相棒の一目惚れ
また投稿ペースが…
ツヨシ視点に戻ります!
◇
「そんな訳ないでしょうが」
そう言って微笑しながら手を肩の位置まで上げ、首を振るユリカに煽られていると思った俺は若干の青筋を浮かべてくわえていた干し肉を食い千切った。
なにかコソコソと村人の目を盗みながら村の孤立した小屋を目指しているから不思議に思い着いて来てみたのだが、まさか煽られるとは思っていなかった。
「ほおーん。それで?ここに用でもあんのか?」
「無かったらわざわざここに来てないわ」
「見た通り、この小屋に何かがある…とか?」
アキラの発言にユリカは頷く。まあそうじゃなかったらこんな古びた小屋には来ないよな。
俺が一人干し肉に手こずっている間にも話は進んでいく。
「でも正確にはあるんじゃなくているの」
「いる…?もしかして魔物か?」
「違う、人。この小屋に人が閉じ込められているのよ」
「なっ…!?それなら出してあげないと!」
探偵で自分の事務所を持つ程に正義感が強いアキラは当然、すぐにでも助け出そうと小屋へ駆け寄ろうとする。だがそれを片手を伸ばす事で制止したユリカは視線だけをアキラへ向けた。
「落ち着いて。ここに閉じ込められているのは普通の人じゃないわ。不治の病に侵された女の子よ」
「だったら尚更だ!」
「アンタに何が出来るの?」
「不治の病を治すだけだろ!俺なら出来る!」
まさかの返しに呆気に取られたユリカの制止を振り解き、小屋に走ったアキラは勢い良く扉を蹴破った。これには俺もびっくりさせられたね。
つい数ヶ月前まで日々を共にした相棒が不治の病を治すなんて言う常識外れの事を言い出すんだから。
「…アンタの友達って、色々ぶっ飛んでる」
「俺もそう思えてきた」
とにかく、ここにいてもしょうがないので俺達も小屋に入る事にした。
「うわ、埃くさっ…」
「こんなところに閉じ込められちゃあ治るもんも治らないぞ…」
それぞれ小屋にコメントを残しつつ、小屋の真ん中で金髪の女の子を抱きかかえるアキラを見つける。何やら様子が可笑しい。
「こ…れは……!」
「どうした?」
「可愛い…」
「おい」
一目惚れでもしたらしい。女の子を抱きかかえたアキラは女の子の可愛らしい顔立ちをしばらく見つめていた。
「召喚術士と召喚」
召喚術士とは召喚術を扱う者のこと。
召喚術には二つの方法がある。それは『召喚』の加護を用いて召喚する方法、そして
魔力を籠めた正方形の紙に複雑な魔法陣を書いてそれを触媒として召喚する方法。
前者は加護さえあれば楽に召喚出来るのだが、後者はそうはいかない。
魔力を正方形の紙に籠めるところまでは一流の魔法使いなら可能なのだが、魔力を籠めた後の紙に
魔法陣を書く為のインクを用意するのが困難なのだ。
なにせ、魔法陣に使用するインクは特別製。それも高級品だ。そんじょそこらの人では
到底届かない聖金貨50枚を必要としている為、入手の時点で躓いて挫折するのが一般となっている。
しかも召喚した対象は一定の時間が経過すると再び還ってしまうのでもう一度同じ事を行わないと
いけないのでインクが持たない上に面倒臭いと不評な為に召喚術士を目指す者は数少ない。




