ルカリナ学園
趣味は落描きです(突然の暴露)
到着してまず、俺達は魔術都市を覆う壁の唯一の出入り口である門で警備していた人に通行証の提示を促された。あらかじめ出発前にリュカから通行証である一枚のカードを貰っていたのでそれを提示した。
特に警戒されている様子もなく門を開けてくれた警備兵、もしくは門番に取り敢えずペコリと頭を下げておいた。
「アレチェスカやファヴル二アとは雰囲気が大分違うんだな」
「そこら中に魔力粒子が漂ってるせいだと思う」
「魔力粒子って、確か魔法を使った後に発生する霧散した魔力の事…だったっけ?」
そう、テキストに載っていたのを覚えている。どうやら以前の俺は暇さえあれば色んな知識を覚えようとしていたみたいだ。
「ま、大体そんなとこ。アズワールは世界で最も魔法を使う機会の多い場所だから魔力粒子が濃いの」
「あんな馬鹿でかい学園があったら嫌でも貯まるか…」
俺が見るのはこの魔術都市アズワールの中央に存在する異常な存在感を放つ恐らくルカリナ学園。城の大きさに負けるどころか勝っている様な感じがするのは気のせいなのか。
ユリカが進み始めたので俺はその後を追う様にして着いて行く。はぐれたら迷子になる確率が割と高い。それだけ広い都市だと言う事だ。
初めて来た俺にとっては魔術都市の全ては新鮮な物ばかりで、ついキョロキョロと忙しなく見物に徹してしまう。そんな俺に気付いたユリカは溜め息を吐くと、突然手首を掴んできた。
「お、おおっ…何だ?」
「何だ、じゃないわよ。あんまり不審な動きされると私も不審な何かと誤解されかねないでしょ?」
「悪い」
「素直なのはいいんだけど…まあいいか。とにかくさっさと学園で試験済ませて休んじゃうわよ」
そう言えばもう夜だった。今更な話、学園はこんな時間でも試験の受け付けをしているんだろうか。
ユリカに腕を引かれて学園に到着した俺は、間近で見るとさらに巨大に錯覚する学園を見上げて感嘆の声を上げていた。
「その気持ちは分からないでもないわ。私も最初はここで間抜け面晒してた」
「俺、この学園でやっていけるか心配になってきた」
「時期に慣れるんじゃない?」
そんな他人事の様に言いつつ、学園の校門を通るユリカに続いて学園の敷地内に入る。何だか懐かしい感じだ。
校舎の正面玄関、生徒用靴箱らしき物が配置された玄関に入ると、まず受け付けが目に入った。凄く眠たそうにしながら本を読んでいた受け付けの女性は俺達に気付くと手を振ってきた。
「あらあら、セリオリーゼさんじゃない!久し振り、元気にしてた?」
「はい。ラシェットさんこそ、元気そうで何よりです」
「元気は私の取り柄だもの!」
そう言って元気を主張するラシェットと呼ばれた青髪の女性は今度は俺の方へ視線を移してきた。
「で、アナタは誰?」
「何だか成り行きでこの学園に通う事になったツヨシです。試験があるって聞いたんですけど…」
「ああ!アナタが!」
俺が首を傾げていると、ラシェットは手元に置いてあった用紙を確認して頷いた。
しかし何だ。夜の学園ほど不気味な物はないだろう。明かりが一つも点いていない為、月の光が廊下を照らしてその不気味さを磨いていた。
そもそもラシェットはこんな夜遅くまで何をやっているのか理解出来ない。
「これでやっと私も帰って寝れるってものだわ!」
「え?」
「ささ!セリオリーゼさん!ツヨシさんを試験会場に指定されてるアリーナまで連れて行ってあげて!」
その言葉でやっと理解する。この人はずっと俺を待っていたのだ。こんなに夜遅くまで。
何だか申し訳ない気持ちになってきたから取り敢えずペコリと会釈。ユリカはそんな俺の腕を引くと、そのままアリーナまで連行した。
果たして俺の試験の命運はどうなるのやら。
あらま、これで前回ので登場した加護の紹介が終わってしまいました!
次回からは用語?について説明していきたいと思います。




