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人ごみは少しずつではあるが確実に前に進み雑談している間になんやかんやであと、もう少しといったところで一旦話題が途切れ一瞬の静寂が訪れた時、ロアが実はずっと気になっていたが、なかなか聞けずにいたことをノアに重々しく切りだした。



 「……ノア、さっきからずっと話していてそうなのか気になっていたんだが、フォスター、姓があるってことはノアは貴族かなんかじゃないのか? 

 俺はあまり貴族とか社会の様子とかに詳しくないけれどフォスター姓はさすがに知っている」



 「…………」



 その質問に今まではずっと楽しく話をしていた中で初めてノアは沈黙する。その様子を見てロアは話を続ける。



 「貴族といえばこう言っちゃあれかもしれないが、あまり平民をよく見ていない、見下しているものだと思っていたんだが、ノアはそんなそぶりも見せないし何よりそっちから話しかけてきたからどういうものかと分かりかねない部分があったから観察させてもらっていた」



 「……それで、俺はどうだった......」



 ノアが沈黙を破る。さっきまでと同じように楽しそうな雰囲気で話そうとしているつもりかもしれないが、その声は重く重厚なものとなっている。



 「……服は一見して平民と似たようなデザイン、色合いをしているものを着ているが、生地は真新しいのか高級なのか分からないが、どうしても隠しきれない気品が出ているな。

 それにさっきエルが何もないところで急に転びそうになったことがあっただろう、その時に最も早く行動におこし防いだのはノアだったな、助けた時の動作、歩き方、動き、そして気付いていないのかもしれないがずっとお前は周りの様子を窺っているかのように絶えず僅かながら首が動いていたぞ。

 最後のはともかくとしてそれ以外のは全部貴族に当てはまるものだった」




 たしかに、ちょっと前に3人で雑談しているときに何の前触れもなく急にエルが転びそうになり前に倒れた時にノアがとっさに手を出して体を支えて助けたことがあった。

 何気ないことのようだが、もしこの大勢の中人が一人転んで前の人にぶつかってしまえば将棋倒しになり大勢の人が怪我をしただろう。それにこの中には貴族の人も多い、そんな人に怪我をさせてしまえば後はどうなるかなど目に見えている。



 そしてそんなナチュナルに大変なことを何もないところでしでかそうとしていたエルにはため息しか出ないが......





 「そうか、そこまで見られていたなんてなんか照れるな!」


 一度お茶らけたように返すがすぐに真面目な顔になる。

 

 「ああそうだ、たぶんロアが想像している貴族のフォスター家であってる」


 「そうか」


 「でもまあ、聞いてくれ。 そうはいっても俺はフォスター家の分家にあたる家柄でそれに加え愛人の子である俺なんかは地位なんてあってもないようなものだ。

 だからというわけじゃあないが、貴族か平民だからって差別なんかはしてないぜ」


 自分の境遇についてさも何でもないかのように答えたが、ロアにしてみればそんなノアの境遇はいかに辛く大変な思いをしてきたのかは想像できる。世間的に貴族と愛人との子は母親とともに邪険にされ、捨てられるか、いい方では養育費と最低限の住むところを与えられ後は放置される。貴族側からしてみればこの子など念のためのスペアとしか思っていない。話を聞いて驚き、無理やり聞き出すような真似を取ってしまったことを一瞬悔やんだが、ノアが目を合わせて”気にするな”と言うように見つめてきたのでそれ以上は考えないことにする。


 「誤解しないでほしいがノアがそんな差別をするような人だなんてのは見ていたらすぐわかった。

 気になっていたのはそんな大貴族の子がなんで平民なんかと口をきいているのか不審に思っただけだ。まあ、ちょっとした誤解だったようだが。」



 「まあ、そうだな普通気になるよな、でも結果はしょせんこんなもんだよ。俺は貴族の子であってそうじゃない…… じゃあさ質問ついでに次はおれからいいか?」


 うんうん、と頷き納得すると、ノアはなぜこんなことを今、その疑問をロア聞いてきたことに疑問が湧いてきていた。


 「仮に俺がロアの予想通り貴族だったとして、別にそのままほっておいてもよかったんじゃないか?俺たちはたまたまこの場で会い、話していただけでこのまま別れてしまえば、次にいつ会うかもわからない他人だろ。どうしてそんなことを聞いたりしたんだ?」



 人間は厄介事には極力関わろうとはしないことは普通のことだ、ましてや自分が平民で相手が貴族であるとおもっていたならばなおのことそうだ。


 聞かれたロア自身はそんなことなど委に返さないかのように答える。


 「簡単なことだ。ロアの人柄は大体もう分かっていた。だからこそこの場で終わりなんかじゃなく友達になりたいと思った。それだけだ」


 その言葉を聞いたノアは一度目を大きく見開くと、そのあとの目は少し潤んで見える。でもその表情は何かばつの悪そうな顔であった。

 

「そうか……ならしょうがないな。でも、本当は俺はお前の思っているような人間じゃあないかもしれないぜ」


 「その時は、俺の見る目がなかっただけだよ。」


 ロアは自身の人を見る目には結構な自信をもっていたため、もしそれが間違って裏切られたとしても、仕方ないと思っている。









 「なんだかよくわからないけど、二人とも友達になったんだね」


 いままでずっと黙って二人の様子をみていたエルがそう言ってまるで自分のことのように嬉しそうな顔で二人の間に入って互いの顔を見あげる。



 「ロアだけじゃねえよ、エルとも友達だ」


 ノアはそんなエルの様子を見て訂正する。


 「本当に、えへへ~、嬉しい///」

 

 エルは本当にうれしそうにする。もしエルに尻尾があればぶんぶん振り回していたことだろう。


 「そうか、そうか、嬉しいか」


 ノアも嬉しそうに笑ってエルの肩をたたいた。


 「あっ、私もノア君に質問いい?」


 一区切りついたところで、エルが先ほどから気になっていたことを純粋そうな顔で聞いてくる。


 「いいぜ、何でも聞いてくれ」


 「じゃあ聞くけど、さっきからなんでズボンのチャックあけっぱなしなの?」


 「俺も気になってた」


 ロアもそれに気付いていたため便乗する。


 「馬鹿か、お前らは先にそれを先に言えよ!」


 悪態をつきながら慌てて、ノアは自分の下半身へ目を向けチャックが開いているのを確認すると急いでそれを上にあげた。


 「いや、新しい貴族のファッションかなんかかな、と思って」


 「言ってもいいのかわからなかったから」


 ロアはとぼけたように、エルは真面目に答える。


 「言っていいから、そういうのは早く教えて、お願いだから!」


 「善処する」


 「覚えてたらね」


 「うわー、俺すっごい恥ずかしい……」

(本当にいつからだ......あのトイレにいったときか……、それとも……)


 ノアの顔はゆでダコの用に真っ赤になりそれを隠そうと両手を手に当てて必死に隠そうとしていた。


 「気にするな」


 「ドンマイ」



 「そう慰めてくれるけど、二人のせいも少し入ってるんだからな」


 「「?」」


 「あっ、もういいです。すみません見苦しいものを見せて、俺が全面的に悪かったです」


 ノアは既に二人にいじられて半泣きだ。




 少しして落ち着いてから、話題をそらすように小さく咳をつき次の話題を投げかける。


 「質問つでに、もう一つ二人にいいか」


 「うん、いいよ」


 「答えられる範囲なら」


 そんなノアに”さすがに少しやりすぎたかなあ”と思い、二人は気をつかう。


 「二人とも見送りの家族とかは来ないの?俺の方は、まあ、愛人の子だからあれだけど」


 「そんなことでいいのか、簡単な理由で見送りに来る家族がいないからだな」


 「私たち孤児だったんだよ」


 「そうか、悪いな」


 今度はノアが気の毒そうな顔をした。


 「気にするなお互い様だ」



 それ以降は会話もあまり続かずについには3人とも誰も口を開かなくなった。何かいけないものの一端に触れてしまったかのように何となく今はダメな気がしてい、それを皆が感じていたため沈黙を保ったまま少しづつ足を進め時が来るのを待った。


 

 最初に沈黙を破ったのはエルであった。


 「んー、やっと見えてきたよ」


 ここにきてやっと自分たちの目的の場所に到着した。距離は実はそれほど遠いものではなくあまり歩いてはいないが、この人ごみの中長い間立ち続けるのは精神的にきつかった。


 「疲れた」


 「同感だな」


 エルは何も言わないのにたいして男性陣は案外情けないようだ。



 順番も回ってくると受付の人が紙とボールペンをを渡してくる。


 『それではここに名前と性別、生年月日を書いてください』


 素直に指示に従い書き終わり紙を提出すると受付の人が何かコンピュータに打ち込みすぐにこちらに向きなおして次の指示を出す。


 『書けましたら、何でもいいので何か魔法を発動させてください』



 「火よ」


 エルが先陣を切って指先に火を灯す。


 「燃えろ」


 ロアもエルに続き同じように指先に火を灯す。


 「おっ、それいいなじゃあ俺も 着火 」


 それをじっと見ていたノアも真似する。


 

 三人が無事に魔法を発動させたことを確認して試験官が再びパソコンに何か打ち込むと、それを見ていた受付の人が目を合わせて頷く。


 「はい、それで構いません」


 このようにロプトの入学試験はとてもあっけのないものだ。


 受付の人は笑顔を作り軽く一礼する。


 『以上で試験は終了です。おめでとうございます。

 それでは転移門(テレポートゲート)をくぐってもらってすぐ前にあります公園の広場にて待機しておいてください。

 全員そろい次第、おって別のものから連絡がいきますので』


 「「「わかりました」」」


 そう返事をし前方の壁に描かれている魔法陣をくぐると、真っ暗なトンネルの様になっており少し離れた先から光が見える。


 その光に向かって三人は仲良く並んで進む。


 光がまぶしくそれぞれが手で目に影を作り、眩しそうに目を細める。


 そして、3人は人生で始めて新界へと足を踏み入れた。



 一瞬ですが、ジャンル別日刊ランキング49位になっており、ビックリしました!(>_<)



 もっと、頑張るのでよろしくお願いします(__)



 追記 この世界は簡単に言うと日本の生活レベルに電気の代わりに魔力が使われて、化学兵器の無いような世界です。

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