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RETURN ~少女好きの俺が悪者を倒す~  作者: 半裸紳士
無名国編
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軽率な行い

実は裏世界云々は当初の予定にはありませんでした。


シュラを失ったショックでその場から動けないでいると、不意にテキストが視界に飛び込んできた。


「悲しんでいるところ失礼しまっす!」

「こんな時に何ふざけてんだ…?」

「いえいえ、地図上にシュラちゃんの位置情報を取得したのでお知らせしようかと思ったまでですよ!」

「え、あれ、シュラ無事なのか!?」

「無事とは言い難いですが、少なくとも死んではいませんよ!」


一気に希望が膨れ上がる。同時に一刻も早くシュラと合流しなくてはと言う焦りも復活する。

軽くなった腰を上げ、テキストを掴むと俺は開かれたページに目を通した。


「此処は……船着き場に近い建物?」

「そうですそうです。しかも付近には核も存在しているのでついでに壊しちゃいましょう!」

「そうだな、早速向かうぞ!」


民家を飛び出して船着き場へと全力疾走。息が乱れてこようが関係ない。今、こうしている間にもシュラに危険が迫っているのだ。止まってなんかいられない。

俺の地面を蹴る音だけが響き、周りに音がしないと言うのはやはり不気味だ。しかも周囲には異質者の気配すら感じられないときた。ますます不安を募らせてくる。

結局異質者と遭遇する事なく船着き場に着いてしまった。一度立ち止まり、息を整えつつもう一度テキストに地図を見せてもらう。建物は俺から左手の方角に位置していた。

首だけをその方角へ向けて建物の存在を確認しようとして、俺の動きはそこで固まった。異質者がいたのだ。


「明らかじゃねえか…」

「結構数いますねぇ…」


建物へ数体の異質者が入っていくのを目撃した俺は出来るだけ周囲の警戒をしながら建物付近の物陰に身を隠した。首だけを覗かせ、建物を見上げる。

シュラがいると思われる建物は展望台の様な形をしていて港全体を見渡せるくらいの高さがあった。侵入するならまだ別の異質者の来る恐れのある出入り口より最上階だと判断した俺は周囲に異質者がいないかを確認した後、展望台へ近付いてテキストに協力してもらい最上階へと飛んで移動した。


「後は下に降りるだけだな」

「一応降りる時も警戒しておきましょうね」

「分かってる」


階段をなるべく足音を立てないようにして降りて下の階を覗く。シュラや異質者の姿は見当たらない。

だがその代わりに核を見つける事が出来た。先に潰しておこうと俺は何も考えずに部屋に入り、鉄拳の詠唱を始める。


《鉄の精よ。我が呼び掛けに応じその力を示せ。――砕くは障害たる敵》

「鉄拳」

「あ、ちょっとま」


少し俺から離れて下の階を覗きに行こうとしていたテキストが詠唱を終えて鏡を破壊しようとする俺を止めようと停止の声を上げるが時既に遅し。俺の鉄拳は金属音を立てて鏡を破壊してしまった。


「ななな、何してるんですかマスター!?今壊しちゃったりしたら異質者に気付かれてしまいますよ!!」

「……しくじった!!そこまで考えてなかったわ!!」

「冷静に考えれば分かる事ですよねぇ!」

「そこまで余裕無かったのか俺は…!」

「って言ってる場合じゃないですよぅ!さっさと隠れないと!」


慌ててベッドの下に滑り込むようにして隠れる。この部屋は監視などを行う人の為の休憩室なのだと隠れてから気付いた。

俺が隠れたのと同時に下の階から異質者が一体部屋の様子を覗きに来る。そして特に深く探す事なく部屋の中を歩き回った後、そのまま下の階へ戻っていった。

安堵の溜め息を吐き、俺とテキストはベッドから這い出る。そしてふと顔を部屋の入り口へ向けて俺は背筋が凍り付く感覚に襲われた。異質者が、まるで俺達がいたのを知っていたかのように下の階へ続く階段から顔だけを覗かせて見ていたのだ。


「は、はははは……くっそ!!」

「知能の高さはあちらの方が上でしたね?」

「悔しいけど認めざる得ない!逃げるぞ!!」

「どうやってです!?」

「こう、するんだよ!!」


こちらへ迫る異質者から逃げるにはもう床を破壊するしかない。テキストに触れて魔力を送り込み、鉄拳を使用する。

本来の俺は詠唱をする事でしか魔法を使えないが、こうしてテキストを通じる事で詠唱を飛ばしてしまう事が出来る。所謂上級テクニックである詠唱破棄を擬似的に行えるのだ。

ただし、メリットばかりではない。この方法には魔法の威力が通常より下がってしまうと言うデメリットがもれなく付いてきてしまう。だからあまり使えたものではないのだが、今回は別だ。

俺は先程使った鉄拳により床が脆くなっているのを知っている。知っているからこそ、その弱った部分に鉄拳で攻撃を加える事で床を破壊した。幾ら威力が下がっていると言えども元々が高威力の魔法だ。脆くなった床を破壊するなんてのは造作ない。

鉄拳をぶち込んだ部分から亀裂が入り、床が崩壊する。そこに便乗して俺は下の階へと逃げる事にしたのだ。

だが、その先で俺は絶望する事になる。


「―――嘘、だろ」

「ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

「ぅぅぅぅぅぅぅぁぁぁぁぇ」

「ぃぁぃぁぅぅぅぅぅぁぅぅ」


目の前に広がる、異質者どもの群れに。

「バターサンド」

名の通り、バターを挟んだパン。焼き立てが食べ頃。

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