第14話 金よりロマンをとる方が面白い
悩みごと? 鍛冶師の少女は首を傾げた。そうだ、まだカウンセラーに行ってなかった。
「恋人かね?」
鍛冶師の少女は顔を激しく横に振った。いやそっち方面にも悩んでいるのは事実だが可及的速やかに解決したい問題ではない。
(そもそもなぜ共学を選んでしまったのだろう? だってわたしは……)
「ふむ、そこにも悩んでいるが焦ってはいないようだね」
「は、はい」
世間的にもだいぶ受け入れられている同性愛。だから焦りはない。ゆっくりじっくり恋しようと思う。
「では家族かな?」
そこは大丈夫。両親は健在、父親は元気に包丁中心に刃物を作るわたしの師匠、母親はご近所さんを歌うように指導する家庭料理の先生。どちらも自慢の親だ。
兄は大学生で弟は中学生。毛深く豪胆だが地元の海を愛す健康体。こちらもまあ、自慢と言えた。
「家族ではないか。
では、夢かな?」
夢――将来の? まだそこまでは考えていないかな?
「それも違うか。
では、異常事態」
ぎく。肩が震えるかと思った。でも動揺は隠せたはずだ。いや隠すのに意味があるかもわからないのだけど。
「なるほど」
ヴォワは座っていたソファから腰を浮かせた。水が入っているみたいな柔らかいソファが波打つ。人を夢に誘いそうなソファだった。
「キミは今――」
ヴォワは鍛冶師の少女に近づき、額に小指を当てた。
「――音に悩んでいる」
当てられた。コールド・リーディング――話術で人を観察して考えを当てる、それでも出来るのだろうか?
「な、なんで……」
「私には視えるのだよ」
ヴォワの唇が緩やかな三日月になる。微笑んだのだ。
(可愛い。なにこの動物)
「『星の声』だ」
間近で吐息のごとくささやかれる言葉。
「星の声?」
ドギマギした鍛冶師の少女は言われた言葉をただ繰り返す。耳まで赤くなっていると思う。
「そう。
高い音のサイレン、岩がこすれる音、破砕音、聞こえる音は人によって様々だが、地球は鳴くと言われている。磁場の影響と言う無粋な輩もいるがね。まあ私は星の声の方をおす。金よりロマンをとる方が面白い」
へぇ。鍛冶師の少女は思わず感心して、一方で自分が恥ずかしくなった。だって歳下のこの人に知識ですら劣っているのだから。
「えっと……治せないのでしょうか?」
「病気などではない。キミは声を解読したまえ。それが『聴こえる者』の責務だ」
ヴォワは指を離すと波打つソファに戻っていった。
「ええ? あの、わたし鍛冶師として独立したいのですが……」
「二刀流でいくといい。刀だけに」
面白くないです。心の中でそうツッコんだ。
「言わなければわかりそうにないから言うが、キミは宗教的な影響を受けるよ。オラクルの聴き手として。気を付けたまえ」




