詩(過去、そして未来)
詩集シリーズ第3弾
『いまは亡き、故人に向けて。いまも居る、個人に向けて』
掛け言葉がひとつ含まれています。
さがしてみてねー。(なぜかハイテンションです)
っていうか、死を題材にしたからか、急に肌寒く……なってきたような。。。
あのときオレに言った言葉、
お前はおぼえているか?
こんなことを言っていたよな。
「もしもこの世の人類すべてを幸福にできるんだとしたら、ぼくはどうすればいいと思う?」
オレは原始時代に戻ればいいと答えたよな。
そしたらお前は、
「ちがうよ。ぼくがみんなの不幸を肩代わりすればいいんだよ」
真剣な顔で反駁しやがっただろ。
だけどそんなお前を、
当時のオレは喝破してやれなかった。
それが遠因だろ。お前の自殺は。
いいや、もういいや。
お前の死んだ理由なんざ興味ねえわ。
だけどもし、
浮遊霊にでもなってパソコンの画面ながめてるんだったら、
これだけは言わせろ。
『他人の不幸を肩代わりすんだったら、他人の幸福も身代わりになって受けやがれ。お前は良い人すぎたんだ』
オレも良い人だけどさ……。
『お前が荼毘に付されても、遺骨になっても、オレは涙のひとつも流さなかっただろ。その理由、わかるか』
わかるよな。
『せっかく死んで、そんで肩の荷おろしたお前を、また悲しませると思ったからだよ』
いいか。
人を幸せにしたかったら、まずお前が幸せになれ。
不幸があるから幸せになれる。
つらいとからい、漢字で書くと同じ字だろ?
不幸もつらさも、ほどよい調味料になってんだ。
人のスパイスを勝手に奪うな!
からくないキムチなんて、食えないだろ。
それと一緒だ、ボケ。
人生という名の料理には、
不幸も欠かせねえんだっつーの。
甘いものばっかり食ってると飽きるだろ?
だから人は不幸にもなるし、幸せにもなるんだ。
墓標の前にタバスコ置いてくから、あとで飲めよ!
墓参りの帰り際、雪がちらちらと降ってきた。
「お前の汚名を雪ぐためなのかもな。天も許してくれたみてーだぜ」
もし生まれ変わったら、ぜってー同じ轍を踏むんじゃねーぞ!
オレはそう言い残し、霊園をあとにした。
運転中、視界が悪くなってきたので、
ワイパーを高速で動かしたが、
他の車はワイパーなど使ってすらいなかった。
「もしかして、つかれたからかなあ」
オレはそんなふうにも思った。
生きていてほしかった、故人への手向け花になれば。
生きていてくれる、個人への餞になれば。
これほど嬉しいことはありません。