本陣突撃!
今なら阿修羅をも陵駕している気がします。
魔王軍残党の本陣に突っ込む部隊は現在二手に分かれて挟み撃ちすると言う作戦に出ている。左側から攻め入るメンバーが俺、マシロ、赤髪剣士、ヒウラ、レキシア。右側から攻め入るメンバーはシュラ、セイン、メシア、ゴリラみたいな体格の男と言った構成になっている。テキストは戦力外なので数には入れていない。
「数はそこまで多くはないようだな」
「いや、百人以上いる時点で十分多いと思うぞ!」
真顔でレキシアが涼しげに言うものだからついツッコんでしまう。やはり勇者一行の感覚は何処じゃ可笑しいのかもしれない。
「今セインから連絡を受けました。あちら側も時期本陣に着くそうです」
「分かった。そろそろ牽制にどでかい魔法お見舞いしてやろう!」
「それで敵全滅希望」
「戦う気あんのかお前!」
俺の魔法攻撃牽制の提案で戦いが終わる事を望む赤髪剣士に訊ねる。すると赤髪剣士は肩を竦めて首を横に振った。完全になめている。
「否定すんなよ!!」
騒がしい俺達を余所に、ヒウラが詠唱に入り始める。
《炎の精よ。今破壊の理を解いてここに力を示せ。――かの者らを無に還す灼熱よ》
火力のとんでもない最上級魔法を放とうと詠唱を紡いだヒウラが片手に握った杖を掲げた。その杖の先端部位である水晶が真っ赤に輝き、頭上に馬鹿でかい火球が生成される。
「コロナレクイエム」
火球とは言い難い魔法攻撃が敵本陣へ飛来して火柱を立てた。今ので大半が滅んだに違いない。これを合図に、本陣へと別動隊が突っ込む。
「俺達も行くぞ!」
「どれ、我が剣舞を披露してやろう」
レキシアが俺達の誰よりも速く行動に移し、新たに用意したのか鋭く輝く銀色の大剣を片手に敵の群れにその身を投げ込む。刹那、レキシアを中心として群れていた敵が宙に巻き上げられる様にして吹き飛び、バラバラになった。大剣である必要はあるのかと聞きたくなる。
流石に敵が人なら戸惑いもしただろうが、幸いな事に魔王軍残党は殆どが魔物。倒すのも気が楽になると言うものだ。命を奪う、と言う点では心が痛まない事も無いのだが致し方のない犠牲と割り切るしかない。
それに、以前まで生業としていた探偵になるまでは格闘家にして世界各地を暗躍する殺し屋をしていた。死体を見るのも作るのも慣れている。今思えば殺し屋をしていた2年程は気の迷いだったのかもしれないが。
探偵。そう言えば探偵をしていた時は晟良と言う相棒がいた。今頃何処で何をしているんだろうか。
「初陣が残飯処理ってのも納得いかないけど…いっちょ噛ましてやるか!」
俺が集中している間にマシロと赤髪剣士がレキシア同様、敵の群れへと突撃して次々と敵を蹂躙していく。俺の必要性に頭を悩ませながらも魔力を解放する。
《地の精よ。我が呼び掛けに応じその力を示せ。――地を駆けアレを貪れ》
《使役》の加護を織り交ぜ、発動する。地面より突き出た三つの大岩が狼を連想させる形状へと変化を遂げる。完成した三体の岩石狼は自分の敵を見定め、地を蹴る。
「グランドゴーレムシリーズ・グランドウルフ」
咆哮。僅か三メートルのグランドウルフがその巨躯にそぐわぬ速さで本陣へ飛び込み次々と魔物共を噛み砕いていく。このグランドゴーレムシリーズと呼ばれる俺が使用した魔法は知っている生物の名をゴーレムと置き換える事でその生物を再現する最上級魔法だ。
ただし欠点があり、生成したゴーレムは命令を一切受け入れず魔法の効力が切れる寸前まで破壊の限りを尽くす様になるのだ。謂わば自己犠牲の魔法ともなり得るわけだ。
だから俺は《使役》の加護で生成したゴーレムを制御したのだ。ちゃんと敵と味方を区別して敵のみを殲滅する様に指示してあるのでゴーレムによる両成敗は起こらないだろう。
「あのゴーレムを従えるとは…流石亡世の支配者を仲間に引き連れるだけはありますね」
「あの程度従えずに魔王なんざ倒せねぇからな」
そしてここで俺は気付いた。結局、自分自信が戦っていない事に。
「この際召喚術でも学んで他力本願をスタイルにしていくか…」
「何をぶつぶつと言っているんですか?」
「いや、気にしないでくれ」
そうか、召喚術士と言う手もある。俺ならば加護の力で従えれない者はいないし、天職かもしれない。
改めて自分の道を絞り始めた俺は、放課後に教室掃除をしている生徒の数程に少なくなった本陣へと歩み始めた。戦闘特化過ぎてあっと言う間だったな。
『剣舞』の加護
女神アルテシア様よりレキシアが授かった上級の加護。
常時発動型で剣を振るえば振るうほど五感が研ぎ澄まされ、剣の切れ味も一撃ごとに増していく。




