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RETURN ~少女好きの俺が悪者を倒す~  作者: 半裸紳士
無名国編
54/81

改め、ネイムロストへ

校長先生絶好調!

小屋を出ると既にアキラの姿はなく、代わりにユリカがいた。どうやら待ってくれているみたいだった。

俺に気付いたユリカは歩み寄ってくると何か思い出したのか「ああ、そうそう」と口を開く。


「言い忘れてたけど、クラス対抗戦の優勝クラスはSクラスよ」

「今言う事それ?」

「全然?」

「じゃあ何で今言った!?」

「今思い出したからに決まってるじゃない」


やれやれと言った感じに肩を竦めるユリカに青筋を浮かべ、俺はついにユリカへ掴み掛かった。


「何だお前!?さっきから俺をおちょくってんのか!?」

「ちょっと、急に何!?」

「何ってお前、それが無自覚なんだとしたら余計――うおっ!?」

「まっ…!?」


突然掴み掛かられたのが原因なのか、不意に後ろへ倒れ込んだユリカと共に俺も服を引っ張られて巻き込まれてしまう。この流れは間違いない。ラッキースケベだ。

案の定、衝撃の代わりに俺の顔を柔らかいクッションが出迎えてくれた。ここが天国か…。


「うわわ、なんだこれ!なにもみえないぞー!」


わざとらしい棒読みでクッション、改めユリカの胸に触れてフガフガと顔を埋める。こんなチャンスは滅多に来ないだろうと踏んでの行動だ。

ユリカはそんな俺の様子を真っ赤な顔で見て慌てふためき始めた。それもそうだろう。彼女は容姿こそ素晴らしいものの男性と触れ合うなんて事は全くの未経験なのだから。


「ちょ、ちょっと何してるの!?早く離れて!退いて!」

「ど、どこからかこえがー!」

「……」


もう少し堪能していたかったが、そろそろユリカがこの俺の演技に気付いてしまった。これ以上は不可能だろうと動きを止め、顔を上げてユリカの表情を伺ってみる。


「あっ」


氷よりも冷たい表情で、俺を見ていた。凍える様な視線が突き刺さって俺は身震いをし、冷や汗を掻きつつ退散しようと体を起き上がらせようとする。

しかしそれをユリカは許す事なく、容赦のなく俺の腕を掴んだ。日頃剣技を磨いているだけあり、その握力は凄まじいもの。俺の腕が悲鳴を上げ始めた頃、やっとの事でユリカが口を開いた。


「ねえ、今のってわざとでしょ?」

「さ、さあ?何の事だか分かりまででででででっ!?いだい!いだいからぁぁ!!」

「正直に言って?私怒ってないから」

「はいぃ!そうです!わざとやりました!!」

「死ね」

「え、怒ってないって言ったやん!!」


腕を握る力がさらに増し、俺は「ひぎぃ!」と悲鳴を上げた。折れる、このままでは折れてしまう。

不意に、俺は暢気に浮遊するテキストへ助けを求めるべく掴まれていない手を差し伸べた。


「自業自得ですよ!一度痛い目を見ないと懲りなさそうなので私はノータッチで傍観させていただきますね!」

「このクソ本!!」

「何とでもおっしゃってくださいな!これも親愛なるマスターの為…!」


思ってもなさそうな事を言ってのけたテキストはそのまま「私先に行ってますね!」と某ゲームのヒロインを思い出す言葉を吐き捨てて馬車へと向かってしまった。

何時か燃やす。そんな決意と共に片手で俺を持ったまま立ち上がるユリカに恐れおののいた。


「――マジカルウェポンシリーズ」

「なにそれ」

「ウィンドハンマー!」


ユリカの俺を持たない掌に風が収束し、形を成して実体化を果たす。それは、具現せし魔力の変形。魔法を極めし者がさらに努力して初めて到達する領域――。

難なくそれを成し遂げたユリカは軽い微笑と共に、俺を宙へと放り投げた。


「ちょ、ちょっと待って!俺まだ心の準備が!!」

「ぶっ飛べ、最低!!」

「うぉおおおおああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……」


直撃。肋が何本か折れる様な音を聞きながら俺は高速の世界を見る。わあ、お空ってこんなにも広いんだー。


「ぐぶげっ!!」


見知らぬ草原に墜落する寸前、土属性の魔法でクッションを作り上げる事で死は免れたが色々致命的なダメージを受けてしまった。俺はこんなにしょうもない死に方をするのか、と虚ろな意識の中思う。

その後、しばらくして吹っ飛んだ俺に追い付いたアキラの治癒魔法で傷を癒やしてもらったので命は拾えた。アキラ万能過ぎ。

ちなみに俺が復活した後、事情を聞いたアキラが「アホだろ」と頭を抱え、「カッとしてやった。反省はしてるけど後悔は一切してない」とユリカが表情を変えずに述べた。少女、アエスティーと言うらしいのだが、彼女は「何と言うか、ご愁傷様、です?」と訳が分からない様子だった。

テキストは何かを言う前に投げ捨てた。すぐ追い付くだろうと見越しての行動だ。


「あー、なんだ!色々あったけどとにかく、目指すはネイムロストだ!ここからは不眠不休でゴリラ走らせるから最速で港に行くぞ!」


馬車の御者台に座った俺は皆にそう伝えると、ゴリラの手綱をグイッと引っ張った。


「うほほほほっ!!」


ドラミングしつつ歩き始めるゴリラ。旅はこうして始まるのだ。


「うほほ!うほほ!!」


目的は多少違えど、同じ場所を目指す仲間と共に。楽しく、そして時には辛い旅が。


「うほ」

「うるせえ!!」

「ギルド」

ファンタジーお馴染みの冒険者達が集う組織。ふふ、言うまでもないでしょう?

ちなみに三つの種別に分かれている。討伐科、探索科、採集科です。

探索科がダンジョンや秘境を探索し、討伐科がそこに蔓延る魔物を討伐し、採集科が安全地域となったダンジョンや秘境で様々な物を採集すると言ったシステムとなっている。

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