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RETURN ~少女好きの俺が悪者を倒す~  作者: 半裸紳士
悪討疾走編
7/81

パーティー皆が加護持ち

私は過程を吹っ飛ばす『過程飛ばし』の加護を持っています(適当)。

前回の話の正義云々天使云々はTRPGシナリオの毒入りスープで登場する少女が関係しています。

本編には一切登場しないと思うのでご安心下さい。

「ねえ、思ったんだけどなんでツヨシは俺達が王都に戻るって分かったの?」


陽が落ちてきて、そろそろこの辺で野宿でもしようかと思い始めた頃、ふとセインがそんな事を尋ねてきた。そう言えばまだテキストの事を話してなかったと思い出した俺は足を止めてすぐ近くを浮遊していたテキストを手元に呼び寄せた。


「ああ、まだ話してなかったな。実はこう見えてもテキストは凄い本でな、契約者である俺のみが過去から現在までの情報を確認したりする事が出来るんだ」


それ以外の事も分かるんだが、敢えて俺は黙っておいた。変に優秀過ぎると後々面倒臭そうだと判断したからだ。

それに嘘は言ってないしな。事実、俺はテキストから勇者は毎回アレチェスカ王国から選抜されると教えてもらっている。


「それで俺達がアレチェスカ王国で魔王討伐の命を受けたと分かったんだ。凄いね、テキストって」

「へへん!もっと褒めて下さっていいんですよぉ?」

「調子に乗るな、このア本」

「今アホと本掛けて言いました!?いくらマスターと言えども私、許しはしませんよ!」

「さーて、薪の代わり見つけたし火点けるか!」

「いやあああああ!申し訳ございませんでしたあああ!!」

「あはは!」


俺とテキストのしょうもない茶番を見てセインは愉快そうに笑った。何が面白いのかは分からないがそこは異世界人感性の仕業なんだと把握しておこう。

本格的に暗くなってきたのを確認した俺はマシロが背負うバッグから薪を幾つか取り出して地面に纏めて置いた。そして手を翳して詠唱する。


《炎の精よ。我が呼び掛けに応じその力をここに示せ。――闇を払い光を灯さん》

「フレアライト」


掌より放たれた応用の利く下級魔法の炎は落ちる様に薪に向かい、そして辺りを灯す光となった。


「わああ、綺麗!綺麗だよ!」

「何だ、初めて見るのか?」


シュラがはしゃぐ様を見てレキシアが首を傾げて尋ねる。シュラはずっとあの廃城に監禁されていたから焚き火など目にした事が無いんだろう。まあ魔法の炎の焚き火、と言う点では俺も初めてなんだが。


「シュラはずっと魔王の城に監禁されていたんだ。知らないのも当然だよ」

「…納得し難いものがあるが、なるほど。それならこのはしゃぎ様も頷ける」

「私も最初は同じ様にはしゃいでいた記憶があります」


ヒウラの言葉に俺も頷く。冒険して、暗くなると仲間と淡く光る火を囲んで談笑する。誰だって最初は興奮するに決まってる。

俺も前の世界で初めてキャンプをした時、焚き火を目にして興奮した覚えがある。今となっては懐かしい思い出だ。


「そう言えばさ、ツヨシ達の出身って何処なんだ?」


メシアの質問に、皆は確かにと言った顔をする。参ったな、この世界に俺の故郷はないぞ。

この世界に日本と似た国があればいいのだが。取り敢えず東とでも答えておこう。


「俺は東の方だな。今はぶらりと旅をしてる」

「東と言えば、東国ジャポニーか」


東国ジャポニーってもしかしてジャパン的な立ち位置なのか?どこの世界でも日本はジャパンなのか?


「ああ」


取り敢えず返事しておく。後でこっそりテキストに東国ジャポニーについて聞いておこう。


「東国ジャポニーと言えば―――」


それから騒ぎに騒いで皆が寝静まった後。俺は皆から少し離れた岩に腰を降ろし、異世界で初めての仲間達との野宿の余韻に浸りながら空を見上げていた。流石に野宿で全員が寝るのは危ないと言う事で、現在交代で見張りをしている最中だ。当然ながらテキストも寝ずに俺の手元にいる。

見張りをしている間ずっと空を眺めたり周囲を警戒したりするのはあまりにも暇で有意義では無いと判断した俺はテキストから様々な知識を啜らせてもらっているんだ。結果、知識を得れるしとても有意義だった。


「マスター。マスターは、王都に行った後はどうするつもりなんですか?」

「そうだなー。まずは城下町の一番大きい店でこれまで手に入れた物をある程度売って、それからめぼしい宿を探すかな」

「宿ですか…私の知識ですと一番めぼしい宿でもシド鉱石一つ分の金額で五週間程宿泊出来るそうですよ!」

「マジで!?そこまで価値あるとは予想外過ぎたわ!」

「しかもそれが何十とあるわけですからとんだ大金持ちですよねぇ」


こんな風にテキストとのふとした会話から知識を得たりと、俺は時間を潰しているわけだ。

自称魔術本、奇跡の書エトセトラなテキストは未来を知り得ないが現在から過去までの事なら何だって知っているらしい。だからどれだけ話してもその知識が膨大過ぎて得られる知識に制限がない。マシロの事だってテキストから教えてもらって使役する事が出来たわけだし、テキストには感謝してもしきれない。うるさいけど。


「…思ったんだけどさ。俺は加護持ちってもう知ってるからいいんだがシュラや他の皆って加護とか持ってるのか?」

「勿論ですよ!驚いて聞いて下さい!」

「聞く前から驚いてどうすんだよ?驚いた時どう反応すりゃいいんだ」

「おっと、これは失礼致しました!」

「で、どうなんだ?」

「えっとですね。簡潔的に言うと、このパーティー全員が加護持ちと言って間違い無いでしょう!」


やっぱりそうか。シュラも加護持ちだったのは驚いたが、勇者一行は当然と言ったところだろう。加護持ちはエリートと呼ばれるこの世界で加護を持っていない底辺が勇者の仲間として活躍するには無理があるからな。

しかし、そうか。シュラも持っているのか。シュラ本人は気付いてない様だが、一体どんな加護が付いているんだろうか。


「シュラまで加護持ちと来たか…一応だ。全員の加護を把握しておきたい」


知っておいて損はない筈だ。全員の加護を把握しておけばいざと言う時に役立てる事が出来るだろうし。


「了解しました!それではシュラちゃんから言っていきますね!」

「頼んだ」

「まず、シュラちゃんの加護は『上限解放』の加護ですね!これは常時発動型で、シュラちゃんが成長限界に達せば自動で加護が作用して成長限界が引き延ばされ続けると言った加護でございます!これも最上級ですよ!」

「限界が無いとか何処までも強くなるって事じゃねえか!」

「そうなりますね!いやはや、私もシュラちゃんには驚かされるばかりですよぅ!」


つまりシュラを『改造』で全ステータスを最大まで強化すれば『上限解放』の加護が発動して、さらに強くなれるわけか。これは視野に入れておくべきだな。


「次はマシロリバウドことマシロちゃん。彼女は『人化』の加護ですね!これは中級で最も自然界で確認される事の多い加護ですよ!」

「普段のあの姿が本来の姿じゃないのは分かった。悪いけどあんまり役には立ちそうにないな」

「そうですねぇ。さて、お次はセインさんです!セインさんは『勇者』の加護、『才能』の加護、『寵愛』の加護、『守護壁』の加護、『不屈』の加護と盛り沢山の加護がありますよ!馬鹿げてる程に愛されてますね!」

「本当に馬鹿げてるぞ!?何なんだよその数と凄そうな加護は!」

「えっと、順に説明致しますと…『勇者』の加護は正義の心の強さに応じてステータスが変動したり聖剣を扱う事が出来たり対魔属性が付与されたりする加護で、『才能』の加護はありとあらゆる事を最初から難なくやり遂げられる反則級の加護で、『寵愛』の加護は自然の悪しくない生き物達に好かれる体質になる加護で、『守護壁』の加護は守りたいと言う想いに応じて防御力が変動する壁を好きな場所に展開する事が出来る加護で、『不屈』の加護はどんな状況でも諦めず挫けない正義の心を支える加護、とまあこんなもんところになりますかね?どれも最上級クラスですね!」

「チートじゃねえか…流石勇者だぜ」


呆気に取られていると、テキストがまた次の加護持ちを言い始めた。まだ切り替え出来てないぞ。


「次はですね、ヒウラさんの『魔力集中』の加護です!『魔力集中』の加護は『上限解放』の加護と同様、常時発動型でして魔法を使っていない間は常に魔力を貯蔵し続け、極めて濃厚な魔力に変換して魔法の威力を何倍にも増幅させる上級クラスの加護なんですよ!」

「もう上級も最上級も変わらない気がしてきたぞ…」

「さてさてお次はレキシアさんの加護、『剣舞』の加護ですね!『剣舞』の加護も常時発動型で剣を振るえば振るうほど五感が研ぎ澄まされ、剣の切れ味も一撃ごとに増していく正しく剣に生きる者の為の加護なのです!」

「使ってるの大剣じゃなかったか…?」


今は聖剣と一緒に埋葬されているが。さて…とうとう最後の一人、メシアの番がやって来た。


「最後はメシアさん!彼女の加護は『罪殺し』の加護と言って、発動して攻撃を加えれば加える程に相手の中に眠る罪を肥大化させ、最後には自分の罪深さを自覚させて戦意を根こそぎ殺してしまうある意味恐ろしい加護です!メシアの名に相応しいのかどうか丸一日頭を悩ませたくなる様な加護でございます!」

「戦意を殺すってもう二度と戦う気が起らないとか、そんな感じのか?」

「まさにそれなんですよぅ。しかもメシアさんの方に戦意があれば戦意を失った者は抗う事が出来ず殴り殺される、そんな状況を『罪殺し』の加護は生み出せるのです!」

「実質上手く使えば戦闘最強じゃん…」

「まだ皆さんは加護持ちとしては未熟ですから不安がる事はありませんよ。しかも今は仲間なので狙われる心配ありません!」

「ずっとその方が俺としては嬉しいな」


そんな話をしていると、突然辺りを霧の様なものが漂い始めた。皆起きる様子はないし、取り敢えず起こして状況確認をしようかと思い重い腰を上げたその時、不意に頭がクラッとした。


「な、んだ…?」

「マスター!?どうなされました?マスター!」

「ぐ…意識、が……」


耳元でテキストが叫び続けるが、一定の間隔で波の様に訪れる眠気の仕業で殆ど何も聞こえない。俺は何度も頬をひっぱたたこうと体を動かそうとするが、力が入らず腕を上げたところでボトッと落ちる様になった。

動けるうちに何とかする手段はないか必死に探るが何も考えつかないしそもそも半分寝た脳じゃ考え事もまともに出来やしない。そうして、薄れていく意識の中で俺は声を聞く。


「馬鹿共六人、我が微睡みの中へごあんなぁーい」


世界が暗転した。

『改造』の加護

ツヨシが女神アルテシア様から与えられた最上級の加護。

その名の通り、様々な改造を施せる夢の様な加護。

改造し過ぎると対象の肉体が崩壊しかねないので一人三回までと制限がある。

ちなみに物も同じ条件で改造する事が出来る。

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