第08話 それサイコーなんですけど⁉
ズバリ問うた。この場の三人だけにわかる問いだ。
「さあ? ハイはそんなの気にしないから」
「名は?」
「ないから。ハイってのも一応使っているだけ。ハイの中で名前があるのは『ハイ=ルミナ』だけ」
「……そうか」
一つ、声のトーンを落とすヴォワ。
「あ、同情した? したわよね? したって言いなさい」
「同情ではないよ。なんと呼ぼうか迷っただけ」
「え~? 同情してよ」
「して欲しかったのか。めんどくさいな」
あきれているとハンバーグが運ばれて来た。じゅーじゅーと熱があがっていて焼けた肉の匂いが鼻を刺激する。
「あげないわよ?」
「こっちはもうお腹いっぱいだ」
「わたしもです。もう眠ってしまいたい」
言いながらエアラリスは瞼を落とす。
「寝てていいわよ。ハイがおんぶしてあげる」
「ありがたい申し出ですけれど遠慮しておきます。わたしヴォワさまのボディーガードですので」
瞼を持ち上げ、ヴォワの肩に手を回す。が、フォークでつつかれたので離さざるを得なかった。
「ボディーガード? ヴォワってなんの仕事しているの? 教えて。教えなさい」
「最終的に命令になったな。別に急かさなくても教えるよ」
「と言うかヴォワさまのことしりません? 結構テレビなんかに出ているのですが?」
「ハイのウチにはテレビがないの。『ハイ=ルミナ』が仕事に集中出来ないからって。パソコンも仕事でしか使わないの」
そう言ってテーブルを指でつつく。パソコンのキーボードを叩く仕草だ。
「は~ストイックですねぇ。あでもテレビを観るのやめたらその分ヴォワさまを愛でられる? それサイコーなんですけど⁉」
「愛でさせる気はないが」
「ああん」
シクシクと泣くエアラリスは置いておいて、ヴォワはハンバーグにナイフを通すハイ=ルミナに眼を移す。
「一ついいかな?」
「うん?」
「キミの中で私たちに危害を加えるかもしれないものは?」
「いるわね。沢山」
エアラリスの涙が止まった。すぐに危険があるわけではないだろうけれどそれでも横に並ぶヴォワに少し身を寄せる。
「『ハイ=ルミナ』の許可がないからハイの事情ははぶくけれど、充分に気をつけてね」
心配はない――はずだ。ヴォワなら大抵の問題は軽やかにかわしてなんなく着地するだろう。そうエアラリスは信頼していた。けれどどこかで心配する気持ちも確かにあって。
それはヴォワの方も同じだった。ちらりと横を向いてみるとエアラリスと目があった。不意の視線にエアラリスは少し顔を赤くして、ヴォワの方はそれを見て小さく笑った。格闘戦においてエアラリスは自分より腕が立つ。だからこその助手兼ボディーガード。好んで着る服はヴォワを際立たせるため一般向きのものばかりだが、脚にはしっかりとナイフがあったり。心配ないだろうと思うけれど、やはり一方で不安もあって。
そんな関係が二人には心地よかった。
(――オイ)
(うるさいわよ。今はこのハイが表に出ているんだから)
(邪魔だろうこいつら。ハイに代われ。遠ざけてやる)
(必要ないよ)
(あんたにとってはそうでもハイにとっては――)
ガン!
「「オ?」」
突然ハイ=ルミナがテーブルに頭をぶつけた。エアラリスは目をみはり、ヴォワはすぐに冷静な観察に入る。
(AHAHAHAHAHAHAHAHAバカだバカだ! そんなことをしても痛むのは表にいるあんただけだ!)
「……ふ~」
心の声を無視してハイ=ルミナは気を落ちつかせるように息を吐いた。
「落ち着いたかね?」
「中のやつがうるさいけど、ハイは静まった」
「そうかね。ではそろそろ帰ろうか」
「あ、まって。まだ食後のパフェが来てない」
「まだ食べられるのか……」




