではない。だけど力を求めた以上、魔剣からは逃れる事が出来ない。気付けば私は最強以外を諦め、ただ魔剣を探し求めて彷徨い続けていた。
そんな嫌な自分で在り続ける日々を淡々と送っていた私はある日、魔剣の在処を知る一人の男に出会って何処か変わり始めた。最初は大した力も持たず仲間の力に頼ってばかりの男は見ていてとても腹立たしかったけど、一緒に過ごしていくうちに不思議と惹かれていっているのが分かった。
男の、何度やられても起き上がって立ち向かうその姿に、私が求める真の強さを垣間見た気がした。
最強とは何かと考えさせられ、男を観察していると次第に一つの答えに辿り着いた。
その男の周りには、何時も誰かがいたと言う事に。
私は気付いた。気付かざるを得なかった。
真の強さとは――決して諦めず、立ち向かい続ける事。そして、仲間を頼る事なのだと。
最強を妄信し、孤独を貫いてきた私にとって、周囲の仲間に恵まれて如何なる困難にも立ち向かう男の――ツヨシのその姿はとても眩しく遠く駆け離れた存在に感じられた。
もし出来るのなら私もツヨシの隣に立って一緒に戦いたいと、今は思っている。でも私にその資格はないんだろう。ツヨシの良心を利用し、最強なんて言うくだらない妄想を追い続ける私には。
泣きたくなる。
苦しい。
もうこんな想いはしたくない。
でも、私は逃げられない。魔剣の試練は私を逃がしてはくれない。今も、奴は私に語り掛けてくる。
――もっと力を。
嫌だ。
――もっと力を。
やめて。
――もっと力を。
いや。
――もっと力を。
だれか…。
――もっと力を。
たすけて!
「ユリカ!!」
今一番会いたい人の声が聞こえた。
「陣石」
様々な陣を展開する時に使われる貴重な石。一度使うと力を失うが便利なのでよしとされている。
即席召喚陣や召喚武器召喚陣などによく使われたりする。




