マシロの行方
最近投稿比率がエルフ寄りになりつつある気が…?
目が覚めると、そこは寮の自室だった。どうやら俺は気絶した後、部屋へ運ばれたらしい。
「マジであり得ねぇ強さだったわ…」
改めて感じる自分の非力さ。ユリカの一振りだけでダウンしてしまっていてはあの偽善野郎には到底勝てっこない。
俺は掛け布団を強く掴んで天井を見上げると深く長い溜め息を吐いた。後ろ向きな考えは捨てよう。俺は絶対に偽善野郎をぶっ飛ばしてシュラを助け出さないといけない。
あの日、恐らく加護の力で時間が止まっていたあの世界で俺は最後に見た。偽善野郎のシュラを見る目が他とは違っていたとこを。確かにシュラは明らかに普通の人とは違った力を秘めている。
加護の力もその現われなんだろう。
「マスター。そうお気を落とさずに!今までマスターはマシロちゃん達に任せっきりで自分の鍛錬を少ししか出来ていなかったんですからこうなるのは当然です!」
「お前それフォローになってなくねーか…?」
ジト目で見つめると当のテキストはわざとらしく下手くそな口笛を吹いて誤魔化した。何時かゴミの日に燃えるゴミと一緒に出してやる。
「そう言えば、マシロは何処に行ったんだ?」
「そろそろ訊ねてくると思って私、事前に調べておきましたよ!」
くるりと一回転して色んな意味で無い胸を張るテキストを掴んでページを捲る。すると空白だったページに文字が浮き出してきた。俺が記憶を失った日からこの時点でのマシロの記録だ。
あの日、マシロは俺がやられた時点で荷物を纏めてその場からいなくなってしまったらしい。『使役』による契約は切れていないので見捨てたなんて事はない筈なのだが、思えばマシロは命令しない限り何もしない奴だった。
俺がこうなる事を予知して姿を眩ませたんだろうか。そう言えば夢の中でマシロに似た黒髪の少女が待ってるとか言っていたのを思い出す。あれはつまり、そう言う事なのか?
それからしばらくは俺の様子を見守っていたりしていた様なのだが、数日前からネイムロストと言う国から離れなくなってしまっている。
「ネイムロスト…?」
「今では人々の記憶から消えてしまった名を失った国――生前のマシロちゃんが収めていた国です」
「じゃあこのネイムロストって何なんだ?」
「ネイムロストは名を持たない国に付けられる名称なんですよ。と言っても今ではネイムロストはマシロちゃんの国しか無いんですけどね」
せめて、自分だけでも忘れまいと里帰りしていると考えてみる。テキストの情報からでも謎だらけな人物なお陰もあってそうである可能性が曖昧だ。
「ネイムロスト…ネイムロストねぇ。何にしろ、行ってみるしかないのか」
「また冒険ですか?」
「生憎この世界には転移なんて大層な魔法ねえからな」
あったとしても加護くらいだろう。どうせ最上級の加護に違いない。
とにかくマシロがいない今、結構な確率で厄介事に巻き込まれやすい体質なので変に強敵に攻められるとこっちの身が持たなくなる。せっかくの学園生活だが今は保身を優先させてもらおう。
そう思ってベッドから立ち上がった時、部屋の扉が開かれた。
「話は聞かせてもらったわ」
「ユリカ!?」
「俺もいるぜ」
「アキラまで…」
話を盗み聞きしていたのか、見計らったかの様なタイミングで登場した二人に思わず戸惑いを見せる。
どうやら物好きは面白そうな事に引き寄せられてくるらしい。
「愛玩ペット」
魔物とはまた違った魔力を持たない生物。
人に対する敵意が全く無く、寧ろガンガン懐いてくる愛らしい奴らの総称で、
昔は野生で放置されていたが本能的に人に近寄ってくるのでそのまま飼育されたりなどとして
現在では皆から好かれる愛玩ペットとしてショップなどで売られている。




