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花嫁は王冠を抱いて ~ヴォワ=デートによるカラフルデイズ~  作者: 紙木 一覇


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3/5

第03話 勿論、私が全ての色と謎と神秘の妻だからだ

「えっと、ここから車で十五分のところの美術館ですね。ヘイタクシー」


 エアラリスは通りかかったタクシーを呼ぶと、てきぱきと荷物を入れてヴォワを入れて自分を入れて、あっという間に出発させた。

 ドライバーがミラー越しにヴォワをチラチラと見てくる。

 ええい視線が鬱陶しい。そんな風にヴォワが思っているとドライバーが問うてきた。


「今日は――お姉さんの結婚式だったのかな?」

「なぜ?」


 素っ気なく応じるヴォワ。視線は常に外を向いている。ヴォワは異国を巡るのも好きだがなにより地元が好きだった。国の歴史が現れている町並みが好きだ。日本で言うと京都や奈良がそれに該当する。


「お姉さんと同じ格好をしたかったのかなと」

「姉の結婚式で妹がウェディングドレスを着るのかね?」


 純白のドレス。フリルがふんだんにあしらわれたそれは見紛うはずもなくウェディングドレスで。ただサイズはヴォワにあわせてかなり小さめだ。


「これは私用の特注にして一級品だよ。

 美しいだろう」


 景色を眺めながら、ヴォワ。そんなヴォワにちょっと困りながらもドライバーは言葉を続ける。


「あ、ああ。そうだね。ドレスも君も」

「ありがとう」


 ヴォワは十六歳。ちょっと体は小さめだがショップに行けば多数のウェディングドレスが用意されているのだからヴォワに似合う品もあるだろう。

 けれどヴォワはいつも彼女のためだけに作られる一品を着る。

 ヴォワにウェディングドレスを提供しているのは――有料だ――ドイツ人の男性で、ヴォワの信念を理解してくれている一人でもある。だからか誰よりもヴォワの好みを把握し、誰よりもヴォワに似合うウェディングドレスを仕立てられる。極上の糸と極上の布。そして極上のヴォワ。男性はヴォワにウェディングドレスを仕立てられるのを光栄に思っている。


 ヴォワは思う――


 そう言えば日本にはエンディングドレスを好んで着る【ゴーストリゾルバ】なる心霊探偵がいると聞いたな。彼女のドレスも自分のドレスを仕立てる男が用意していると言う。

 自分に負けず劣らずの美貌を持つらしいが、いつか逢えるかな?


「しかしなぜウェディングドレスなんだい?」


 ヴォワの顔が正面を向いた。そして涼やかに微笑み、優しく微笑み、言うのだ。


「勿論、私が全ての色と謎と神秘の妻だからだ」

「……そうですか」






「お気づきになりました? ドライバーさんの視線。あれはお客さまに向ける目ではないと思うのです。レアものを前にした興味の視線です」


 ブツブツと呟くのはヴォワ――ではなく。


「エアラリス、キミが兄弟の間で育ったのはしっている。私も彼らに会った時は毛深さにびっくりした。胸毛すごかったね……。それを理由に男が苦手になったのもわかるが誰かれ構わずきびしい目を向けてはいけないよ。今怒っていいのは好奇の目を向けられた私だ」


 タクシーから降りた先で。


「ヴォワさまは怒ると怖いので」


 エアラリスの手にはヴォワをロックオンしているビデオカメラがある。主・愛しきヴォワの一挙手一投足を逃さない。そんな気持ちを強く強く強く持っている。


「怖くない怒り方など教育に必要あるまい」

「そうですか?」


 褒められて伸びたいタイプであるエアラリスは怖くない怒り方をご所望だ。


「わからないか? ろくに怒られないで育ったのがこの私だぞ」

「あ、捻くれていますね」

「……いや、例を出した私のミスだからな、怒らない怒らない」


 唇の端を引きつらせながら。

 けれどそれでも、


「……エアラリス」


ヴォワにはどうしても言っておきたい言葉があった。


「はい?」

「私のために怒ってくれてありがとう」

「ヴォワさま!」

「抱きつくな」

「オオ~イ!」


 そんな風にじゃれあう二人の元へと大きく手を振りながらやって来る影一つ。


「む?」

「あ! いけない! バカ警官がやって来る! だからわたしはヴォワさまをかばうために抱きついた!」

「アホか」


 呆れてヴォワは一言もらし、とった行動は。


「熱い! ヴォワさまパイプを人のほっぺに押しつけてはいけません!」

「押しつけられないよう成長したまえ、すぐに」

「超進化は出来ませぬ! 成長期ではありますが!」

「オ~イ、そこな花嫁ちゃんと変質者ちゃん、お姉さんを無視すんな~」


 美術館への入り口、その手前にある大階段を降りながら黒人の女性警官は声を出す。緑系・リーフグリーンの瞳を隠すベージュ系・ヴァニラ色の髪とムダに大きな胸の脂肪をたっぷりと揺らしながら現れたのでヴォワはとりあえずおっぱいをビンタしてみた。が、柔らかさに脱帽する羽目になってしまい。


「っち、私とてこれからだ」

「え~? 永遠の十六歳でいてよぉ、じゃないと気持ちよく抱っこ出来ない」


 唇を尖らせる女性警官。


「するな。オイするなと言っている!」


 女性警官は構わずヴォワを持ち上げて、


「エアラリスエルボー!」


豊かな胸に助手の一撃を貰うのだった。


「ぐはぁ⁉ ちょ、警官になにかましてくれてんのよ⁉ 逮捕するわよ⁉」

「失礼、この雲母(きらら)エアラリス、ボディーガードも兼ねておりますのでなめくさったおばはんを排除したまで」

「おば……あたしまだ二十三だっての」

「わたし十七歳なので。ちょーぴっちぴち」


 精一杯胸をはってエアラリス。


「ぴっちぴちとか言わないわよ最近の子は」


 こちらも胸をはって女性警官。


「懐古主義と言うやつです」

「中身がばばぁなだけ――ってあら? ヴォワちゃんは?」

「は⁉ いずこへ⁉ ああもうエントランスに!」

「待って~ヴォワちゃ~ん」

「やれやれ、私の周りにはおマヌケさんしかいないのか」

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