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第12話 「少女」

 

「よろしくね……」


 少女の声は乾いた空気を清らかに響かせた。とても心地いい音色だ。

 声の主の風貌は、その声に相応しかった。顔立ちからは落ち着いた美しさが感じられる。髪は深みのある焦げ茶色をしていて、彼女の動作に合わせて揺れ、自身の肩を撫でている。

 私の方を見つめる澄んだ瞳に吸い込まれそうだ。わたしの目から視線を外さないので、思わず照れてしまう。


「あ、自己紹介しないとね……。わたしはアリシアっていいます。なんていうその、一応わたしも超人です」


 アリシア。それが今日、試験において行動を共にする者の名だ。名前まで綺麗で、非の打ち所がないな、とわたしは思った。強いて言うなれば気弱そうに見えるくらいだ。


「わたしはエレナ。よろしくね。……ところでアリシアさん、一応超人っていうのは?」


「それは……」


 彼女が口元に手をやると、彼女の身につけていた装備品、薄い胸当てや腰当てがが揺れる音が聞こえた。


「すぐわかると思うよ」


「そ、そうなの……?」




 一次試験は能力そのものの性質を確かめるため、ただ能力を発動する、という内容のようだ。

 あの眼鏡の教官に名前を呼ばれた者の組から、居館の裏口から出てくる別の隊員によって館内へと連れられていく。


「あの眼鏡の人が見るわけじゃないんだ」


「そうみたいだね」


 わたしはアリシアの返事を聞いて、今思ったことを口に出していたことに気づく。


「じゃあ、あの人はなにをするんだろう」


「さ、さぁ……見てるだけ?」


 アリシアがそう言って可愛らしく笑うと、わたしも共に笑った。

 よかった、アリシアとはうまくやっていけそうだ。




「エレナ、アリシアペア! ついてこい」


 隊員の1人がわたしたちを呼ぶと、居館の裏口の扉が開けられる。

 わたしは呼吸をおいて、アリシアに「じゃ、行こっか」と言った。アリシアが「うん」と小さく返事をする。

 超人はその性質上、ある程度気が強い者が多いと思っていたが、装いや言動ともに可憐なアリシアを見ると、そうではないことがわかる。単にアリシアが珍しいだけなのかもしれないが。

 アリシアからは、いい意味でも悪い意味でも"超人としての気迫"が感じられなかった。




 身につけられた麻の衣服には汚れなどなかったし、膝の辺りから申し訳程度に露出した足は白くて綺麗だった。ところどころにつけられた装飾品は、全身を包み込む白を基調とした衣服を彩っている。

 これで戦えるのか、などと考えたが、彼女が先程言っていた「一応超人」というのはこのことだろうか。

 そんなことを考えながら、わたし達は裏口の扉をくぐった。あとにアリシアが続く。アリシアは少し警戒する素振りを見せた。




 そこは、天井が高く、床は乾いた土のようなもので固めてあった。広さも、人が二百人程度入っても、まだ少し余裕ができそうだ。

 端には燭台が並べられており、窓のない部屋を薄明るく照らしている。


「ここが試験会場……?」


 アリシアが天井を見上げながらつぶやいた。




「そうよ。ここであなた達は試験を受ける……。お助け隊に入れるか否かは、ここで決まる……」


 若い女性の声だ。その声はわたし達より、少しばかり若く思える。


「誰ですかー? 隊員さんですかー!?」


 わたしはどこにともなく叫ぶと、周囲が暫くの静寂に包み込まれる。


「その通り」


 返事は少し間をおいて帰ってきた。しかし見渡してみても、人の影が見当たらない。むしろ先程名前を呼ばれて居館の中に入っていった者達の姿すら見つからない。


「どこにいるんですか!?」


 声の主に問いかける。もしやこれは彼女の能力か。姿を消す能力。

 すると、私たちが入ってきた扉とは逆方向の壁が動いた。どうやら隠し扉になっているようだった場所が、開いたのだろう。


「ここよ」


 見当は外れた。だが、もう1つの予感は当たっていたようだ。そこから現れたのは、見るからに年下の女の子。

 彼女は童話などに登場する魔女のような、先のとがった黒の帽子をかぶり、同色のローブに身を包んでいた。

更新遅れました。今回で無事新キャラを二人出すことができて安心しました。

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