カズレオン・ボナパルト
ドスッドスッドスッ
大きな何かが馬小屋に近づいてくる。
「ん?ん?ん?何だ!?」
慌てる少年。
「あ!オークの兵隊さん!」
エルフが駆け寄る先に、大きな怪物が居る。
怪力自慢の魔物オークだ。
「おう、マリー元気してたか?」
「えへへ、マリーはいつも元気だよ!」
彼・彼女らはとても親しげそうにしている。
「そういやさっき、小屋の方から大きな音がしたんだが・・・大丈夫だったのか?」
「うーん、アレフが凄くビックリしちゃって大変だったんだー」
「そりゃあ災難だったな。ところでマリー、あれは誰だ?」
少年を指さす。
「えっとね、カナガワケンヨコハマシから来たカズくんって言う人だよ」
「人間?珍しいな、こんな所に。それに、出身地なんて聞いたこともない地名だな」
「うん、そうなの。だからマリーもあの人の事よく分からないんだ・・・」
「ふーむ・・・。それよりマリー、いつもの頼む。」
少年の話題が打ち切られる。
エルフは小屋に用意していた数枚の金貨をオークに手渡す。
「おう、助かる。じゃあな、マリー。クククッ」
「うん、またねー!」
ぴょこぴょこ跳ねながら、可愛らしくオークを見送るエルフ。
「あれ、上げちゃっていいの?」
そう少年が質問する。
「うん、いいの。だって兵隊さんの御願い事だもん!」
「なあマリー。貯金とかってあるの?」
「貯金?馬小屋にあるのは馬とお馬さんに上げる餌だけだよ?」
「うーん・・・生活に困ってないの?」
「ぜーんぜん、だってマリー幸せだから」
にっこりと笑う。
少年は何かを察したような気がした。
このエルフの深い闇。
言い知れぬ憂鬱さ。
けれど少年は、自分ならば何とかできるんじゃないかと、そう思った。
異世界への希望。
現実に打ちひしがれていた、彼の情熱が再燃する。
「そっか・・・じゃあさ、僕がマリーをもっと幸せにしてあげるよ!」
「え~っ!?」
目が丸くなるエルフ。
「カズくん、そ、そんなのどうやって?だってマリーはもう幸せなんだよ?」
「うーん。じゃあ大きい城を作ろう!マリーが住むには広すぎるお城だ。」
「大きいってどれくらい?」
「あの山より大きな城!」
遠方の山を指差す。その山は雲をも突き抜ける巨大さだ。
「む、無理だよー!」
「出来る!」
突然馬に乗る少年。
手綱を掴み、前方を指差す。
「現実に不可能という文字はあっても、異世界に不可能という文字はない!!!」