忌み子
最近疲労が凄いです。
今回はユリカ視点です!
◇
「ありがとうございましたー!」
偶然見掛けたパン屋で複数個パンを購入した私は紙袋を両手で抱え、パン屋の女性の声を背で受けながらツヨシ達の元へ戻ろうとしていた。
「ここのパン、意外と安いかったわね」
道中、そんなどうでもいい事を呟きながら焼き立てのバターを挟んだパン、通称バターサンドを一口囓る。口に広がるバター特有の風味に頬を緩ませていると不意にすぐ隣を通った男性二人組の声が耳に入った。
「おい、聞いたか?またらしいぜ」
「またぁ?もうこの年入って何回目だよ」
「十からは数えてねえな…」
続きが気にある話題をバターサンドの様に耳に挟んだ私はピタッと足を止めて遠ざかる男性二人へと振り返った。単に面白そうだと思った事は自主的に首を突っ込んでいくのが私のスタイルだ。
少し遅れてしまうけどちょっとした寄り道くらい許してくれるだろう。そんな思考に至った私は迷う事なく男性二人の後を追う。
「あの、すみません」
「ん?」
「うおっ、飛びっきり可愛らしい子じゃねーか!」
それぞれの反応を示した男性二人に対して私は上目遣いをして少し前屈みになった。
「今の話、詳しく聞かせてくれませんか?」
「お、おお!いいぜ!」
「ふふ、ありがとうございます!」
あざとらしく振る舞い男性二人を釣る事が出来た。普段なら絶対しないのだけど、こう言う面白そうな時は別。背に腹はかえられない。
一瞬ツヨシに自然な上目遣いをしてしまっていた事を思い出すけどすぐに脳内から振り払った。何故か最近ツヨシを見ると顔が熱くなる事が多い。どうしてしまったんだろう。
そんな思考は頭の隅っこに追いやり、私は男性二人から話を聞き出す事に成功した。
「ここが例の…」
私が訪れたのは村にある明らかに不自然に孤立した小屋だった。男性二人から聞いた話では、この村には奇病を患った女の子がいるらしい。
それだけならそこまで噂はしない筈だし、こんな孤立した小屋に閉じ込めておく必要もない。ならどうしてなのか。
その理由がこの小屋に閉じ込められた女の子が患った奇病にあるんだとか。なんでもその奇病はどの症状にも当て嵌まらずどの症状にも当て嵌まる、不可解なもので何時発症するかも分からない神出鬼没リズムな病と言う話だ。
分かり易く解釈すれば何時発症するかも分からず症状もランダムに出る不治の病らしい。
特効薬を用意しようにも症状がランダムなだけに難しく、どんな凄腕魔術師が回復魔法を掛けても治らない、そんな厄介な病に侵された女の子は今再び奇病の症状が出てしまいこの小屋で他の人に感染しないよう閉じ込められている。
そんな話を聞いた私は取り敢えず小屋まで来てみたんだけど思えば私も回復魔法はそこまで得意ではないので来ても意味がなかった。
「来てみたはいいけど、私じゃ役に立ちそうにないね」
「あれ、ユリカじゃん!こんなとこで何してんだ?はっ、まさか盗みを!?」
諦めるか、ツヨシ達に伝えてみるか、そんな選択肢に頭を悩ませていると突然背後から声を掛けられた。今ではすっかり聞き慣れてしまったツヨシの声だ。
振り返ると案の定、ツヨシがアキラと共に歩み寄って来ていた。ナイスタイミングと言うか何と言うか。
「そんな訳ないでしょうが」
取り敢えず、そう返しておくのだった。
「ビリーブロング部隊」
ツヨシが元の世界の知識を頼りに作った即席の対魔王軍残党部隊。
アレチェスカ王国に滞在していた戦闘要員だけで構成されていて、中にはそこまで実力を持たない者も
いたのだが、なんと魔王軍残党殲滅作戦で目まぐるしい戦果を残したりしている。
ビリーブロング部隊はジョブ、職業によって分けられている。分けられた者達は職業ごとに列を作り、
ビリーブロング部隊の特性を活かす為に整列陣形を取らなければいけない。
この部隊の戦闘方法は至ってシンプルで、第一列が最前線で第二列の準備が整うまで時間を稼いで
渾身の必殺を放ち、即座に離脱した直後に第二列が第一列と同様の事を行う。退いた第一列は準備を
しつつも休憩出来るので次に自分の番が来る時にはほぼ万全の状態で挑む事が出来る。
これをループさせる事によって部隊は勢いを維持したまま相手に消費させ続ける事が可能。
魔王軍残党殲滅作戦後、複数人で戦闘を行う場合はこのビリーブロング部隊にちなんだ
ビリーブロング隊列などが組まれる様になったと言う。
ちなみにビリーブロングの由来は皆さんご存知の信長から。




