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~巡り来る薄紅色の季節~ 2話

もう村までは近い。あの懐かしい、毎日過ごした景色が、もう目の前には広がっている。もうすぐ村に着く。そう思うと自転車を漕ぐ足にも自然と力が入る。

 そして、あの丘を越えると、もう眼下にはルーミスの生まれた村が広がっているだろう。丘に登り、そこで少し自転車を止め、そこから見える景色を眺める。懐かしい景色、そして海から吹き付ける、少し暖かさを含んだ風。戻って来たんだ、私は旅を終えて戻ってきたんだ、この空の下に! そう思うと何故か眼から涙がこぼれた。

 この一年でルーミスは色々な経験をした。それは旅がすべて教えてくれた。辛い事、楽しい事、そして出会いと別れ……

 村に帰れば恐らくもう、タリスも帰っているだろう。またタリスに会える。タリスの優しく微笑む顔を、ルーミスは思い出す。

「タリス! 私、帰って来たよ!」

 一人そう言うと、ルーミスは一気に自転車で丘を下り降りる。

 丘を駆け下りながら、この一年旅で出会った人たちの顔が一人一人思い出される。その顔のどれもを大事に記憶に刻み、ルーミスは生まれた村に、今到着する。そして、自転車を降り、村の中を自転車を押して歩くルーミス。すると、背中から声を掛けられる。

「おお、ルーミス。今、帰ったのか?」

 呑気な感じで声を掛けてくる声、懐かしいあの声……

「今帰ったのか? じゃないでしょ!」

 呑気な感じの声に、ルーミスは振り返りながら怒る。

「タリス! あんたいったいどこまで行ってたのよ! あんたが帰って来ないから……私……」

 今怒った顔だったルーミスの顔はもう眼から涙を零していた。そして、タリスに抱きつく。

「お、おいルーミス」

「あんたは本当に方向音痴なんだから……だから、もう……もう一人で何処にもいかないで! どこかに行く時は必ず私も一緒に行く! だからもう私を離さないで……」

 ルーミスはそう言って、きつくタリスの身体をしがみ付く様に抱きしめる。

「解った。もう、離さないよルーミス」

 優しくルーミスの頭を撫でながら、タリスはルーミスに話しかける。

 風は優しく、ルーミスとタリスを包み込むかのように通り過ぎる。そして、その風には少し薄紅色に色づいていた。



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