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-03-

 

 ――――――学園ロプト、その外装は中世の城をイメージに創られている。

 その他にあるすべての近代的な建物の中央に堂々とそびえたつその様は異様ながらもそう感じさせない神秘的な雰囲気を纏い、絶妙なバランスでとけこんでいる。

 

 だが、外装とは違い、内装の方は近代的な最先端技術を用いられており、中に入ると別世界が広がっている。



 そんな新界においてシンボル的で最も目立つ建物に、新界に初めて足を踏み入れる新入生達が目を奪われて、目を見開き、足を止めてしまうのも無理はないことだ。


 もちろん、ロア、エル、ノアの三人も例外ではない。



 「うわー、すっごく大きいね!」


 「そうだな……」


 「ああ、本当に……」



 三人は新界に入るとすぐに他同様にロプトに気付き顔を見上げていた。


 特にエルはテンションが高くなっているのが口調でいやというほど伝わってくる。


 残りの二人はそんなエルに生返事するだけである。

 

 エルとロアの二人は孤児というのもあり、このように大きい建物を見る機会が今までになかったのだからエルのテンションにロアが驚いているのも頷けるというものだが、愛人の子といえ貴族の家のノアさえも驚いているのは単にロプトの外装がそれほどまでに凄かっただけである。



 「これからここに通えるんだよね! 楽しみだな~」


 視界にロプトを捉えながらこれからここに通うであろう自分の姿を想像(もうそう)しているのだろうかうっとりしたような口調で声を漏らした。


 男の子と女の子とでは女の子の方がお城への思いれが強いのかもしれない……


 「ここまですごいとは…… やっぱり実物は違うな……」


 そんなすっかり想像(もうそう)に囚われて自分の世界に入り込んでしまっているエルの横では、ロアとロアに同意するように無言で何度もうなずくノアがいた。



 いくら秘密主義の新界だからと言ってさすがに事前に入学希望者の中で申請があった者にはパンフレットの郵送は送っている。しかしさすがに内容はパンフレットといっても数枚の写真と最低限の説明が乗せられているだけであるが、今新入生たちが見ている光景と同じ風景の写真はその数枚の写真に含まれていた。


 あとパンフレットに載っていたことといえば、授業料の料金と制服のデザイン、授業内容、教職員の紹介、前年度の入学者数などぐらいである。



 「っ、おいそろそろ行くぞ」


 一番早く我に返ったロアが二人に声かける。


 「そうだな、迷惑になるのもあれだしな」


 そう言って辺りを見渡すと既に周りにいた他の新入生たちも視線を前に戻して歩き出しているようであったし、なおかつこうしている間にもまだ新しく新界に来る者たちがいる中でずっとここにいては邪魔になってしまうであろうとの判断であった。


 周りの人たちも同じ思いであろう。



 ちなみにエルはといえば既に、ロアに声をかけられた時点で正気に戻っていた。

このようにエルは妄想癖があるのに対して切り替えが早いといった少し特殊な性格の持ち主である。







 歩き出して係りの人が言っていたようにそこまで5分ぐらい行くと広場に着いた。


 公園の広場は思っていたよりも大分広くて最初にいたあの空間とは比べ物にならないぐらいにましであった。広さもそうだが親族がいないので人も少なくなったのも大きい。



 自分たちがいる場所よりも離れた場所にある遊具には子供が楽しそうに遊んでおり、子供連れの親子が多く見られる。

 なんとも微笑ましい光景だ。





 またそうした中、軽く時間をつぶしているとすぐに新しい係りの人?が到着した。



 「は、はい、そっ、それでは一旦人数が規定数そろったようなのでこれからのことを説明しましゅ!」


 

 それはもう、全員が見つめる中盛大に噛んだ。


 新しく来た係りの人は女性であり背はそれほど高くはないがかわいらしい感じの印象が見受けられる人だった。


 見るからに来た時から緊張している様が丸わかりであり、全員が何となく思っていたことを案の定に裏切らずやってのけてくれた。



 「    」



 誰ひとり物音ひとつ立てない無音の空間が世界を支配した。先ほどまで聞こえていたはずの子供たちの声さえも聞こえてこない。


 

 だがそんな静寂を破った人物も係りの人であった。先ほどの出来事などまるでなかったかのように説明を始める。

 いや、本音を言えばなかったことにしたいのだろう。現に当事者は先ほどよりも三割増しで顔を赤くしながらも打って変って淡々としている。



 そんなうんともいえない雰囲気の中で声を上げる人などいるはずもなく、皆静かに聞いている。

 その顔は微笑まし者を眺めているような、どこか緊張感が抜けてしまったようであった。


 そんななかでここにいる皆、男女問わずに気持ちが一つに重なった。



 (((((かわいいなぁー)))))










 「では、これからまず皆さんには一年生寮に向い男女別に部屋割を確認してもらって荷物の整理をしてもらいます。

ちなみに言っておきますが今現在ここには人族しかいませんが部屋割では種族は決まっておらず部屋はどこも二人部屋なので同室の人とは仲良くしてくださいね。」


 

 「まじかよ……」

 「私、大丈夫かな……」

 「違う種族の人、俺まだ見たことないんだよな」

 「ケモノミミがモフれるチャンスが! グフフ……」



 


 

 その説明に期待と不安の声、一部例外が入り混じって辺りから聞こえてくる。



 「男女別ッてことは今度からロア君とは同室じゃぁないんだね……」


 「馬鹿か、そんなこと当たり前だろ!」


 周りとは違う点に反応し少しさびしそうな声を上げるエルに対してすぐさまにロアが声を荒げる。その顔は先ほどの係りの人の顔には及ばないものも赤くなっていた。



 「えっ、今までってさ二人は孤児院ではどうだったの?」


 二人にやり取りの中で、男としては聞き捨てにできないセリフに反応したノアは素朴に浮かんだ疑問を声に出した。 



 「あぁ、えっと実は孤児院にいた時は俺とエルは同じ部屋だったんだよ」

 「えっ、本当に?」

 「本当だよ」

 「年頃の男女がか?」

 「なんて言うか、同じ年頃の子が俺たち二人しかいなくてだな、小さい時からそうだったからなんやかんやでずっと部屋が変わらなかったんだ」


ロアは苦笑いする。


 「まじかよ…… なんだよそのシチュエーション。羨ましすぎるだろ!」

 「な、何っ急に!」

 「そうは言ってもだな、小さい時からずっと一緒だったから恋愛対象とかいうよりも兄妹といった感じの方が強いんだけどな」


 それを聞いた瞬間、エルの表情が笑顔のままロアの方向へ首がまわり、固まる。

ただし目が笑っていなく光が灯っていない。



 ロアは全く気が付いていないが、ちゃんとその様子を見ていたノアは理解できた。




 「しかも鈍感かよ!」



 


 ――――ノアは彼女が欲しかった。

別に決してノアは不細工などではない、むしろ他人から見たらイケメンの部類に入る。

しかし今現在のノアの彼女いない歴=年齢であった。

むろんロアもそこに関しては同じではあるがスタート位置がノアが圧倒的に出遅れている形となる。



 そして、付き合っていないとはいえそんな二人の関係が羨ましかった。


 その根底にはノアの出生が大きく関わっている。


 そしてノアはここに誓った。



 (俺、絶対に卒業までに彼女をつくる!)



 まあ考え方は正しいのだが、少し歪んでいる。

 


 

 「では、移動するのでついてきてくだしゃい」


 みんなは黙って係りの人の後をついて歩き出す。





  

 しばらく歩くと寮が見えてきた。


 「ここが皆さんが四年間寝泊まりすることになる一年生寮のサルデーニャ寮になります」


 そのまま大きな入口をくぐり、中に入る。


 一階は大きなエントランスホールのような造りになっていて結構な広さがある。

大勢で集まって騒ぐのにもってこいの場所である。


 中には既に来ていた人達が端の方で喋っているのがちらほら見える。



 「では、説明しますね。この様に一階はこのホールと横に食堂と購買があります。別に食事場所は強制ではないので外や、学校の方にもある食堂でも可能です。卒業生や在校生の多くは朝、夜をここで済ませて、昼は学園が一般的ですね。

 次に部屋ですが、二階の方にあり左右の階段で区切り右の階段が男子、左が女子部屋に続いています。

特に男子ですが、別に女子の方へも行って構いませんが夜、7時以降は禁止とさせてもらっています。もし破るようなことがあれば相当のペナルティーがあると覚悟してくださいね。


 それでは部屋割を発表します。既にペアの人がいるところもありますので仲良くしてくださいね」



 端の方に待機していた数人の係りの人が紙を持って出てきて順に名前を呼びだし、部屋番号の鍵を渡していく。



 『エルさん』


 「あっ、呼ばれたみたい先に行くね」


 そう言ってエルは鍵を受け取り先に行ってしまう。





 『ノア・フォスターさん

    ロアさん    』



 「ん?」

 

 二人同時に呼ばれたことに疑問を持つも遅れると迷惑になるのですぐに向かう。


 

 『お二人は同室になります。そしてこちらが部屋の鍵になります』


 そう言われて鍵を受け取る。


 「なんだ、誰と一緒になるのか緊張していたが拍子抜けだな」

 「俺としても、ラッキーだったな」



 さっそく皆と同じように部屋に向かう。

部屋の番号は0358号で角部屋であった。


 鍵を開けて中に入ってみる。


 「おー、結構広いし備え付けの家具も新しい」

 「ちゃんとユニットバスもあるみたいだな」


 一通り部屋をあさって満足して、ベットの上で話していたら、疲れていたこともあって二人はあっという間に眠りに落ちてしまった。



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