魔神 現る
『グッ』
「カッカハ....貴様何を」
門番の男は、既に真っ二つにされ地面に転がっている。
「おい!おっさん!あいつらは何処に行った?」
「なッなんの事だ!?」
「とぼけんなよ、ジンだよ!何処に行った?」
「チッチームバルバロッサは、にっ西の森を抜けてシードに向かった。それだけだ!」
「あぁそれなら良い、死ね」
「グッあぁぁぁ」
『バシュゥゥビシャビシャビシャ』
大量の血をばらまき、おっさんは地面に倒れた。
「おい!ティンガ!変装を解いて良いぞ!」
「ふぅ.....人間の姿になるのは、ちょっと疲れるね兄さん?」
「ふん!まんまと騙されて、先に行きやがったな!弟よ!」
「じゃあそろそろ、人族狩りを開始しようか」
「あぁ
まず手始めに、チームバルバロッサ達を殺す」
「右手の借りがあるもんね?じゃあ追いかけよう!」
「あいつ」
『ピュルル』『タカタカタカッ』
「ドウドウ」
馬に乗り、西の森を抜ける為に全速力で、森を駆け抜ける。
ティンガは、遅い。
「ティンガ!遅いぞ、奴等がシードに着いたら、手遅れだ!急ぐぞ!」
「うん」
・・・森を抜けた。
「ティンガ!お前は良い、あとから付いてこい」
「でっでも兄さん?あっ行っちゃった」
俺はティンガを置いて、シードを目指す。
・ジン視点・
シードに向かい歩みを進めて、一キロ!
やっと街が見えてきた。
そこでユキナは、ポツリと呟いた。
「シードは私の、生まれ故郷でもありますの、もう少し歩くと迎えが来るはずですわ」
ユキナの故郷か、って何で言わなかったんだろう、家柄を気にして居るような感じだったからな、言いにくいのかな?
「なぜそれを、先に言わなかったんだ?」
「それはその....」
黙りこむユキナ。
「黙ってちゃわからないだろう?」
「・・・」
あーじれったい。
「家の事話したくないなら良いけど、もうちょっと俺の事、信頼して欲しいな~?」
別に信頼して欲しい訳じゃない、この場合こう言うと、大抵の女はベラベラと語り出すものだ、それはあの時のブタも一緒だった。
「そうですわね。
信頼してますわ、ですが聞いたからといって、嫌わないで下さいね!」
「あぁ」
「私の家は、シードの中でも最高の貴族で権力者に最も近い存在でも有りまして、それで周りから、お嬢様・金持ち等と言われて来ましたから、少々言い出せなかったのですわ」
「そうか!良いじゃねえかそんなの!
俺なんか、普通の一般の家に産まれ育った、普通の一般人だぜ」
「そうですわね!すみません心配をおかけして、ですが街の中だけでも、私の指示に動いて下さいね!」
つまり、顔をたてろと言いたいのだろう、人間どうし争うのは好ましく無いからな。
「あぁ、あんまり無茶な指示を出すと、暴れちゃうぞ!」
と言い、ユキナの右胸に指先で三回、ツン・ツン・ツン。
「もっもう、恥ずかしいですわ」
「嫌だったか?」
「いえ、そうじゃありませんの」
場が和み、二人で笑いながら歩いて行くと、鎧姿の男達が三人こっちに走ってくる。
「「「ユキナお嬢様~!」」」
彼らは何なのだろう?
怪しいと思い、腰のナイフを抜いた。
「んっ何奴?」
「ユキナお嬢様から離れろ!」
「さもなくば、ただでは済まさんぞ!」
結構距離は離れているのに、叫びながらこっちに向かって来る。
「ジン様!!!!ナイフをお納め下さい!」
「大丈夫なのか?」
「ええ!あの者達は、私の身を守る為に、街の中で最もお強い、親衛隊の方ですわ」
と話をしていると、ユキナ親衛隊が目の前に立ち止まった。
「おい!ユキナお嬢様から離れろ!」
「ユキナ!!」
「えぇ!この者は、私の最愛の人ですわ」
てか最愛?
この際何も無いならそれでも良いが。
「さようでしたか、おいそこの者!!名を名乗れ」
すかさず、腰のナイフを掴む。
「名を名乗れだぁ?先に名乗るのが礼儀だろうが?」
『パチン』ユキナに平手打ちを頬にされた。
「ジン様!!ここは私が」
なぜ叩かれたんだ?
「この方は、ジン・バルバロッサ!!
コールド育ちの最強の戦士であり、最愛の人でもある。
お前達がどうこうできる、相手では無いですわ」
『グッ』三人は拳を握りしめ、しぶしぶナイフを納めた。
「申し訳ありません、お嬢様!」
三人は、ユキナの前で地面に膝をつき、頭を下げている。
これが権力がある者の姿か?良い感じだ!
「ジン様、先の無礼お許し下さいませ。」
「あぁ良いんだ」
「貴様!」
『シッ』ユキナの一喝で、場は静寂に包まれた。
何だか空気が重い、だが何故か面白い。
テンガ視点
んッあそこに居るのは?
間違いない、バルバロッサ達だ!
ククク殺してやる、例え右手が使えなくとも。
距離にして約50メートル、馬を全速力で走らせ、一直線にバルバロッサ目掛けて突っ込む。
『タカタカタカッでぇやー』
ジン視点
何か背後から、殺気を感じる。
殺気のする方へ、向いて見る。
そこには、馬に乗ってこっちに向かって一直線に突っ込んで来る、魔神の姿があった。
全身鎧で顔を兜で覆っている、あの時の騎士か?
イヤそんな筈はない。
距離にして約10メートル、馬がこちらに突っ込む前に馬の右足を、避けつつ切断した。
馬は盛大に、顔面から転け動かなくなった。
だがそこには、魔神の姿は無い。
「上ですわ」
ユキナの指示、良いタイミングだ。
空中から、襲いかかってくる魔神を避け、兜を引き剥がす。
そして目を疑った。
「テンガ?」
「クククッバレては仕方ない、バルバロッサ!!貴様をここで始末する!ティンガ!」
「ハーイ」
後ろの方から、ティンガが馬に乗り全速力で突っ込んで来る。
だが避ければ、後ろのユキナに突っ込む、どうすれば?
「貴様!ユキナ様は、私達が何とか守る、私達は気にせずまずは目の前の敵を」
頼もしいこと、言ってくれんじゃん!
「ティンガ!あっちは任せる!俺はバルバロッサを殺る」
強い思いは分かるけど、こっちはそう簡単に、倒されねぇぞ!
「うんわかった。」
『シャ』
サイドステップを踏み、ユキナ達から遠ざかるが、テンガも付いて来ている。
「ふっさすがに早いな!」
「黙れ小僧」
小僧とは失敬な、一応18なんですけど!
『シャキン』ナイフを構え、ユキナの方へと走る、ティンガの馬にナイフを投げつける。『シュゥゥゥ』
『グシャ・・・ヒィィィン』
「うあうっうあー」
『ガサ....ザザー』
馬とティンガは、転けた。
これでユキナ達も、体制を整える時間は出来ただろう。
「バルバロッサ!!やるな」
「テンガそろそろ、始めようか?」
「望む所だ」
お互いに拳を握り、上半身胸の辺りに拳を構えた。