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RETURN ~少女好きの俺が悪者を倒す~  作者: 半裸紳士
無名国編
60/81

召喚武器召喚!

ヘビーローテーション(重い複数執筆中作品回転更新的な意味で)


「皆買い忘れとかないか?大丈夫か?」


シュラを受け止める体勢のまま、用事を済ませたらしい皆を見渡す。


「大丈夫、ですけど…それは何、をしているんです…?」

「え?いや、何でもないよ」


格好を指摘された俺は軽い羞恥に苛まれつつ体勢を直立に戻す。まさかシュラが俺から数歩離れた位置で立ち止まってしまうとは。お陰で何か変な奴になってしまったではないか。


「乗船の手続きもしといたぜ!」

「おお、でかしたぞアキラ!」


正直異世界の乗船の仕方など密航するくらいの考えしか浮かばなかった俺からすればその報告は実に嬉しいものだった。これで船員に隠れて怯えるような船旅をしなくて済んだ。


「私もいっぱい食料買ってきたわよ。感謝しなさい」

「そう言えばアキラ。船は何時出るんだ?」

「ちょっと待ちなさいよ!私は無視なわけ!?」

「だって食料つっても旅の合間に食えるもんって限られるじゃん。パン干し肉果物だろどうせ」

「ふふん、聞いて驚きなさい!そんな食生活を解消する為に……」


得意気な顔でカバンの中を漁り始めるユリカをジト目で眺める。どうせろくな物が出ないだろうと俺は確信を抱いていた。

しかし、そんな確信はカバンから現われた存在によって粉々にされる事となった。


「――鍋を購入したのよ!」

「お、おお!!でかしたぞユリカァ!!」


清々しい程の掌返しを披露する俺への突き刺さる皆の視線はともかく、これは乗船手続きに次ぐ朗報だった。これからはシチューも食べれちゃうと考えるともう旅食が楽しみに思えてくる。

俺はカバンに鍋を仕舞うユリカとハイタッチせんと手を挙げる。このハイタッチに乗ってくれるだろうと思っていたのだが、事もあろうに差し出されたのは何かを求める手だった。


「鍋代」

「払うかボケ!!」


図々しさのあまり俺の空高く挙げられた手が流星の如くユリカの手を叩き払った。まさか拒否されるとは思ってもいなかったユリカは叩かれた手を擦りながら信じられないものを見たと言うような顔で俺を見ていた。

なんだその顔は。往復ビンタ待ちか!

次は往復ビンタだ、と構えを取ろうとした瞬間、俺の行動はシュラの声に遮られた。


「ツヨシ様、これあげる!」

「……何だこれ?」

「あのね、さっき魔法具店の人にお勧めされたやつ!」


それだけでは分からないんだが。

俺がよく分からない宝石の様な物を渡されて困惑していると、覗き込むようにして見たユリカが「あー」と声を上げた。


「これ陣石ね」

「陣石?」

「色んな陣を展開するのに使われる結構珍しい石の事。学園の皆が使っていたのはこれを使って展開した召喚陣を通して得た召喚武器なのよ」

「そ、その話本当か!?」

「ちょ、ちょっと急に何?あの、近いんだけど…!」


ガバッと両肩を掴まれ詰め寄られた恥ずかしさからか、ユリカは顔を赤くして目を逸らしてしまう。視界の隅でシュラが頬を可愛らしく膨らませて何故かご立腹しているが、今の俺はそんなの一切気にはしない。だってそれだけ興奮しているから。


「やり方教えてくれよ!」

「え!?あっ、いいけど、その前にその……離れてくんない…?」

「おっと悪い!つい興奮しちまって!」


テヘッとペロリ。拳で頭をコツンと小突いて舌をチラ見せしてみると目の前でそれを見せられたユリカが急に無表情になった。理由は問わないでも理解出来た。


「召喚武器の召喚の仕方は簡単よ。まずは陣石に魔力を籠めて、地面に置くの」

「魔力を籠めて……置く」


皆から少し離れた場所に移動し、魔力を籠めた陣石を地面にそっと置く。するとワンテンポ置いて陣石を中心に召喚陣が出現した。青くそして淡く光る召喚陣には不規則な紋様が描かれている。


「後は武器を召喚したいと念じるだけ」

「武器……召喚……」


専用武器が欲しいと五回程繰り返した辺りだろうか。召喚陣が輝きを増すと同時に陣石が強く発光した。

この光景を見ていた者はその光に視界を奪われ、思わず手で顔を隠す。俺も例外なくだ。


「どうなった…?」


それは誰の呟きだったか。光が収まり、視界が慣れたところで俺は結果を確認する。

――そして、俺の前に存在していたのは拳と同じくらいのサイズの黒い球体だった。


「なんだこれ……なんだこれ!?」


思わず二度繰り返してしまったくらい俺は驚いた。他の者も同様、不可解な物を見るような目で球体を凝視していた。

取り敢えずこのまま置いておくのも目立つので恐る恐る球体に手を伸ばした。


「……?」


球体まで後少しと言うところで俺の頭の中に何かが流れ込み始める。それは、目と鼻の先に存在する球体についての情報だった。

名を、練達(レンタツ)。その名の通り、熟練し、上達する俺だけの専用武器だ。特殊能力は進化。俺が召喚武器の使用に慣れれば慣れる程、練達は進化し続けるらしい。

言葉は要らない。練達は俺と繋がる為に全てを教えてくれた。ならば、次は俺の番だろう。

静かに、力強く。練達を手にしてもう一度魔力を供給する。そうして俺に練達(こいつ)が深く根付く事で俺の成長を知り、自らも成長していく。それだけが練達の唯一の存在意義であり本質だから。


「これからよろしく」


その言葉を紡いだ途端、球体(レンタツ)が形を変えた。白銀一色のそれは、元の世界で探偵業を始める以前まで使い慣れていた物によく似た一本の短剣だった。

練達が短剣へと変形すると同時に召喚陣が割れるように消えてしまう。陣石は最早ただの石ころと成り果てている。使い捨てだったようだ。


「な、何だかよく分かりませんが、凄い、です!」

「ああ。俺の時とは雰囲気が違ったしな」


アエスティーとアキラが素直な感想を述べる。アキラも召喚武器を持っていた事には驚いたがどうやら今の俺の召喚武器の召喚は何か違ったらしい。


「何今の!凄い!ね、テキスト様!」

「確かに。過去に多々とないケースの召喚でした!」


多々とない、と言う事は他にもこう言う例はあったらしい。俺は視線をそのままユリカへと向ける。

当のユリカは既に驚いた様子はなく、何時もの何でもない表情でいた。


「無事召喚に成功したようね。ところで、尋ねたいんだけど」

「何だ?」

「あれ、船じゃない?」


ユリカが指差すその先には、今にも出航せんとしている船の姿があった。俺達は徐々に顔色を真っ青にし、皆で顔を見合わせて頷いた。恐らくこの船を逃したら次は明日になるだろうから急ごうと。


「やっべえ、皆走れええええ!!」


慌ただしい旅はまだ続くのだ。

「スネークアロー」

矢に似た形状をしている蛇。個体差はあるのだが基本大きめで肉がぎっちりと詰まってるので

よく食用として扱われる。霜降りが多い。

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