プロローグ
「超人」とは、人類を超越した存在である。
国の繁栄、そして滅亡の裏に、超人は居る。
「超人」とは、人であり人ならざるもの。
神が与えし宿命から逃れることはできない。
「超人」とは、異端である。
力が呼び起こすのは、創生と終焉である。
わたしは荒野を、決められた陣形を保ちながら走り、敵に近づいていった。敵に集中し、拳に力を込める。
身構えていた敵がこちらに向けて走りはじめた。
わたしはその敵に、拳に込めた力を解放する。拳を解放すると、掌から炎が噴き出すように出現し、敵を包み込む。
「言っただろ! お嬢ちゃんの能力じゃ、俺を無力化することなんかできないってよ!」
「喰らえ……ッ」
わたしはその敵の言葉を聞き、さらに力を放出する。炎は敵を包み込める程に大きくなる。
敵はその直後、灼熱の火炎によって焼かれた。
しかし奴は自身の言葉通り、その炎を走って抜けた。
「なんどやっても同じこと!」
「うおおおっ」
敵が得意げな表情を浮かべ、わたしめがけて鉄拳を叩き込もうとした瞬間。わたしの反対側、敵の背後に潜んでいた少年が雄叫びをあげた。少年は拳を強く握りしめると、敵めがけて拳を放つ。
「なに!? 仲間だと……」
「隙を作ってくれて感謝するぜ。くたばりな!」
少年の拳が命中したと思えば、敵は周囲の空気が弾けたように吹き飛ばされた。
「もう終わりだ、観念しな。王都へ向かう人々を襲う暴徒よ」
少年は、吹き飛ばされ地面に突っ伏した敵に近づいて行きながら告げた。
「人々を守るため、このお助け隊が成敗するぜ」
「ひぃ……助けてくだせえ、見逃して────」
男は刑罰を恐れたのだろう、少年にせがむが、少年は清々しい笑顔を浮かべこう言った。
「お助け隊が助けるのは、正義の心を持った人だけだ」
直後大気が振動し、辺りは衝撃波に包まれた。