到着!アレチェスカ王国!
テキストは過去から現在までの事しか記録していないので判明していないものに関しては無知です。
9月24日更新
自分では完全に打ち込んで投稿したつもりでした。どこかで誤動作して殆ど消えてしまっていたらしいです。くっ、モチベが…!
謎の卵を仲間に加え、とうとう念願のアレチェスカ王国の王都に辿り着いた俺達は勇者一行を先頭に城下町へと足を踏み入れる。今まで以上に興奮する俺を見てか周囲の人々が白い目で見てくるが、そんな事は気にしていられない。
アレチェスカの城下町はまさに俺が想像していた城下町そのもので、これまでの旅で起こった嫌な出来事を忘れさせるほどの光景だった。
「おお!なんだこれ!?」
「それはリモンだよ。この世で一番酸っぱい果物で有名なんだけど、知らない?」
「俺、ジャポニーに住んでたはいいけど本当田舎の方でな…」
実際のところは都会生まれなんだが言わないでおこう。田舎が通じていないらしく首を傾げているほどだ。都会が分かる筈がない。
そんなこんなで他愛も無い会話に花を咲かせていると噴水のある広場に出て来た。東西南北に分かれた大通りが今来た道を含めて四つ見受けられた。
「それはそうと、セイン達はこれからどうするんだよ?」
「取り敢えず俺達は一度城に行って魔王討伐の件を報告しようと思ってる」
「じゃあここでお別れって事になるのか」
「そうとは限らないよ。魔王を討伐したのは君達だし、この事実は包み隠さず話すつもりだ。きっと呼び出しが掛かると思う」
何処までも正直な奴だ。本来ならば王様との対面は勘弁したいところなのだが、ここはセインの真っ直ぐな気持ちに応えて大人しく応じる事にしよう。
「そうか。俺はこの街の一番良い宿屋でしばらく寝泊まりするつもりだ。もし用があるなら訪ねてくれ」
「分かったよ。じゃあ、またね」
拳同士を小突き合わせ、再会を約束した俺達と勇者一行はお互い目的地へ向かい始める。勇者一行は魔王討伐の件を報告するべくアレチェスカ城へ。俺達はとにかく休憩するべく一番良い宿屋へ。
そう遠くない日にまた会う事になるだろうと確信しつつも、俺はテキストを手に取りこの城下町の地図を開かせた。
「一番良い宿屋は何処だ?」
「えーっとですね、今来た道が南の商業街ですから…西の貴族街の一番大きな建物がベストな宿になりますね!」
城下町の地図に自動で線が引かれていき、現在の位置から宿までの最短ルートが示される。ナビゲーターかこいつは。
兎にも角にも、一刻も早く休みたかった俺は大人しくナビゲートにツッコまずに宿屋へ向かう。いい加減シュラも疲れたのかぶーぶー文句を垂れ始めた。
そうして辿り着いた宿屋はテキストの言葉通り、貴族の屋敷よりも大きな建物だった。外装もまさに豪華ですよと言った雰囲気を醸し出している。
俺は息を呑むと、心を決めて両開きの扉を押して入った。何せこう言った場所へ入るのは初めてなのだ。緊張しない筈がない。
「うおっ…」
入ると途端に眩い光が俺の視界を覆った。否、それは光ではなくただの錯覚に過ぎない。俺は内装のあまりもの豪華さに全てが光り輝いている様な錯覚を覚えてしまったのだ。
視界を片手で隠す様に覆い、天井から吊り下がるシャンデリアを見上げる。落ちてこないだろうかと冷や冷やしながらも広間を進んでいると不意に目の前にスーツに身を包んだ小太りの男性が現われた。見る限りこの宿屋の店主らしい。
「いらっしゃいませ!見ない格好ですね?外からやって来たので?」
「まあ、そんなところです」
思わず敬語になってしまう。どうにも俺は豪華いこーる敬う対象として認識してしまっているらしい。
ちなみにここで一番に騒ぐだろうと予想していたシュラはあまりもの綺麗さに言葉を失っていた。
「さぞお疲れになられたでしょう。ここは少しばかり値は高いですが一泊分の料金で朝昼晩の食事が付く上にお風呂までもが各部屋にご用意されております故、疲れを快適に癒やす事を可能としています」
「一月分の料金を出します。全員同じ部屋で用意していただけますか?」
即答。ここまで優遇されるのなら泊まらない手はないだろう。この豪華さなら居心地はともかく快適さは期待してもいい筈だ。
小太りの店主は一瞬キョトンと間抜けな顔をしたが即座に営業スマイルへと表情を作った。
「一月ともなりますとかなりの額になりますが…?」
「構いません。お金ならここにたんまりとありますから」
そう言いつつ、宿までの道中でマシロのカバンから取り出した金貨300枚が入った皮袋をシュラが俺の隣で持ち上げる。
「おお、何とも豪快なお方!一月で料金は金貨300枚となりますがよろしいですかな?」
「ええ」
シュラが差し出した皮袋を両手で受け取った小太りの店主は何かの加護か魔法を使ったのか、少しの間皮袋と睨めっこをして頷いた。
「確かにお受け取りました。お部屋へとご案内させましょう」
小太りの店主が手を上品に叩くと同時にささっとこの宿の従業員らしきスーツの若い男性が小太りの店主の隣に現われた。さしずめ案内係と言ったところだろうか。
「この方々を空いている出来るだけ大きな部屋にご案内しなさい」
「かぁしこまりーっ!!」
「明らかにこの人仕事間違ってるだろ!!」
思わずそう叫んでしまった。まさかここでこの様な伏兵と出会すとは思わなかった。
小太りの店主も同じ思いなのか、少しばかり苦笑しながら頭を軽く下げた。当の本人は自覚していないのか、何の話やらと言った表情をしている。はったおすぞ。
「では着いて来て下さいぃー!!」
「お前案内する気あんのか!?」
着いて来いなどとほざきながら颯爽と階段を駆け上っていく若い従業員にツッコみを入れながら後を追う。見失えば迷子になってしまいそうだ。
何故休む為に取った宿で疲れなくてはいけないのだろうか。そんな疑問など知らんと言わんばかりに先頭を切って走る若い従業員と駆けっこを繰り広げる。そうしてついに俺達は宿の部屋に辿り着く事が出来た。
なんと部屋の位置は階段を登ってすぐ近く。事もあろう事か俺達は若い従業員に翻弄されているうちに二階を一周していたのだ。誠に憤慨である。
「あ、あぁ…疲れたぁー…」
「もう限界だよぉ…」
荷物を部屋の隅に纏めて置いてソファーに身を投げ出す俺とシュラ。ソファーが優しく全員を包み込んでとても気持ちが良い。
先程の駆けっこの件もあり疲れが増した俺の意識は徐々に薄れていく。明日は商業街に出て買い物をしよう。色々見て回って気に入る物があるといいが。
最後に明日の予定を軽く立て、今度こそ俺は意識を手放す。快眠とはまさにこの事。一瞬のうちに俺の意識は夢の世界へと飛び込んでいくのであった。
『才能』の加護
女神アルテシア様よりセインが授かった最上級の加護。
この加護の所有者は初見の事を簡単にやって熟せれる様になる。
例えば初めて剣を振るうならば剣神レベルの技術、策を練るなら某軍師レベルなど。所有者の成長に合わせて熟練レベルも変動するので最初から達人級などはよっぽどの天才でない限り不可能。




