戦いの中で
えだっ!まめっ!
「いっ…たくねぇ!」
「っ!?」
確実に決まった筈のパンチを頬で受け止めきってしまったアキラが逆に反撃をしてくる。迫り来る拳を仰け反ってかわし、一旦距離を取る。
「…お前、どっかであった事あるか?」
しばらく無言で睨み合った後、不意にアキラが構えを解いて尋ねてくる。俺は少し考える素振りを見せた後、肩を竦めてみせた。
「さあ?どうだろうな」
「意地でも言わないつもりか?だったら…無理にでも答えてもらうだけだ!」
アキラの姿がぶれ、俺の前から消える。咄嗟に前へ転がり込み、背後を確認すると丁度アキラが拳を振り抜いた姿がそこにあった。
もう少し反応が遅かったらやられていた。俺は冷や汗を掻きつつ、外したか、ともう一度拳を握り直すアキラを見て口角を持ち上げた。
間違いない。あの拳の振り方、身のこなし。全て元の世界で見慣れた晟良の動きだ。
そう思うと、嬉しさでつい笑みを零してしまう。こんなに早く再会出来るとは思っていなかったからこその感情だ。
「次は当てる…」
「やってみな。今度は手加減抜きでいくぜ」
腰を深く落とし、拳を固める。沈黙が訪れ、お互いの集中力を高めていく。俺の視界は既に、アキラだけを映していた。
何も言わず、ただ相手を倒す事だけを考える。そうして最初に動いたのはアキラだった。
瞬く間に距離を詰められ、死角からの殴打。瞬間的に拳を捉えた俺は片腕を盾にし直撃を回避する。腕に走る痛みと痺れを無視し、今度は俺が拳を振るう。
顔面目掛けて放った一撃は首を傾げる事で避けられ、空を切る。その隙を突いたアキラは空かさず俺の胴体にボディーブロウを直撃させた。
「ごっぁ…!!」
苦しい。溝に入り肺が圧迫されてまともに呼吸が出来ない。だが、ここで止まればもう反撃のチャンスは永遠に訪れない――!
朦朧とした意識を無理矢理引き戻し、前のめりに倒れていく体勢を留める為に両脚に力を入れ直し踏ん張る。何とか耐え切った。今度は、こっちの番だ。
屈んだ状態で右拳にありったけの力を込め、体を起こす勢いに任せて顎目掛けて振り抜く。――決まった!
「ぐぶっ!!」
顎に強烈な一撃を貰ったアキラは視界を白黒させつつも俺と同じ様に踏ん張り、戻ってくる。ああ、なんて楽しい。
俺は久し振りの熱い戦いの中で、異世界で目覚めるまでの日々を思い出していた。世界中に数多と存在する強豪達との死闘や、些細な言い合いが原因で晟良と殴り合いの喧嘩をしたり、時には探偵として追い詰めた犯罪者を捕まえる為に拳を振るった事もあった。
蘇っていく思い出が、しばらく忘れていた熱く燃え滾る闘争心を震え立たせ眠っていた記憶を呼び覚ましていく。
鮮明に思い起こされる、止まった世界での出来事。確か、そうだ。俺はあの偽善野郎に完膚無きまで叩きのめされたんだ。この世界に来てから自身の力ではないとは言え、勝ちしか知らなかった俺は負けて、死にかけて、塞ぎ込んだ。
認めたくなかったのかもしれない。負けて、大切なモノを奪われて、あの偽善野郎に笑われた事を。認めたくなかったからこそ俺の潜在意識は全ての記憶を封じ、その事実から目を背け続けていた。
浮かれていたんだ。調子に乗っていた。自惚れていた。俺は、力を手にして大切な事を忘れていた。
負けたからなんだ。また努力して強くなればいいじゃないか。
奪われたからなんだ。強くなって取り戻せばいいじゃないか。
笑われたからなんだ。勝って笑い返せばいいじゃないか。
簡単な事だ。元々出来ていたをもう一度するだけ。これ以上に簡単な事なんてない。
「――は、ははっ…!」
強くなる。持てる力をフル活用して偽善野郎をぶちのめす。そして大切な――シュラを笑って迎える。その為には。
「ここで、倒れちゃあ、情けないってもんだよなぁ!?」
「よく、言った!!」
激しい頭突き同士のぶつかり合い。額から血が流れようが関係ない。今は、この戦いに勝つ、それだけを考えるんだ。
再会を喜ぶのは、その後だ。
「レ・オアクー」
終焉の神。滅びの象徴。絶対的破壊の悪獣。様々な災厄として恐れられている神級邪悪獣。
主に邪教徒に崇拝されており、生贄を必要とする儀式を通して現界する。
作中では瞬殺されたが、その力は絶大で一時間もしないうちに世界を滅ぼす事が出来る。
意外と攻めに弱く、高威力の攻撃を受けるとすぐボロボロになってしまう。
過去に世界を滅ぼして無ノ刻と呼ばれる現象を引き起こしたが亡世の支配者の相打ち覚悟の
攻撃に敗れ、自分の世界に逃げ帰っている。今戦えばパワーアップしている亡世の支配者に
簡単にやられてしまう。実際メシアの怒りの一撃と亡世の支配者の攻撃でやられた。




