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RETURN ~少女好きの俺が悪者を倒す~  作者: 半裸紳士
悪討疾走編
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証明の決闘1

そろそろ涼しい季節になってまいりましたね(汗だく)

「…貴様が魔王を倒したと言われている」

「ああ。ツヨシだ」


道中教えてもらった副団長の特徴である赤髪の男の前まで歩み寄る。視線は俺達に集まり、その全てに敵意を感じた俺は肩を竦めてみせた。

敵意を向けられる義理など無いのだが。


「ますます信じられんな!この様な格好だけの覇気が無い男が魔王を倒したなどとは笑わせてくれる!」

「勝手に笑ってろ。誰が何と言おうと俺は魔王を倒したって言い張るぞ」


実際に倒したのはマシロだと言う事実は伏せてさも自分が倒したかの様に振る舞ってみせる。その態度が気に食わなかったのか、副団長は少しばかり顔を歪めて何かを言い掛けた。

しかし、ミレリアス王が割り込んだ事で出掛けた言葉は踏み留まる事になる。何故か俺を睨む副団長に敢えて挑発的な笑みを浮かべておくとしよう。


「言い合っていても仕方がなかろう。両者、決闘の形式は既に把握しているな?」


お互いに頷く。ちなみに決闘の形式は至って簡単だ。俺、シュラ、マシロがただ副団長が用意した対戦相手と戦い、気絶もしくは降参させたら勝ちと言うシンプルなもの。ただ、俺達には一敗もしてはいけないと言った条件がある。

理由は単純に魔王より弱い騎士団に負けては魔王討伐の証明にならないからだ。正直シュラ、マシロに関しては心配はしていないのだが、一番の問題は俺だ。

なんだかんだで異世界に来てずっとシュラ、マシロ、勇者一行に戦闘を任せていた俺はただの一度も戦いを経験した事がない。勝つか負けるかではなく、戦えるか戦えないかの勝負になってくるのは目に見えている。

一応魔王城での生活や旅の合間にトレーニングをしたりシュラに訓練相手になってもらったりしてはいたのだが、イマイチ自信がない。果たして俺は勝つ事が出来るのだろうか。


「ならば配置について最初の決闘に出す者を選べ」

「私側からはエレキを出そう」


副団長が出してきたのはエレキと呼ばれたダークオレンジ色の髪をした男。音も立てずに前に出るエレキは瞑っていた目を片方だけ開き、俺達を見据えた。


「正直のところ、私は魔王討伐の真相などに興味はありません」

「なら何故そこにいる?」

「ただ純粋に戦ってみたいのですよ。魔王を倒した英雄と」


途端に覇気が空間を支配し、その発生源であるエレキが静かに腰に提げた木剣を抜き取って切っ先を地面に突き刺す。その覇気、姿を見て即座にただ者ではないと判断した俺は息を呑んだ。

これが、アレチェスカ王国が誇る騎士団なのだ。副団長から小物臭がするからと気は抜けない。


「さあ、誰がお相手して下さるのです?」


音を立てないその姿。忍を思い出した俺は速さの勝負になるかと予想し、マシロへアイコンタクト。無言で前に出たマシロに一つ、ちょっとした道具を渡す。

今朝、商業街で買った魔力抑制具を加護の力で改造した物だ。名付けるなら制御腕輪。強過ぎる二人の力を制御する為の道具と言ったところか。

黙って制御腕輪を受け取ったマシロは何の躊躇もなく制御腕輪を左手首に嵌めた。


「それは自分の力を制御する為の道具だ。今回はそのままの姿で力を七割抑えろ。いいな?」

「………」


無言で頷くマシロを確認し、俺は高らかに宣言する。


「俺の方からはマシロを出そう!」

「ふむ。これで両者共に揃ったな?準備は良いか?」

「勿論ですとも」

「………」

「ではアレチェスカ騎士団第三部隊隊長、エレキ・サラティーナ対魔王討伐の英雄、マシロ殿…勝負開始!」


決闘開始の合図と共にエレキが駆けてマシロの背後に回る。そして手にした木剣を首筋に向けて振るい…


「な、にっ…!」


標的を失った。当てる物体も無く盛大に空振ったエレキの木剣の刀身に、マシロが静かに降り立った。その光景に周囲の騎士達がざわつき始める。聞き耳を立てると、どうやら最速を誇るエレキの攻撃がかわされた事に驚いているようだ。

皆にはどうやらエレキの駆ける姿が見えていないらしかった。そこまで速いか、などと思いながらただエレキを見下ろすマシロを見る。何時もと変わらない表情でただ立ち尽くしていた。


「この私の剣をかわすとは…なるほど、魔王を倒したと言うのは紛れもない事実のようですね…!」


二撃目。三撃目。四撃目。徐々に速くなる剣技を悉く躱してしまうマシロは避けるのにも飽きたのか、不意に反撃に出た。

鋭い蹴りが猛攻をかいくぐってエレキのお腹に直撃。瞬間、エレキが過去最速で吹き飛んだ。これは一溜まりもない。

俺は安否が気になり、壁に軽い凹みを作って倒れるエレキを恐る恐る確認した。どうやらまだ起き上がろうと頑張っているみたいだが、慈悲無きマシロがその背中を踏ん付ける事で頑張りは無駄に終わる。

容赦ない追撃にとうとうエレキは意識を失ってしまい動かなくなった。もしかすると微睡みの盗賊団よりも弱いのではないだろうか。

沈黙が続き、少ししてミレリアス王が我に戻って叫んだ。


「こ、この勝負!マシロ殿の勝ち!」


少し遅れて歓声が上がる。マシロは何食わぬ顔で戻って来てシュラに抱き着かれる。しかし無反応。

何時もの事だが。


「やったね、マシロちゃん!一回戦は見事に大勝利だよ!」

「敵の勢力を軽く見て緩い訓練をしてきたのか、全力を尽くしてこの様なのか…ひょっとして滅茶苦茶弱いんじゃねえのか?」

「…はい、そうですね!どうやら前者が正解のようですよ!」


過去の記録を覗いたテキストが俺の予想を確かなものにした。本気かこの騎士団。いくら勇者一行がいるからと言っても手を抜き過ぎなのではないか。俺でもエレキの動きは普通に視認出来たと言うのに。

とにかく、完全勝利で一回戦を突破した俺は二回戦に備えて制御腕輪をシュラに渡した。


「次はシュラを出す事になるだろうから、先にこれ渡しとくぞ。効果は聞いたから分かるな?」

「うん!任せてよ!五割でやる!」


果たしてシュラの半分の力は何処まで通用するのか。俺は何だか少し楽しみになってきて笑みを浮かべた。

『守護壁』の加護

女神アルテシア様よりセインが授かった最上級の加護。

思い通りに敵の攻撃から身を守れる壁を具現する事ができ、瀕死級の攻撃以外は

何であろうと壁を壊す事は出来ない。

この加護で守れる対象は所持者が認識し、守りたいと思うもの全て。

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