第13話 もう超好み
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――ォオン
「……ん」
ここ数日、この少女はろくに眠れていない。今日も今日とて目が覚めた。だって、この音が……。と少女は体を起こして手で耳を塞いでみる。
――ォオン
ダメだ。音は聞こえてくる。
どこで鳴っているのか重く、低い音。
窓を開けて耳を澄ますも音の鳴っている方角すらわからない。
少女は何度目かもわからないため息をついて窓を閉めた。自分の呼吸があたって白くなった部分に指で「?」と書いてみる。特にこれと言って変化はなかった。
幻聴なのかな? 今度精神病院に行って診断してもらおう。あ、でも精神病院って一度行っただけで無理やり入院させられるって聞いた。幼馴染が潔癖性になった時入院させられて面会に行った時に聞いた話だ。やめとこう。カウンセラーなら大丈夫かな? 女の先生探そう。そう思って、眠れるかどうかわからないまま少女はもう一度ベッドの布団に潜り込んだ。
「どどどどどどっどどうぞお納めください!」
そう言って、少女は雪のように真っ白な姿を持つ懐刀をひと振り差し出した。まさに戦の神にでも捧げるかのように。心臓はフルマラソンの後みたいに凄まじく早い鼓動を刻んでいる。緊張で胸元に汗をかいてもいた。
少女は顔を上げずに刀を両手に置いて前に出す。それを自分よりも背の低い、そして若い少女に行っているのだ。一体その相手とは?
「ふむ……恋焦がれる白さだね」
全身を雪兎のように真っ白なウェディングドレスに包むその人は。
ヴォワ=デート――
密やかに目を上に動かしてヴォワの姿を盗み見る。とても綺麗だ。容姿もさることながら真っ白な髪の一本一本が輝いて見える。しかもその髪は陽をあびるとどうしてか金にも見えるのだ。そんな少女が年齢に合わない服装をしている。それが更に少女を輝かせていて、刀鍛冶師の少女は「ほぅ……」と息を一つ吐いた。
「あの……なぜウェディングドレスなのでしょう?」
間が持たなくてつい疑問を口にした。
ヴォワのさくらんぼのように艶やかな唇がなめらかに開く。
「勿論、私が全ての色と謎と神秘の妻だからだ」
「……はあ」
なにか凄い。もう旦那さまが決まっているとは(多分違う)。
「文句でも?」
「いいいいえ! わたしのような新人刀鍛冶師がワールドチャンプのごとき不思議探偵さんに!」
猫の眼を思わせる大きく威光のある蒼い瞳に見つめられて鍛冶師の少女は上げた頭を急いで降ろした。
(どうしよう……声は予想よりハスキーだった。容姿とはアンバランスだけどそこがいい。もう超好み)
「ふむ、素晴らしい刀だね。注文以上の出来だ」
ヴォワは少女の『色』を視て、その純粋さを識った。刀の色にも乱れはない。だから素直に評価する。
「ありがとうございます」
高評価を受けて鍛冶師の少女は自然と笑みをこぼした。顔が華やいだ、とも言う。
「ところで、キミ、今悩みごとがあるのではないかね?」
「は?」




