幸せの贈り物
クリスマスの一週間前、街はクリスマスカラーで色鮮やかに染まり、人々が心踊らせ笑顔で歩いているのとは反対に、暗い顔をした一人の母親が子供を連れて、冷たい冬の空の下、薄着で歩いていた。
「もう少しでクリスマスだねぇ。」
と子供が話しかけてきた。しかし、母親は、
「そうね。」
と答えただけであった。
「うちにもサンタさんくるかなぁ?」
という質問も
「くるかなぁ?」とオウム返しのような返事しかできなかった。
すると、子供が、
「うちは貧乏なの?」
と言ってきたので、母親は、ドキッとし、どう答えていいのかわからず戸惑っていた。
はたして子供の素朴な疑問なのか、全てを知っているからなのか…母親は少し考えたが、相手は五歳、と思い
「そうね。ある方じゃないわね。」
と答えた。子供は
「そうなんだぁ。」
と答えただけで、それから以上は聞いてこなかった。
その夜、子供が寝付いた後に父親が戻り、母親は子供の話しをした。
「今日、あの子にうちは貧乏なのか聞かれきたの。」
それを聞いた父親は
「それは、僕の稼ぎが少ないって嫌みなの?」
と顔を曇らせた。
「違うわ!」
と弁解するものの…
この二人は愛しあってはいたが、お金がなく、生活が苦しい為、お金の匂いのする言葉にとても過剰になってしまい、よく言い争いをしていた。
結局、この日も言い争いになってしまい…
「君が望むなら、もっとお金のある人とやり直してもいいよ。」
という言葉に、母親が傷つき。最後には泣き出してしてしまったようだ。そんな親の姿を、子供は見ていた。
それから一週間が過ぎ、二人は子供にプレゼントを買えないままクリスマスの朝を迎えた。
自分達の力の無さに、気の重い朝だと思い起き上がってみると、二人の枕元には沢山のお金が、いや、紙に描かれたお金が置いてあった。
驚きの余り、言葉を失い、お互いの顔を見合わせていると、
「サンタからのプレゼントです。これでケンカしないでねってさ!」
と子供が得意な顔をして言っているのに気がついた。
どうやら、子供なりに
「お金があればケンカしない」
と考えたようだ。
その気持ちを知り母親と父親は
「素敵なプレゼントをありがとう。」
といいながら、子供を抱きしめたのだった。