アキラの死因
新章突入しました!
一週間程投稿が止まっていたのでこの話まで連続で少女好きの方を投稿させてもらいましたが、次からは女エルフの大冒険の方も投稿再開します!
――学園を発って二時間が経過した。既にルカリナ学園のある魔術都市の姿は遠くにあった。
「馬車の旅は快適だなぁ!」
「本当、学園長に感謝しないといけないな」
俺が学園長に事情を一部省いてしばらく学園を離れると説明したところ、なんと本当ならば校外授業の際に使う筈の馬車一台をくれたのだ。感謝感激雨あられとはまさにこの事。
箱馬車と呼ばれるこの馬車には景色を堪能出来る窓が両サイドに付いている。俺とアキラはその窓から外を覗きながら改めて学園長に感謝の気持ちを感じていた。
そんな俺達とは違い図々しいが座右の銘のユリカはさも当然かの様に横になって鼻ちょうちんなるものを作って眠りこけている。鼻ちょうちんを実際に見たのはこれが初めてだ。
「…ユリカが寝てる今のうちにあっちの事聞いておきたい」
「…いいぞ」
俺がどうしてこの世界にいるのかは既にアキラも体験している事なので話す必要はないだろう。それよりも俺は元の世界で俺が死んだ後何があったのかを聞いておきたかった。
「あの後…俺が奈落に落ちていった後ってどうなったんだ?」
「俺と、秀也だけが生き残った」
秀也。俺達が初めて不可解な出来事を体験した時に一緒に助け合った友人の名だ。そう言えば俺が落ちる時にアキラと一緒に谷を飛び越えて落ちずに済んでいたっけ。
「そうか…でも、お前がここにいるって事はその後何かあったって事だろ?」
「ああ。お前、外国人にフィーユって知り合いがいたろ?」
「…あー、確か何か困った事があれば俺達の探偵事務所を訊ねてみろみたいな事言ってたの思い出した。もしかして来たのか?」
「ああ。パスポート落としたから探してくれーって転がり込んできてな」
フィーユ。確か俺が探偵としての依頼で外国を渡り歩いていた時に出会った少し内気な少女の名だった筈だ。若い年で一人旅をしていた彼女に声を掛けた俺は宣伝がてらにアキラの苗字を使った鷺ノ森探偵事務所を紹介した。
まさか本当に訪れていたとは。
「そのフィーユがどうかしたのか?」
「…俺に近付いたのが悪かったのか彼女も奇怪な事件に巻き込まれたんだよ」
「ど、どうなったんだ…?」
「一緒に巻き込まれた時には既に似た様な体験をした後だったみたいでな。怯えていた初めの頃を忘れさせるくらいの変貌を見せてたんだよ」
変貌。どんな風に変貌したと言うのか。
「いや、あれは凄かったな。まさかあの化け物共に喧嘩売りだすとは思わなかったぜ」
「あの子が喧嘩売るとか考えられないな…」
俺の記憶の中で蘇るブロンドの髪を靡かせた幼い少女。そんな彼女の像が一瞬にして砕け散ってしまった。
「でもそんな彼女も死んだよ…化け物から一人の少女を救おうとして、頭をガブリってな」
「…そう、か」
あのまだまだ将来有望な少女が死んでしまった。その事実にまた俺は少女を守れなかったのかとほぼ死人の身でありながらも思ってしまった。
俺がいたところで何も変わらないかもしれない。だけど、それでも最後まで足掻きたいと思うのはいけない事なんだろうか。
「後秀也も同じで化け物に食べられちまった。それで、俺がただ一人取り残されたんだ」
「結局、どうなったんだ?」
「…詰んだと思ってな。恥ずかしながら自殺しちまったよ」
そう言って肩を竦めるアキラに「お前はよく頑張ったよ」と伝え、視線を窓の向こう側に流れる景色へと向ける。
少なくとも、アキラは俺よりもずっと頑張った。頭が悪いから強行突破しか出来ない、鍛えた武術も化け物相手では意味がないから他に頼る、何か出来る事はないかと考えた結果血を流すと言う自己犠牲を選ぶ。そんな事しか出来なかった俺よりは、ずっと。
「…ぅん?」
沈黙が訪れ、お互い何とも言えない気持ちを味わっていると不意にユリカが鼻ちょうちんを割って起きた。寝惚け眼で不思議そうに俺とアキラを交互に見ている。
「起きたか、魔剣厨」
「まけんちゅー、言うなぁ…」
まだ寝惚けているユリカの呂律の回っていない返事に、俺とアキラは同時に噴き出した。
「お金」
銅貨、聖銅貨、銀貨、聖銀貨、金貨、聖金貨と存在している。
銅貨10枚で聖銅貨1枚分、聖銅貨10枚で銀貨1枚分、銀貨10枚で聖銀貨1枚分、聖銀貨10枚で金貨1枚分、金貨10枚で聖金貨1枚分と価値付けられている。
13部の貴族街の宿屋に泊まる際にツヨシは300枚の金貨をPONと出していたが、実は貴族でも出すのを惜しむくらいの金額。




