第十話
その後、央太と雪さんは二人とも完治した。
央太は長い入院生活の中で相当に筋肉が衰えており、病気が治ってもすぐに退院することはできなかった。これから長いリハビリが必要になり、まだ学校に戻ることはできそうになかった。でも本人は雪さんと同じ学年になれると大喜びしていた。
あの事件を経て、央太の呪いは消えた。…のだと思う。央太は病気を受け取ることも戻すこともできるようになったのだ。ならば、おそらく消えたように装うこともできるに違いない。真実は央太のみが知ることである。
雪さんは退院後も甲斐甲斐しく央太の元へ毎日通い詰めていた。意外だったのだけど雪さんは意外と尽くすタイプらしい。リハビリで央太が弱音を吐くたびに励ましている雪さんを見ると、本当に央太のことが好きなんだなと思う。
一度、雪さんに央太のどこが良かったのかと聞いてみたことがある。すると、優しいところという答えが返ってきた。まあ、確かに体質を別としても央太が優しい人であることは間違いない。だがいつかその優しさが頼りなさとして雪さんの目に映らないか心配である。
そういえば雪さんのトレードマークだった白い髪なのだけど、病気が治ったことにより根元から少しずつ黒髪に戻っていった。先日、黒い部分がある程度長くなったからと言って、白い部分をすべて切り落とした。すると今まで美少女ギャルと言われ人気を博していたのだが、今は清楚系と言われてまた別の方面から人気を集めている。
央太というれっきとした彼氏がいるにもかかわらず、周囲の男子から人気があるということは央太が舐められているということだろう。央太には一層の雰囲気を促していきたい。
私尚子と言えば、結局、大輔とよりを戻すことになった。失意に沈む大輔を見ていられなかったのだ。
落ちた評判自体は親友を救うためだったということが、私や央太、雪さんの口から語られたこともあり復権した。だが問題は高校最後の大会を前に部活を辞めてしまったことだった。そのせいで推薦が確実視されていた大学からも断られ、改めて勉強を始めている。今まであまり真剣に勉強に取り組んでいなかったこともあり苦労は目に見えている。状況を冷静に判断する限り、浪人は確実だと思う。だが大輔は何年かかってもいいから、推薦を断られた大学に自力で合格し、そこで再びサッカーをすることらしい。私は彼女としてそんな大輔を支えてやりたいと思う。
そういえば一つ大輔の行動に疑問があって聞いてみたことがあった。
「どうして央太のためにサッカー部を辞めてまでして頑張ったの?」
「だって尚子、今も央太のこと好きだろ?好きな奴の好きな奴のために頑張っただけだよ」
やっぱり私は大輔を選んでよかったと思った。
私はと言えば、無事、第一志望の医学部に合格した。一番、治したかった『変な病気』は雪さんと央太によって治されてしまったけど、それでもこの広い世界にはまだまだ央太と同じように未知の病気で苦しんでいるはずだ。そんな人たちの助けになれるように今は勉強を積んでいきたい。




