第3話 もう卒業でもいいかな。
寮の中で唯一家から通い、そして唯一女子である加奈さんは
心から涼介さんのことを想っている。
わたしが入学する前から。
最近、加奈さんはわたしをいじめてくる。
身や心が苦しくなるいじめじゃなくて、わたしと涼介さんを
くっつけないようにさせているだけだけど。
昨日はこんなことを言って来た。
「八神くんね、あなたのことが好きなんだって。」
「うそですよ・・。そんな。」
「だよねぇ~?わたしは応援しないわ。」
「え?」
「早く、この学園から出て行けって言ってるのよ。」
「ちょ、あ、あの・・加奈さん。」
「あなたに涼介取られそうだからよ・・・。」
実は昨日、お父さんが電話をしてきて、何だろうと思ったら
本当に留学することになったからだ。
芸能活動はせめて25歳から。それまではパリの大学で留学し
英語やフランス語を学んで、日本に帰国するつもり。
外国で芸能活動はまだ早いといわれ、日本で活動することに。
「わたしはもう・・あと2年でここを卒業するんです。」
「どういうことよ・・。」
「わたし桜木癒亜は2014年でこの寮学園を卒業します。」
「ならいいわ!涼介ともそれで終わりよね?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
わたしは決意を出した。校内放送でこのことを言おう。
そうすれば、自分自身も強くなれる。
マイクに向かってわたしは今までの思いをすべて話した。
ーわたしは中学校のとき、楽しかった空間があっという間に
悲しくて痛くてそんないやな空間になりました。
たくさん支えてきてくれた友達や先生もわたしを見ぬふりで離れていって
一人ぼっちで、ずっと涙を流して生活してました-
(1寮、2寮、3寮、聞き入る。涼介は思わず。)
「何しゃべってんだよ・・・桜木・・。」
ー決意して歩んだ男子寮での生活。自分にしか出来ない体験をさせてもらいました。
日はまだ経ってないけど、自分的にはすごく長い時間だったと思います。
苦しかった日も嬉しかった日もすべて仲間と共有できる楽しさがやっと分かりました。
そこで今日はわたくし桜木癒亜、みなさんに言いたいことがあります-
「・・・・・・・・・・・・・・・・。」
ー卒業させてください。-
「え?」
「まじで?」
「癒亜が卒業?」
「1年も経ってないじゃん。」
ーまだここで過ごしたかったです。本当は2014年で卒業するつもりでした。
2年間だけって決めてたけど、ここはわたしのいる場所じゃない。
そう教えてくれたのは、やっぱり涼介さんだったのかな。
加奈さんだったのかもしれない。校舎だったのかもしれない。
自分でも深く決意しての発表です。フランスのパリで留学して
21歳になったら、日本に戻ってくるって約束します。
たくさん学んで、一つ一つ教えたいです。
本当にありがとうございました。みなさん・・さようなら-
お互い、約束を決めて、お互い、違う道に進んだわたしたち。
これから、わたしたちはどう成長するのか。
21歳になったら、みんなどう変わってるのかな・・。