表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
RETURN ~少女好きの俺が悪者を倒す~  作者: 半裸紳士
王道横溢編
32/81

テキスト

「尽きる」聴きながら執筆してたら背後のベランダが気になって仕方がないので

明日はお休みしてもいいですか(迫真)。

俺は見た。白い空間に広がる花畑で一人の少女と向き合う、そんな夢を。


『目を覚ませ』


黒い髪、黒い瞳、白い肌に黒のドレス。背丈は俺の頭二つ分小さいくらいだろうか。少女はただ、俺をジッと見つめて目覚めを待っている。


「お前は…」


知っている。俺はこの目を知っている。けれど、それが何なのか、何処で知ったのかを思い出せない。


『待っている』


たった一言。黒の少女はそれだけを言い残して姿を消してしまう。取り残された俺はただ風で巻き上がっていく花びらを見つめて立ち尽くすだけ。

黒の少女が一体俺に何を伝えたかったのかは分からない。だけど、俺は探さなくてはと思った。

黒の少女を探し出し、火野鋼(おれ)を思い出さなくてはいけないと。



ブレザーによく似た制服の袖に腕を通し、ネクタイを締め、そして深呼吸。

まず状況を整理しよう。現段階で分かっている事は自分が火野鋼でとある事情により死んでしまった事、そしてここが異世界で、しかも記憶喪失の状態でセリオリーゼ家の居候として迎えられている事。

この二つを一繋がりに考えれば俺は死んだ後、何らかの方法で異世界に転移、もしくは転生をして意図的かそれとも手違いかで記憶を失ってセリオリーゼ家に拾われこれまでの三ヶ月間に至る。

だがユリカ、ユリカだけではないセインやその他の記憶にない知り合い達が俺の異世界での三ヶ月間以前の事を知っている。挙げ句には魔王討伐に一番の功績を残した英雄とまで呼ばれていた。

つまり、俺が死んでからセリオリーゼ家にお世話になる間までの記憶が抜けている事になる。どうにかして、俺はそれを思い出さなくてはいけない。

その為には、最初に俺と最も繋がりが深い喋る本とやらを叩き起こす必要がある。最初に本に触れた時からずっと伝わっていた、俺と同じ形の魔力が繋がり交わろうとする感覚。

どうすればいいかは、俺が忘れていても体が覚えていた。


「始めるか」


俺に与えられた寮の寝室、そのベッドの上に無造作に置いてあった本を持って埋め込まれた石に手を翳す。

意識を闇に沈め、全神経を研ぎ澄ます。魔力回路が活動を始め、器より溢れた魔力が全身に伝わっていく。その全てを翳す右手に集中させて、一気に解き放つ。

眠っていた本の石が淡い光を点滅させて魔力を何一つ変わらない吸引力で吸い込んでいく。淡い光を放っていた石が青く、そして強く輝き始めた。

次の瞬間、今度は本の方から尋常じゃない量の魔力が流れ込んできた。


「お、おぉっ…!?」


ついそんな呻き声を上げてしまい、俺は全身に漲る力に心底驚愕した。

これまでとは比べ物にならないレベルの身体能力の向上、魔力の質の変化。全てが当たり前の様に身体に馴染んでいく。俺の魔力と本の魔力が深く混じり合い、一つになった。気分は爽快かつ絶好調だ。

不意に、俺の頭の中で声なき声が聞こえた。


『本契約、及び再契約を実行致します。よろしいですか?』


答えは目を覚ました時から決まっている。


「ああ」

『では――マスター、私に名を』


どの世界線でも俺はきっと、この本にはこう名付けるだろう。安直かつシンプルで覚えやすい名だ。


「テキスト」

『契約成立――おはようございます、マスター』


それっきりその声なき声は頭の中で聞こえなくなる。代わりに。


「いぃぃやっほぅ!!テキスト、ここに完全復活でございますよぅ、マスタァァ!!」

「うるせえ」


耳に劈く様な叫びを上げて宙を飛び回る様になった本、テキストに対して容赦のないチョップを喰らわせる。


「あいたっ!ななな、何をするんですかマスター!突然リンクが切れたと思えば突然呼び起こしてチョップだなんて!!まあ、仮契約と言うか簡略化した契約でしたんで何時リンク切れても可笑しくなかったんですけどネ…」


最後の方は小さく、呟く様にして言ったテキストを見て俺は本当に喋る本だった事に若干驚きつつ言った。


「悪いな。今の俺、記憶喪失みたいでお前との思い出どころか魔王討伐云々の記憶すら思い出せねえんだ」

「な、何ですと…!つまり今のマスターにならワンチャン勝てます…!?」

「調子に乗んな。世界一強い飴玉とタンスの角以外の物には負けないからな?」

「後者はともかく前者は色々アウトでは!?」

「喋る本も俺的にはアウトだよ!」


そんな言い合いをしていると、俺の寝室の扉がゆっくりと開かれた。そこから顔を覗かせたのは青白い肌、濡れて水が滴る無造作に伸びた黒い髪、ひん剥かれた双眸、小高い鼻、半開きの口から蛆虫を湧かせたおぞましいモンスター…ではなく、普通に可愛らしい顔をした赤髪の美少女、言うまでもなくユリカ・セリオリーゼその人だった。


「私的には暗い部屋で本と話すアンタもアウトなんだけど…」

「言うな」

「私をただの本と侮っては痛い目に遭いますぞ!」


どうやら一人しかいない筈の部屋が騒がしかったから様子を見に来たらしかった。何故か申し訳ない気分になった。

「属性魔法」

基本属性、希少属性が主。他にも派生属性、複合などがある。

・基本属性/火、水、風、地 ・派生属性/炎、氷、治癒、鋼鉄

・希少属性/雷、闇、光

複合魔法とは全ての属性を自由にカスタマイズする事で強力な力を発揮する属性魔法の事。

風と地の派生魔法だけ少し特殊で、治癒魔法はその名の通り回復を、鋼鉄魔法は鉄を一時的に具現して自由自在に操る事が出来る。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ