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RETURN ~少女好きの俺が悪者を倒す~  作者: 半裸紳士
無名国編
64/81

独創魔法

うまい棒はたまに食べるとまいうー。


「異質者って奴らの情報って何かないのか?」

「残念ながら裏世界で異質者と絡んで生存したと言う例が全くないので情報と言った情報は無いに等しいですねぇ。強いて言うのであれば彼らとの接触は極力避けた方がいい、と言う事くらいでしょうか?」

「そんなにシビアなのか…逃げて正解だったな」


屋根から此方に気付かずただのそのそと歩き回る異質者を見下ろしながらテキストに情報を求めるが、あまりにも未知数な存在過ぎて異質者についての情報は何を得られなかった。

しかし、どうやらこの裏世界は床などのテクスチャーを抜けて辿り着くような優しい場所ではなくもっと別の某静かな丘などに登場する世界そのものが変わってしまうタイプのものであったらしい。

前者は前者で地面の中にいる状態で戻れなくなるのも嫌だが、後者も無論いいものではない。


「ちなみに攻撃するとどうなる?」

「裏世界は本来現世とは関わりを持たない世界なので私には知り得ない事なのですが、裏世界での過程を除くのであれば異質者に殺された者は肉塊もしくはバラバラアートと化して現世に戻されると記録されています」

「うわぁ…」


異質者に害を与えた者の末路を聞いてシュラが眉を顰めて声を漏らした。自分では分からないが俺も同じ顔をしているんだろう。

時折屋根から屋根へ飛び移り、テキストの分析した地図に示してある一つ目核の場所へ到着する。どうやら民家の中にあるようだ。


「ここが核のある民家だな。どうする?俺が先に行こうか?」

「私が行く。ツヨシ様に何かあったら大変だもん」

「シュラ……分かった。奴らがいたら無理せず教えてくれ。『使役』の加護で呼び戻す」

「うん、任せて」


既に気持ちを切り替えたシュラが真剣な表情で先に行くと言うので意外とすぐに折れた俺は何時でも加護を発動出来るように構えて待つ事にした。

シュラは真下に異質者がいない事を確認すると、雷属性の魔力を実体化しワイヤーフックの代わりにして降りていった。そして再度周囲を見渡して、オーケーのサインを出した。

俺はテキストと顔を合わせて頷くとテキストに掴まって飛び降りた。普段浮いてるただの知恵本であるテキストは曲がりなりにもアルテシア様の贈り物。魔力を送れば耐久力も浮遊力も強化されてこう言う使い方も出来る。

ここまでの旅の間にこの事を教えてもらった時は早く言えよと思った反面、そう言えばアルテシア様から貰ったものだった事を思い出した。

元気にしてるかな、アルテシア様。


「よし、中に入ろう」


無事にテキストを利用してでの滑空と着地を成功させた俺はそそくさと民家の扉に近付きドアノブに手を掛けた。シュラが俺の言葉に頷くのを尻目に、ゆっくりと扉を開く。幸い鍵が開いていたので手間が省けてよかった。

中は何の変哲もない空間が広がっていた。丸いテーブルに三つの椅子。キッチンに写真や花などの飾り物。到底ここに核があるとは思えなかった。

見る限り核らしき鏡は見当たらないので消去法で残るは二階のみ。俺は二階に上がる前に目に付いた写真

を手に取ってみた。

その写真は二人の大人と一人の子供が写っているのだが、何故だか顔だけ黒く塗りつぶされていた。不気味に思い、写真を元あった場所に戻し、いざ二階へ上がろうと階段に足を掛けたその時だった。


「ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

「ぅぅぅぁぁぁぅぅぅぁぁぁ」

「ぅっぅっぇぇぇぇゅ」


突然、誰も座ってなかった筈の三つの椅子に音もなく異質者が現われた。ただ何もない丸いテーブルを囲って向かい合い、不快な声でお互い何かを言っているが俺達には理解の出来ない会話だった。


「会話……しているのか…!?」


身が凍るような感覚に襲われつつ、俺は硬直した体を必死に動かそうとするが恐怖と理解不能な状況に対する混乱のせいで身動き出来なかった。

三人の異質者はそれから少しの間、会話もどきを繰り返してゆっくりと立ち上がった。振り返り、階段付近にいる俺達へとふらふらとした足取りで寄ってくる。

このままでは不味い。非常に不味い。頭の中で危険だと警告音が鳴り響くが体が言う事を聞いてくれない。万事休すか、歯を食いしばった瞬間にシュラが動いた。


「私が食い止める!だから先に行って核を破壊して、ツヨシ様!」

「シュ、シュラ!?それだけは駄目だ!!聞いただろ、そいつと戦うのは危険だ!!」

「でも、ここから戻るにはそれしか方法がないよ!それに戦うわけじゃないもん!ただ食い止めるだけだから!」

「でも!!それでも、お前に何かあったら……!!」

「安心して、ツヨシ様!私は、何処にも行かない。絶対にツヨシ様の元へ戻ってみせるから!」

「シュラ……くそ、分かった!!絶対に、絶対に約束だぞ!?危ないって感じたらすぐ二階に来い、いいな!?」

「うん!」


そう言ってシュラの勇気ある行動によって動くようになった足で二階へ駆け上る。一刻も早く核を破壊し、シュラと共にここを脱出する為に。二階を登る際、シュラが魔法でシールドを張って異質者の進行を食い止めているのが見えて少しだけ安心した。

二階に着くと、あからさまに核だと主張する鏡が禍々しい光を放って部屋の中央に浮いていた。


「これが核で間違いないな!?」

「生還者の情報によるとこれで間違いないです、はい!」

「ぶっ壊せばいいんだろ!それくらい一瞬で終わらせる!」


とろとろしている暇はない。ただ握り拳を作り、忌々しい鏡を全力で殴り付ける。たかが鏡くらい、この一撃で砕け散るだろう。そう俺は思っていた。

思っていた故に、鏡に触れる前に見えない壁に阻まれて弾かれてしまった時には驚いた。生前、木製の扉とは言えそれさえも破壊する威力を誇っていた自慢の拳が、いとも容易く。


「何だよクソ!?」

「これは……魔力の結界です!並大抵の攻撃じゃあビクともしませんよ!」

「こっちは急いでるっつーのによぉ……邪魔してんじゃねえ!!」


それでも諦めずに殴る、殴る、殴る、殴る、殴る、殴る。殴り続けて例え拳から血が出ようとも構わない。一撃じゃ無理なら蓄積ダメージで破壊する。焦って周りが見えなくなっている俺にはそれしか考えられなかった。

だからか、現実は慈悲無く俺を突き放す。気付くと、結界には一つの傷もなくただ俺の拳が血を流していただけだった。


「何で、だよっ…!!」

「落ち着いてください、マスター!この結界は並大抵の攻撃では傷付きませんが、魔法による高威力な攻撃ならば破壊する事が出来ます!」

「魔法…?ああ、魔法か…!!」


そうしてやっと正気に戻った俺は馬鹿みたいに結界を殴り続けていた自分を嘲笑しつつ片手で顔を覆った。

目を閉じて想像する。俺の魔法が、この鏡を結界ごと粉砕する瞬間を。イメージする。それを為し遂げるに相応しい、最高の魔法を。


《鉄の精よ。我が呼び掛けに応じその力を示せ。――砕くは障害たる(すべて)


創造する。構築する。解き放つ。それは、俺の切羽詰まった状況での集中により研ぎ澄まされた思考が編み出した独創魔法(オリジナルマジック)


「ぶっ潰れろ、鉄拳!!」


鉄拳。文字通り、鉄の拳。淡い光を放つ白銀の肘から下を連想させるその拳は、俺の意思と共に目の前の鏡へ振り下ろされる。

金属に硬い何かがぶつかる小さな音。それも束の間、結界も鏡も魔法金属により構成された拳が砕いてしまった。あまりの呆気なさに言葉も出ない。


「そうだ、シュラは…!!」


だが俺にはここで立ち止まっている時間などない。今は核を破壊出来た事よりシュラが最優先だ。

慌てて階段駆け下りようとして足を踏み外す。馬鹿みたいに俺は尻を強打し滑り台よろしく衝撃と痛みを味わいながら階段を滑り落ちた。痛みに震えるよりも先に俺はシュラが一階へ顔を向けた。


「シュラ!!……シュ、ラ…?」


だが、そこには何もなかった。


「そんな、嘘だろ……?こんな……!!」


異質者も、シュラも、何も。最初からそこには何もいなかったとでも言うように。


「シュラァァァァ――――!!」


虚しく、俺の叫びは響いていた。

「マックォ、ヘイツァ、ブォイジェ」

旅のお供で評判の高い果物。覚えにくいし言いにくい。

マックォは赤色でリンゴに近い見た目でヘイツァは紫色でヤシの実に近い見た目。

ブォイジェは黄色で丸い形状。このうちマックォとヘイツァは飲食ともに問題無いが、

ブォイジェは例外。匂いを嗅げばたちまち気分がハイになり、口にすれば全身が温かくなって

難しい思考をせずに済むが売り文句で言うまでもなく危ない薬。

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