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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

猫とネズミと十二支と。。。それでも彼らは伝説となる

作者: 露樹素忍(いたみどめ)

初投稿につき優しい気持ちで読んでいただけると幸いです。

ハッピーエンド希望の方は少し重くなるかもしれませんのでご注意下さい。

十二支と騙された猫からヒントを得て見切り発車で書いてしまったので文章も内容も読みづらかったら本当に申し訳ありません。

変わってしまったのは彼だったか彼女だったのか…

[その昔、彼らは確かに愛し合った者たちだった]


xxxxx


彼の名はシャイン。

サファイアの様に澄んだ目に少し硬めな灰色の短髪…そして整っているのにどこか冷たい神経質そうな顔立ち。

気まぐれなロシアンブルーの様な猫の彼がたまに見せる笑顔はとてつもない破壊力があった。


彼女の名はリム。

小さなつぶらな黒い瞳に肩で軽くカールした柔らかな黒い髪…そしてどこか愛嬌のある顔立ち。

落ち着きのない彼女はいつもあちらへこちらへと慌ただしいネズミちゃんだった。




とある国の鎖国時代を思わせる艶やかな着物姿をした人々。

少し歩くと世の女子たちが騒ぎ出す様な様々なオシャレの中心の様な店が建ち並びもう少し歩くと飯処が多岐に渡り更に奥の街の中心へ進めば立派な建物【神殿】となる。

そんな栄えた神都で育った彼らは年頃になると自然(?)と出逢い恋をし至って平和に愛を育んでいた。


「ねぇ。シャイン…私あなたに愛されてとても幸せよ?」

昼下がりの公園のベンチで寛いでいたところ露店をあちこち行ったり来たりのリムからの突然の愛の告白であった。

目を少し見開き驚いたがすぐさま悪戯な笑顔になり

「くくっ…お前その顔、ネズミってよりもリスだな。うん。俺もリムに愛されて幸せだよ」


どこにでもいる相思相愛の……いや。所謂バカップルである。



それから数日後。

彼らは神殿へ呼ばれる事になる。

神殿の最奥の間にて【玉座】に君臨する厳かな雰囲気を湛えた壮齢の青年。

口を開いていないのにしかし聞き取りやすいハッキリとした言葉でどこからか低い声を発した。

『よく来た我が息子娘たち これから貴様らに永い時間をかけそれぞれの能力を生かし隣国との大戦に出てもらう』

「「「「「「は??」」」」」」

呼ばれた13名の少年少女たちの頭に?マークが飛び散った。

彼はこの世に住む総てのモノを息子娘と呼ぶので?が浮かんだのはその後の言葉である。

何故なら彼らの住むこの世界は平和そのもので隣国との交易も盛んで戦争や略奪という二文字などは無縁であり辞書にも載らないくらいマイナーなものだった。

「何故デスカ?」

勇気ある凛々しい辰の彼ドラール。

背まで流れる金と銀の中間の色彩を放つ髪を一つにまとめまるで遊び人を思わせる大きく前だけはだけた濃い緑をベースとした華や蝶が舞う派手な着物の襟を整えながら顔を歪ませ尋ねる。

それを横目にふるふると震える未の青年シープも標準装備の眉尻を下げた蒼白で息も絶え絶えの声で続く

「恐れ多くも我が、お…王よ、私たちは見ず知らずのモノ、も居れば学友や親友、恋人も居り、ます。…騎士や戦士でもない、そ、そのモノたちを集め大戦にて戦えなどと、な…何を…お考えでごzむぐぐ…」

一所懸命訴えたので後半限界を超え憐れな子羊は卒倒しかけた。

そんな彼をドラールはすかさず肩を寄せ支える。

身寄りのない孤児育ちの彼らは生まれてから寝食を共にした無二の親友だった。

他の彼らも同様に皆、友人や親友に恋人と寄り添い固唾を呑んで我が王の次の言葉を待っていた。

それを一瞥してから表情を変えず徐に王は立ち上がり告げる。

『そんなもの決まっておる。個々13獣の時期主になりうる資質を持つ貴様ら。

辰のドラール、未のシープ、丑のキノト申のカッシ寅のハンシ卯のラビリア巳の女帝ネーク・スレイ午の火之カノエ酉のスザレイク猫のシャイン子のリム戌のポーチィ亥のキガイア…お前たちのそれぞれの生い立ちも関係性も全てを承知の上でこの国の命運を懸けての大戦の最前線に立ってもらいたい』

一瞬ポカンとしつつも全力でお断りしたい面々が顔を顰め口を開く…その数刻前に女帝ネークの高笑いが響いた。


「あーら我が君エド・テンイルツ王はついにワタクシとのご婚約を決めて下さったのだと来てみれば…」


美しくどこか華やかな花魁を思わせる装いをし真っ赤な口紅に真っ赤なネイルの妖艶な彼女はきつい瞳を更に吊り上げ扇をパチンと鳴らし顎をあげ冷やかに王を斜めに睨む。

「とんだ茶番ね。ワタクシそんなに暇でなくてよ?」

踵を返そうとする彼女の少し後ろで幼さ残る顔立ちの無理にネークの姿を真似て薄紅を引いたカノエが堂々とした面持ちで意見する。

「あんまりですわ。散々弄んだネーク姐様に詫びもなくこの期に及んで結婚の申し込みでなく戦への・・・…身勝手ではございませんか?

確かに姐様は気が強く我がままで奔放で時折恐ろしいほどの暴走娘で時に本当に愛想尽きそうになるし王様愛をかなりこじらせてそちらでも暴走して居りますが・・・この仕打ち…う・・っ・・・」

後半は泣いたのではなくネークの視線に気付き焦った声だ。

「カノエ…あんたの仕打ちの方が酷過ぎるわ。心が折れてもう貴女の事を焼いたり煮たり寧ろ生で醤油と生姜で美味しく戴きたい気分よ。覚悟なさい。」

満面の笑みでの死刑宣告だった。

丸々無視して王が答える。

『これは決定事項だ。追って沙汰があるまでに各々準備をして置きなさい。これは一切の他言無用…酷な事を言っているのは承知している。』

申し訳ないと王は悲痛の面持ちで去って行った。


シャインは空気になりつつ事の成り行きを傍観し頭の中で何かを計算している様だった。

冷静で気まぐれな美青年シャインと愛らしい笑顔を絶やさない人懐っこいこれまた美少年ポーチィに挟まれ落ち着きのない一回り小さいリムが何やら所在なさげにきょろきょろしていた。


岐路につき徐にシャインが口を開く

「ポーチィ…なぜお前がいる。お前の帰り道は反対側だろ?」

冷たい眼差しのシャインが問う。

愛らしい少年の様なポーチィは笑顔を崩さず答える。

「えー?何言ってんのぉ?リムは元々僕の彼女だったしぃ?まだ好きだからどっかのむっつりに送りオオカミされない様にこーして守ってあげてんの♪」

「・・・・・お前気付いてない様だから教えとくけど、キガイアがラビリアを傷付けたやつ探してたから親切な俺はお前の名前を教えてやった」

そこまで言ってシャインが片方だけ口端を上げた。

ポーチィはみるみる真っ青になり顔の頬に両手をあてた瞬間けたたましい音が後ろから聞こえやがて轟音と共に怒りを含む罵詈雑言と凄まじい表情のキガイアが迫ってきた。

「キ・・・キャーイーン!!!」

ポーチィの本能が逃げろと告げる前に逞しい足が地面を思い切り蹴り出しアッという間に彼らの影は跡形もなく遙か彼方へ消えていた。誤解だぁ!!!!!と叫ぶこえだけ木霊していた。

物凄く間抜けな本領発揮の瞬間だった。

それを見送りさて、とシャインはリムに向き直る。

「リムは・・・行かない方が良い。恐らく…沢山の死人が出る。悔しいけど、守り切れる自信がない」

シャインの目を見ていられずリムは顔を伏せた。

「でも・・・シャインといたい。シャインと戦えるなら一緒に傍で戦いたい。私も主教育を受けて認められた一人よ!簡単に負けたりしない…それに最後はやっぱりシャインが傍にいなきゃ嫌」

耳まで真っ赤な彼女を抱きしめ答える。

「リム…俺・・・うん。ごめん。俺もお前といたい」

空が深い蒼色から淡いオレンジ色にかわりやがて闇に溶け込むまで二人は話し合い笑い合った。

そして共に国というより自分たちの住処や立場を揺ぎ無いものにするために戦う事を決めた。

その日から二人は一緒に暮らすようになった。

ただ少し不満なのが時折訪れるポーチィの存在が邪魔だなって感じるぐらいでそこは狙った様にキガイアが助けてくれる。

あの日すっかり誤解が解けた彼らは親友になっていた・・・・・?

「よぉポーチィ!まぁた二人の邪魔してんのか?」

「げっキガイア・・・邪魔なのはそこの泥棒猫だ!僕はただリムに愛を囁きに来ただけ」

「それが邪魔なんじゃねーの?」

「お前ホント失礼」

「まぁまぁ、それより[俺の]ラビリアが買い物行ったからお前付き合えよ」

襟首を掴まれズルズルと引きずられるポーチィが遠吠えの様に吠える。

「なぁぁぁぁんで僕が君のストーキングの付き添いしなきゃいけないんだよぉぉぉ!!!さっさと振られてイジケて引き篭れクソ猪ぃぃぃぃぃぃぃぃぃ・・・・」

「そん時はお前も道連れだ」

「キャイ―――――ン!!!!!!!!」

もうすでに影はない。

それを確認したのち開けっ放しの扉を閉める。

「まったく、五月蠅い奴」

シャインが強めの口調で放った言葉にビクリと肩を震わせる。

「シャイン・・・あの、怒ってる?」

え?と振り向くと少し申し訳なさそうにリムが両手を前に握りしめこちらを伺う様に見ていた。

「大丈夫だよ。見た目と正反対の粘着質な男の排除の仕方について考えないといけないなって思案してただけで48通り程思い浮かんだし少し席を外すね」

ポーチィと関わったあと必ず見るこの黒い笑顔。

少し変な汗が流れながらも無理しないでね、と微笑む。


彼は猫の長候補だけでなく神殿に勤める優秀な錬金術師であり最先端の技術を誇る研究室の責任者だった。

リムはというと鼠の長候補にして神殿に勤めてはいるが諜報機関の落ちこぼれだった。


一見傍から見れば不釣り合いの二人はシャインの一目惚れという意外なところから始まった。

同じ神殿に勤めていたがお互い重要な機関を司っていたので出逢う事はなかった。

でもそれは偶然に本当に偶然に彼の前に彼女は落ちてきた。

それはまるで某有名アニメ映画の様に高い高い塔の上から彼目掛けて・・・

逃げ場をなくした彼はとりあえず一か八か受け止める事にした。

覚悟を決めた彼の元へ落ちてきた少女はふわりと重力なんてまるっと無視した様な軽さであった。

何日も食べてないかのように痩せ細りもう目覚めないのかと思うくらい蒼白な顔に色味のない唇、重たい瞼に何故か不思議な想いが浮かんだ。

・・・・・彼女の瞳に映りたい。

シャインは家へ連れ帰り昼夜問わず名前も声も知らない彼女を介抱した。

医学にも精通していたチートな彼は医療施設へ連れていくより自分でやってしまった方が遥かに早いと即座に判断し今に至る。

それから五日目の夜。

彼女が目覚めた。

蒼白な顔は相変わらずだが頬は少し色味を取り戻しシャインの望んだ彼女の瞳が彼を映した瞬間彼はあの不思議な想いの名前を悟った。

彼女は自分の置かれてる環境に戸惑い慌てたがやむなく薬で少し落ち着かせてから名を名乗り大まかな職業そして今に至るまでを話した。

ㇹっと一息ついて彼に感謝を述べ彼女は話し出した。

「それは大変ご迷惑をお掛けしました。助けて下さり本当にありがとうございます。私はリム。神殿にて働かせていただいて居ります。他部署とはあまり関わらないのでシャイン様の事は存じ上げませんではしたない姿をお見せして申し訳ありませんでした」

シャインはふっと和かな笑顔でリムを見つめた。

「畏まらずに。シャインとお呼び下さい。貴方のような可愛らしい方がなぜあんなところにいらっしゃったのですか?」

「・・・・」

「すいません。出過ぎた質問を・・・」

シャインが咄嗟にいけない事を聞いてしまったのだと思い違う話題を振ろうと詫びを入れた瞬間リムが口を開いた。

「いいえ。命の恩人様ですからお話致します。」

少し目を臥せて覚悟を決めたのち彼を真っ直ぐ見る。

その視線に心を奪われたのは言うまでもない。

「…私…足を滑らせてしまったんです。食欲もなくずっと無理して、に…仕事にあたっていたら限界がきてしまい足を滑らせて、しまったって思った瞬間意識が薄れて・・・死んだって思いました。本当にありがとうございます」

「食欲もなくって…あっ。他に悪いところでも?すいません栄養失調には気付いたのですが・・・」

と顎に手をあてブツブツと考え出した彼を遮るように顔を真っ赤にした彼女が両手を左右に振り出した。

「い…いいえ。いいえ!!違うんです。あの・・・ちょっと公私混同してしまって申し訳ない話なのですが・・・か…彼が、浮気をして…それで別れたばかりだったので・・・」

少しムッとしつつもシャインは誰もがときめく様な渾身の笑顔で彼女を見つめ問う。

「ちょっと込み入った事で申し訳ないのですがその彼の名前お聞きしても?」

少し黒いものが混じっていた。


次の日の昼。すっかり元気になった彼女を彼は爽やかにさらっと見送った。

結果、名前は聞けなかったが彼の情報網で見つけ出した。

そして別れた原因がまったくの誤解であった事も突き止めたがそれをまるっと無視して彼女を手に入れるため周りから囲い込む事に全力を注いだ。

数か月後、彼女と難なく相思相愛になれた。

それからはどこにでもいる幸せな恋人同士だった。

どこからか嗅ぎ付けたポーチィが邪魔をしだすのはそれから一か月後の事であった。

愛を囁くというより神都で叫ぶというこの行為でシャインは気持ちが戻ってしまうかと少し焦ったがリムはやっぱり軽い人だとここでポーチィをチャラ男認定した。


数ヶ月後二人の元に王からの通達があった。

それからはもうめまぐるしく日々が過ぎた。

傷付きボロボロになりそれでも互い想い合い最前線で涙も枯れ果て戦い続け残ったものはとても悲惨な現実だった。







「シャイン貴方が愛してくれた事ずっと忘れない…愛してるわ」


「リム…君が俺を愛してくれた事誇りに思う・・・愛しているよ。これからも」





xxxxx

数百年数千年の時が過ぎやがて彼らは伝説となりその中で淡い恋物語が紆余曲折更には捻じ曲げられた事を知る者はもうこの世には居らず真実は深い深い闇の中になりを潜め永遠の眠りについた。


伝説から派生した物語の冒頭はこうだ。



「・・・その昔、彼らは確かに愛し合った者たちだった。


将来を誓い合い子まで宿した彼女は幸福の絶頂にいた。大戦の最中何を違えたのか彼女は彼を裏切る。後の【エド王の十二支】に数えられなかった彼は失意の中その人生を終えたんですって」


「おばあちゃん、なんでリムはいちばんになれたの?裏切り者なんて・・・あの賢王エドが許すはずないわ」


「そうだね。諸説あるけどおばちゃんもそれが不思議なの。リムは彼の技術さえも奪い落ちこぼれから万能になり王にも及ぶ力を得たから見込まれ称号を与えられたそうよ。

でもね・・・きっとリムは裏切ってなんかいないのよ。

エド王も永い生涯その真実だけは決して話さなかったらしいから何もわからないけれど。あんなに愛し合っていた二人だものきっと二人を失い失意の底に陥ったのは彼女のはずよ」


「おばあちゃんあのリムやシャインを知ってるの?」


目を細めどこか遠くを見るように彼女は語る。

「・・・・そうね。あれから沢山の時間が過ぎたのね。あなたのおじいちゃんドラールと出逢って少し経ってから同志なのだと彼らを紹介されたのよ。それが最初で最後。

でもね。彼らはとても愛し合っていたわ。深くお互いを想い合っているのを一瞬で分かるくらいに。

私もそろそろドラールからお迎えが来る頃だし彼らの深い愛が消えてしまうのが寂しくてこんな話をしてしまったわ。

辰の人生は本当に永くて素敵だったけど彼らの生きていた姿を見たモノはもうこの世にいなくなるのそれが悲しいわ」


「おばあちゃん、だいじょうぶよ。もうリムたちは再会しておじいちゃんがうらやむくらいイチャイチャしてるんじゃないの?おばあちゃん負けないでね!!!」



今日もこの世界のどこかで永遠に語り継がれる大戦の伝説の中に埋もれた恋の物語。


Fin.



ここまでお付き合い下さりありがとうございました。

書いてるうちに残念なアイドル系美少年ポーチィが勝手な行動を取り始めかなり楽しかったです。

彼のおかげで十二支それぞれのストーリーも書いてみたくなりました。

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