全能感
最高の気分だ。最高に気分がいい。
今なら何だってできる。空だって飛べる。勉強を一切しなくても司法試験に受かるだろう。人気がありすぎて大統領にだってなれる。頭がいいんだよ俺は。いつでもどこでも上手く立ち回れるんだ。要領のいい天才なんだよ。
頭だけじゃない。肉体だって最強だ。腹筋はバキバキに割れて、喧嘩は負けたことがない。練習せずにUFCのチャンプになれるだろう。オリンピックは当然金メダルだ。史上最強の男なんだよ。
金も地位もある。経営している会社はみな一流大企業だ。高層ビルから見下ろす景色は最高だ。愚民どもが小さく見える。
もしかしたら俺と他人は決定的に違うのかもしれない。俺だけが神に選ばれている。いや、この世界は俺という神が見ている夢なのかもしれない。俺こそが天地創造の支配者なのだ。
……声が聞こえる。耳障りな声が。いったい何だって言うんだ。無線のような、ノイジーな。
「事故発生。場所は×××。薬物使用の疑いあり」