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 過去が今のあなたの糧となっているのなら、記憶はあなた自身である。


 そして―――











 ワイワイ


 ガヤガヤ


 ざわざわ




 時刻は早朝。いつもならまだ人が表を出歩くには幾分か早い時間ではあるが、今日に至ってはその限りではなく、周りを見渡してりると多くの人々がある一つの場所に向かって人の流れを作っている。



 流れている人々のほとんどが親子か家族づれのようだ。


  

 それもそのはずで、今日は新界にある学園都市ロプトへの入試試験、それと入寮式が同時に行われる、魔界・天界・獣界・人界この4つの界の15あるいは16歳の少年、少女にしたら一生のうちの一大イベントがある日である。



 そもそも学園都市ロプトとは100年前にすべての世界を巻きこみ人口を全世界で3分の2まで減少させた混界戦争後に、二度とこのようなことが起こらぬようにと魔界・天界・獣界・人界、この4つあるすべてのあらゆる技術・魔法・知識・物質を元に造られた新界に設立。

 また、ロプトはすべての界において中立の立場に存在し、これは絶対である。運営・維持も4界が等しく行い各界において起こりうるであろう可能性の戦争にの武力に対する抑止力と人材の育成を目的としている。

 


 新界には中央に学園ロプトとその周辺から放射線状に伸びるように街が形成され、そこには学生寮やお店、店の従業員とその家族が暮らす家が立ち並んでいる。



 そんな新界は4界が協力して運営しているためそれぞれの文化が入り混じり、すべての界の住人がなるべくストレスを感じずに快適に生活できるようにと造られてい、またロプトは高水準の教育に教員、学園の施設、設備といった環境が整っており、そのおかげか信頼も厚い。



 そんな新界に店を出店したいという業者もとても多く、そのため必然的に厳しい選定や人選を通り抜けた界お墨付きの店しかなく、そうはいっても何も値段が高いといった店だけでなくリーズナブルな店まで幅広く出店されており、女子生徒に人気のスイーツ店や男子生徒お気に入りの安くて量の多い食堂といった店もあるため、そういった理由から親、子ともに人気が高い。



 そんな学園に入学したいと希望する生徒はもちろん多い、が、たいていはただ唯一の入学試験の内容により受けるまでもなく入学できる生徒というものは生まれた瞬間から決まってしまっている。



 そんな試験の内容はいたってシンプルで魔法が使えるか否かそれだけである。



 4界すべてにおいて魔法を使うときに必ず必要となる魔力を持たない者などは存在しないが、それを使えるか使えないとでは大きく異なる。

 使える割合としてはおおざっぱにいえば約200人に一人の割合である。多いと思うか少ないと思うかは個人の自由として、この世では魔法が使えるものというのは親の遺伝することが大きいと言われている。もちろん詳しくは分かっていないがこれまでのデータではそのような統計が出ている。魔法を使える方がなにかと世では優遇されているため、特に貴族には魔法使いが多い。


 もちろんそうは言っても、親が魔法を使うことができなくても子が使うことができるといったことも結構あるため、毎年新入生の貴族と平民との割合は半々といったところだ。









 

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、ロア君待ってくださいよ―。歩くのが速いです」


「別にそこまで速くないだろう、エルが遅いだけだ」



 人ごみの中なにやら2人組みが周りから迷惑そうな冷たい視線で見られていた。



 そこには、一人は黒髪の短髪の背は少し高いぐらいといった整った顔立ちに、特にその見つめていると天色の瞳の奥にまで吸い込まれそうな、独特な雰囲気をまとった少年に、もう一人は赤といってもどちらかというとピンクよりの髪をポニーテールにしている背はあまり高いとは言えないが出るところははっきり出ている子犬のようなかわいさがみられる少女がいた。



 「仕方ないじゃないですか、荷物が思っていたよりも多くなってしまって」



 そう返事をしている、エルと呼ばれていた少女は大きく膨らんだかばんを両手で一生懸命引きずりながらゆっくりと歩いていた。

 その表情は前にいる少年に”見ていないで助けてくれ”といった目で軽く頬を膨らましながら訴えかけていた。



 「それは単に必要最低限以外の余計なものを詰めこむエルが悪い。俺はしらん」



 そうは言ったものの一応はちゃんと立ち止りエルが自分のところに来るまでは振り返ってエルを待ってあげているロアと呼ばれていた少年は、さっきから目的地まで全く進んでないことに頭に手をあてて悩みながら既に疲れきって疲労困憊の様子のエルを見てついに折れたのか深いため息をつきながらエルのもとに近寄る。



 「このままじゃ日が暮れても転移門(テレポートゲート)まで着かない……だから今回ばかりは俺が荷物を持つよ」


 

 あきれ果てたようにそう告げながらエルの持つ大きなかばんを軽く持ち上げるとさっさと歩きだした。



 「ありがとう、ロア君♪」


 

 少し離れた前を歩くロアに向かってエルが駆け寄り前から覗き込むように見上げながらそうお礼をいうとロアはなぜか顔を横にそむけて”ああ”とだけ伝えて、二人並んでまた歩き出した。



 

 二人も含めここにいる人々がみな向かっている転移門(テレポートゲート)とは、各界にただ一つずつ存在する唯一の新界へと行く手段である。

 なぜそこしか新界への行く手段がないのかというと普段の新界は各界の主要人物や外交官、何かの特例をを除くとそれら以外の人々は立ち入りが禁止されているからである。

 理由は至極単純なもので情報漏洩を防ぐためである。

 新界は各界のいわば最高の技術力、情報が詰め込まれた界であるためである。混界戦争はそれぞれの界がともに甚大な被害を受けたためにやむなく停戦し不可戦条約を結んで今は表面上は平和を保っているように見えるが、裏ともなればそうもいかず、いつどの界が条約を破り進行してきても分からない状態である。  


 そんななか、自分たちの情報は他の界に隠しておきたいと思うのは当然のことで、それと同時に盗みたいとも思っている。


 そして仮に情報が漏れてしまえば今の微妙なバランスが崩れ再び戦争になってしまう可能性が高いため、そのような事態を防ぐため、新界では人の出入りが厳しくチェックされているのである。


 そうはいっても数が多すぎれば必ず見逃すことが出てしまう、そこで一つだけ各界に対して移動手段を設けることにした。



 それこそが今みなが向かっている転移門(テレポートゲート)である。



 

 現在そこでは普段は転移門(テレポートゲート)の通行管理人にあたる人々がめまぐるしく働いている。

 

 試験の判定方法もとても簡単で自身の名前を既定の用紙に書いて通行管理人、今は試験管に一応あたる人に何でもいいので魔法を一つ見せればそれだけでもう入学が可能になる。



 そして、同時にここで家族との別れとなる。

 

 ロプトは4年生の学園で一度入学してしまえば、よほどのことがない限りは卒業するまでもう外に出ることができなくなってしまう。


 さきほどから家族連れが多かったのは、あと4年間あえなくなってしまう家族との別れを惜しむためである。



 そのためここでは毎年、人が溜まりにたまってすごい渋滞ができてしまうのであった。




 そのため、この二人もしばしの足止めを食らってしまっていた。


 「ぜんぜん前へ進みませんね……」


 前に見える人ごみを数回ジャンプしながら見たエルがぽつりと自然に声を漏らす。



 「まあ、しかたないな」


 それを聞いていたロアもこの人の多さにうんざりしながらそう答えた。



 実際、周りを見渡してみると自分と同じくらいの年齢で今年、入学しに来たであろう同年代の人よりもそれを見送りに来た家族の方が多く、気持ちは分からなくもないがここにいる家族の見送りのない者たちにとってはいい迷惑であった。



 「「はあ~」」 


 下を向き大きくため息をつく。



 「どうした、どうした、そんなため息なんかついて」


 そんな気疲れした様子の二人をみて話しかけてくる人がいた。



 「ん、誰だ?」


 ロアが話しかけられた声を聞き顔をあげて声をかけられた方へ顔を向けると、そこには背は同じくらいの金髪に灰色の瞳の少年が手を腰に当てながら立っていた。



 その顔を見ているときに目があったのに気付いた相手が説明してくる。



 「あー悪い悪い、急に声掛けて。なんかすごいため息をついていたからついな、見た感じ君たち二人だけだろ、実は俺一人でさ、周りは家族連ればっかりだから暇だけど話しかけづらくてこの人だかりの中、時間つぶせなくて困ってたんだよ」


 「それでか、なるほどな確かにこの中を一人だけじゃきついな」



 話を聞いて納得する。この大勢でいつ自分の順番が回ってくるかわからない状態でずっと一人でいるのは確かに辛い。



 「私たちもちょうど暇で退屈しているところだったし話し相手になってくれるなら大歓迎だよー」


 

 二人の話を横から聞いていたエルが嬉しそうに笑みを浮かべながらそう答えた。



 エルの言葉を聞いて、やはり初対面の人に話しかけるのは緊張していたのだろう、安心したような表情をした。


 「ありがとうな、俺の名前はノア・フォスターだ。ノアって呼んでくれ」


 そう、自己紹介をして手をさしべてきた。


 「ああ、俺の名前はロアだ。よろしく」


 「私はエルだよ。よろしくねー」



 ロアはそう返事をしながらノアの手を力強く握り返し握手をし、エルは軽くお辞儀をするのであった。




 


 そして、二人はまだ入学していないにもかかわらず同学年の友達ができたのであった。




 

 


 誤字、脱字などがありましたら教えていただけると幸いです

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