刀と圧倒的な力
新作の「女エルフの大冒険」、投稿してます!
この話描くまでそっち描いてました!お待たせ致しました!
流石にユリカ相手に拳は危険だ。だから俺は地属性の派生である鋼鉄属性を使う事にした。
「全く、剣すら持ってないとかどう言う了見なの?」
「まさか皆があんな召喚武器持ってるとは思ってなかったんだよ!」
実技テストを行った日に貸してもらった剣をユリカは左手で構える。先程の戦いから俺の戦闘スタイルを見たからか、素手で近付く俺に少し警戒を見せているようだ。
だが安心してもらっていい。今の俺なら、武器くらい作り出せる筈だ。
戻った記憶の中から、俺が覚えたと思われる魔法を引き出す。鋼鉄魔法による、武器生成が出来ればこの戦いは対等なものとなる。
一か八か、使える事を願って頭の中に叩き込まれている詠唱を始める。
《鉄の精よ。我が呼び掛けに応じその力を示せ。――形を成して剣となれ》
「アイアンクリエイト」
銀色の光。眩く俺の右手から放たれた光は、あっと言う間に剣の形を成す。成功だ。
刀身も柄も全て鉄だが、確かに重みとその姿は剣に間違いない。俺は笑みを零すと、剣を振り翳した。
「アイアンクリエイト」
二度目の魔法。今度は剣の形を変える為だ。意識を集中させ、頭の中のイメージを剣へと移す。輝きが増し、剣はグニャリと変形して俺にとって見覚えのある物になった。
――刀。俺の元いた世界では定番の刀だ。この異世界にもあるのかは知らないが、これこそが俺のイメージした武器なのだ。
だが刀となれば必須な物がある。鞘。そう、鞘が無い。一緒に作っておけば良かったと思いつつ、俺はもう一度唱える。
「アイアンクリエイト」
刀を腰に添える様に構え、光と共に作り出された鞘に納める。魔力消費、全然問題なし。
これでとうとう刀として完成した。後は、使いこなしてユリカに勝つだけだ。
「それは…何?」
「刀だ。俺の故郷の、伝統的な物だよ!」
低く腰を落として構えていた体勢から、踏み込んだ脚にありったけの力を込めて前方へ飛ぶ。ユリカとの距離を詰め、鞘に納刀していた刀を振り抜く。
振り抜いた、と思った。だが現実はそうは上手くいかず、途中でつっかえてしまった。しまった。まだ扱える片手剣にしとけばよかったな。
調子に乗って刀を生成したのにも関わらず、俺は少し後悔した。そうしている間に、これを機と取ったユリカが剣の切っ先が地面に擦れているのにも関わらず、俺を目掛けて斬り上げてきた。
切っ先は刃こぼれの一つもしていない。ユリカの洗練された技術と可憐な腕から放たれる力は想像を絶するものだ。剣に何の傷も負わせる事なく、ユリカは地面を斬ってしまっていた。
咄嗟に仰け反った俺の目の前は切っ先が通り過ぎていく。もし当たっていたら、などと考えると身震いした。もし傷を負っても結界を出れば元通りになるらしいが痛いものは痛い。可能ならば怪我は避けたいところだ。
「想像以上に速くて驚いたけどまだまだ使いこなせてないみたいね。それをチョイスするアンタの気が知れないわ」
「お褒めいただき誠に感謝」
「褒めてない。後、油断してるみたいだけど私の今の一撃はまだ続いてるわよ」
「は?」
刹那、吹き荒れる暴風の中心に立っていた俺の体は、圧倒的な風圧に耐え切れず吹き飛ばされてしまった。馬鹿な!たった一振りで暴風を生み出すとか化け物じゃねえか!
そんな俺の心の叫びは当然ながらユリカに届く事なく、吹き飛ばされていくこの身は地面と強く接触した。その際に頭を打ったのか、意識が朦朧とする。
これでまた記憶失ったとかなったら洒落にならない。見事にステージ外に落ちて場外負け兼気絶と言う間抜けな負け方をした俺はただ、何時か絶対にリベンジしてやると心に誓った。
ブラックアウト――。
「魔拳士」
メシアの職業。基本は武闘家と変わらないが、両拳に魔力を宿らせる事で魔法を放つ事が出来る。
世界中でこれが出来るのはメシアただ一人。魔法×拳を振り抜く力=威力なので通常の魔法より
威力が跳ね上がってしまう。現にメシアの怒りの魔法拳はレ・オアクーを追い詰めている。
オリジナルの魔法も簡単に作れちゃう。




